2.目がさめると➖優梨➖
言い忘れておりましたが、毎話、どの視点で語るかを変えていきます。
➖優梨➖
昔、お父さんに言われたことがあった。
というより、みんな似たような事を言われてると思う。
『優梨、もしも危ない、と感じたら、真っ先に逃げなさい。いいね?』
『うん。わかった』
危ない、と感じたら、逃げなくてはいけない。
でも、もし逃げられなかったら?
危ないことがあったとしても、足がそこを動かなかったら?
そんなこと、お父さんは教えてくれなかった。
他の誰も、教えてくれなかった。
この答えとは一体、何なのだろうーーー。
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「…痛っ」
肩に鈍い痛みが走る。優梨は痛みをこらえながら目を開けた。
あれ、優どうしたんだっけ・・・。
ボーッとした頭で、優梨は今までのことを思い浮かべた。
沙葵が怪談を試そうって言ってきて、
津崎と濱口と一緒に階段を下って、
そしたらーーー「あっっ!」
「津崎、濱口‼︎」
ガバッと身を起こそうとした。したのだが、
・・・身体が椅子に縛り付けられていた。
「え?あれ?」
何もされているようには見えない。だが、まるで縄で縛られているような痛みだ。手も首から腰までと同様に縛られているので、動くのは首から上と、腰から下だけになっている。
とりあえず、周りの状況は、と優梨はあたりを見渡した。
ここはヨーロッパのお城に似ている。実際にお城の中に入ったことはないが、テレビや漫画などで見たような景色だ。
床は黒い大理石。天井はとても高く、ガラス張りになっている。だが、優梨は普通天井には絵が描いてあるものじゃないかと思った。天使の絵などがちょうど良いだろう。
「…眩しっ」
日差しが少しきついが、今は早朝のようだ。ちょうど太陽の光が当たり始めた時間帯のようだから。
優梨たちはこの大広間?のど真ん中にいる。目の前には見るからに豪華な椅子ーーー王様が座るような椅子がある。今は誰も座っていない…というか、優梨たち以外誰もいないが、直に来るのだろうか?
「ウーン」
「!」
右隣でうめき声がした。ーーー津崎だ!
「津崎、津崎」
「ンー」
揺り起こすことができないので、出来るだけ声を張り上げる。優梨が頑張って呼びかけているというのに、津崎は「アー」とか「ンー」という返事しかしない。
イラっときた優梨は、自分の足で津崎の足を思いっきり蹴った。椅子同士は50センチほどしかはなれていなかった。
「ドン」「イッッッッッテー!!!」
津崎はすぐに目が覚めた。足蹴り、おそるべし。
「兄貴やめろ!・・・って、え、清村?」
どうやら津崎はお兄さんと蹴り合い?をしていたらしい。
「清村?何でここにいるんだよ。ってゆうか、ここどこだ?」
「・・・あ」
そういえばここはどこなんだろう。
「ここは俺の部屋のはずなのになんだよここ」
「は?」
どうやら津崎はまだ寝ぼけているらしい。
「ねえ、いまの自分の状況見なよ」
「ん?って、何で身体が動かないんだ⁉︎」
やっと気づいた。遅すぎる。
津崎はしばらくバタバタと暴れていたが、しばらくすると周りを見渡した。周り?・・・あ。
「こいつ、濱口じゃねーか。おい!起きろ!ほら、お前も久山起こせ」
「ん。おーい、沙葵ー」
左隣に沙葵がいたのに、今まで存在をすっかり忘れてた。ソーリー。
沙葵にしばらく声をかけ続けたが、少しすると気づいてくれた。
「ん…ゆーり?」
「そう、優だよ!」
沙葵は目をこすろうとしたが、やはり手や体は縛り付けられているようだ。
「あれ、手が縛られてる?・・・夢か」「ちがーう‼︎」
すかさずツッコミ。現実逃避なし!
優梨が沙葵に今の状況を話していたあいだに、濱口の声がした。濱口も起こされたらしい。
「清村〜久山〜ここどこだ?」
いや、そんなこと言われても知りませんって。
しばらく4人でここはどこだろうと話し合っていた。どこかの大広間なのは間違いない。ヨーロッパの城、別の惑星、異世界など色々な意見が出たが、やはり確信の持てる答えは出なかった。
しばらくすると、沙葵がおっとりとした口調で言った。
「それにしてもここってどこなんだろ。ドアの先ってこんなとこに繋がっていたんだね」
「いいえ。私共が臨時のループ穴を作ったのです」
「「「「え?」」」」
優梨たちの声ではない。後ろの方から声がしたのだから。
4人が後ろへ頑張って首を回すと、誰か、いや、何かがいた。
「皆さん、お目覚めのようですね」
人間のような体つき。だが、仮面をかぶっていて素顔の分からない顔。尻尾はないが、頭には牛のようなツノが2本生えていて、燕尾服と似たような服を着ている。
ーそして、漂ってくる雰囲気。自分たちとは違う、異質なもの。
人間のようで、人間ではない。
ナニカガ、ソコニ、イタ。
少し短いかな?