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プロローグ

良くある転生物です。

だけどどうせ転生するならチートな主人公はイヤ!、ハーレムはもっとイヤ!と。

そんな時たまたま見ていたテレビの再放送。あの時代劇!!

あ、これだ!

と思いました。

そして、そしてどうせならこの人になってもらおうと。


 その天井は細長い木材を等間隔にならべてその上に木目が綺麗な板を並ていた。

 いかにもthe日本家屋的な天井だった。

 勿論俺の住んでいるボロアパートの天井ではない。

 目が覚めてすぐに飛び込んできた映像がそれである。

 知らない天井だ、というアニヲタ発言をしなかった自分を褒めても良いと思う。

 掛け布団を半分畳むように払いのけ半身を起こすと浴衣姿の腹部がみえた。

 しかしどうして浴衣ってやつは寝てるとはだけてしまうものかねえ

 現に今もお腹には黒い帯だけが巻かれていて、でっぷりとしたお腹が露わになっていたりする。

 身長160cmでもうじき80Kgに到達しようと順調に成長していくお腹の脂肪、20代前半でさすがにこれではまずいよね…

 ダイエットしようかな、と脂肪を摘まみながらたぷたぷ揺すっていると襖で仕切られた隣りの部屋から「ハチは起きるでしょうか」とか「なあに腹がすいたら目を覚ますさ」そんな会話が聞こえてきた。

 ハチとは八田幸一郎という名の俺の苗字から職場の先輩が付けてくれたニックネームである。

 ハチとかハっちゃんなど時々某有名なドラマのキャラと容姿がかぶるとかで『八兵衛』とかもよばれたりもする。

 声のする方に顔を動かすとめちゃくちゃ頭がズキンズキンする。

 両手で頭を押さえて昨日のお酒の一気飲みを反省する。

 社員旅行で訪れたのは江戸時代から続く老舗の旅館だった。

 広い和室に案内されてマイクロバスに揺られた数時間の疲れをとろうと座布団を枕に畳の上にごろんと横になっていると先輩の一人が「よーし飲むぞ」と言い出した。すると別の先輩も「夜は長い!」と言い出してバッグの中をがさぞそとやって人数分の缶ビールを取り出した。

 社長の乾杯の音頭で缶ビールをぶつけ合わせた。

 かくして社員五人の零細企業の社員旅行は旅館に着いた瞬間に大宴会とかした。

 中居さんが何往復もしてお酒を運んで来たのを何となく覚えている。

 お酒は強いほうじゃないが嫌いじゃない。

 それに場の雰囲気にのまれたというのもある。

 とめどなくお酒飲みながらたまたま点けていたテレビの時代劇に、どうせこの人達が泊る所の娘さんが悪代官に目を付けられるんでしょ、ほらやっぱり!とか突っ込みを入れていたのも朧気ながら覚えている。

 で、先輩に「お前こいつに似てるよな。ドラマみたいに自分のことを『おいら』て言えよ。ほら、言ってみそ…」とからかわれたりもした。

 頭がふわふわとしたけど楽しくて普段より酒量は進んでいました。

 自分達の飲み分が減るからか酒代がかさむからか社長や先輩に「もうやめとけ」待ったが掛かっても構わず飲み続けた。

 そして転がっていた空のジョッキにビール焼酎洋酒を表面張力ギリギリになるまでに注いで

「八田幸一郎一気飲み行きまーす!」

 と高らかに宣言し社長の静止を振りっ切ってゴクコクと…

 そこからもう記憶はありません。

 はい二日酔い確定です。

 あったま痛ぁーい

 自業自得ですね。わかってます。

 もうお酒は飲みません。と反省しているとお腹がきゅる~と鳴った。

 頭は痛いがお腹がすいた。

 よろよろと起き上がりふらつく足で隣の部屋続く襖に手をかけた。

 あれ、そういやこの部屋て襖で仕切られてたっけ?

 襖をスライドさせると部屋いた数人は話を一旦切って襖を開けた人物、つまり俺を見た。

 彼らの視線を集中した俺はその場でフリーズしてしまう。

 なんとそこにいた数人の男女はテレビでよく見る江戸時代をベースにしたドラマの町人の姿をしていたのである。

 今回の社員旅行は江戸時代のテーマパークというわけではない。

 しかもこの人達は社長や先輩方もない。

 なんだ、どうなってるんだ?

 分けが解らない。

 置かれた状況が自分の処理速度を超えてしまったのか頭の頂点がズキリと痛みが走り、半ば反射的に患部を押さえそこで自身の頭頂部の異変に気が付いた。

 まず指が触れたものは反り上げた地肌、鏡を持ち合わせていないので自分の頭髪を手探りで確認する。

サイドには髪がある。後頭部にも束ねた髪の毛があった。

 触った感じだと頭を額から頭頂部にかけて剃刀で反り上げて、残った髪の毛を整髪剤で固めて束ねてて折り曲げたような髪型と推察される。

 俗にいうところの『丁髷』である。

 寝起きドッキリ!にしては手が込んでいる。込む過ぎている!。

 パニックになりながらもとりあえず挨拶はしとこうかなと迷っていると先に声を掛けられた。

「やっと起きたかハチ心配したぞ」

 厳めしい顔で一人が言う。

「どうしたぽかんと口を開けて俺たちの顔に何かついてるのか?」

 不思議そうに別の一人が問いかける。

「ほんと鳩が豆鉄砲を食ったような顔」

 紅一点が口元をかくし艶っぽくふふふと微笑する。

 そして

「ほら八兵衛そんなところに立っていないで座りなさい」

 朝食にしましょう、と長い口ひげを撫でながら好々爺の視線を向ける。

 フレンドリーに話しかける彼ら。

 彼らは俺のことを良く知っているようだ。

 だが俺はというと

 …知っている、と思う。

 長い白髭を蓄えた老人、がっちりとした体育会系、細面のジャニーズ、フェロモンむんむんの妖艶の美女。そこに小柄でぽっちゃり体系の俺が加われば…もうお分かりですね。

 そうここは『水戸黄門の世界』のだったのです!!


 ぎゅるるるぅー、とバグる頭と裏腹に腹の虫だけが冷静に空腹」を告げたのでした。

プロローグを読んでいただいてありがとうございます。

もし読んで頂ける方が一人でもいらっしゃれば頑張って連載していきたいと思います。


そのうち八兵衛さんのロマンスも入れたいですね。

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