1.始まらないでほしかった➖沙葵➖
柚檸檬です。
文章がすごく下手なのはお許しください。
温かい目で見守っていただけると嬉しいです。
「このままでは・・・後継者が・・・」
「大体4人とか多すぎだろ!せいぜい2人じゃねえのかよ!」
「そんなこと言っても、昔からの決まりなんじゃから。」
「…………。」
「人間界になら、 いるかもしれません。我々と一番近い世界になら・・・。」
「必ず、●●●となるものを連れてくるんだ。」
「御意。」
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ここ、日本の中の瀬里尾町、別名「世界町」は、世界にすっかり名の知れ渡っている町である。それなりに広いこの町には、世界の大企業が集結していて(日本企業がもちろん一番多い)、外国から働きに来た人が人口の半分を示す。一歩中に入ると、日本語の表記以外に英語・中国語はもちろん、ヒンディー語やスペイン語、「ナンダコレ」「どこのだよ」と突っ込みたくなる言語表記もたくさん見かける。初めて来た人はその表記の多さに頭がクラクラしてしまうだろう。
また、そのような瀬里尾町にある学校は二校だけである。小学校(私立国際芙美川小)と中高一貫校(私立国際湯野中・高)が1校ずつ。中国人だろうがアメリカ人だろうがインドネシア人だろうがエジプト人だろうが同じ学校に行くので、普通の学校とは色々と違うわけでーーーー
➖沙葵➖
キーンコーンカーンコーン。
「あ〜疲れた〜!」
英語の授業が終わった瞬間、沙葵は大きくのびをした。
久山 沙葵。小学4年生から芙美川小に転入し、そのまま湯野中にあがり現在中学2年生。この地域の学校に通う期間が4年目に突入するのはかなり珍しい。それほどまでに瀬里尾町は、人の出入りが激しいのである。
「今日のスピーキング大丈夫だったかなあ。評価Cだったらどーし」「ちょっと、何ブツブツ言ってんの」
「うわっ!ゆ、優梨!」
青の眼鏡の奥で呆れるように見つめる彼女は、沙葵の親友の清村 優梨(優)。優梨は中学1年の7月からの転入生で、こちらも中1。ちょっと毒舌なところがあるが、(とても)優しく、頭も良くて、字も綺麗な沙葵の(自慢の)親友である。
「スピーキングが何だって?そんなにヤバかったの?」
「途中で同じこと2回言っちゃったんだよね。優はどうだった?」
「多分Bは取れたと思う。あんたに追いつくのも時間の問題だよ」
「まじかー。じゃあもっと頑張らなくちゃ」
芙美川小と湯野中の英語のクラスは20に分けられている。1番上がEー1stで、初心者レベルのクラスがEー20th。現在沙葵はEー4thで、優梨はEー7th。
英語が一番イヤな科目なので、沙葵は英語の時間になると眠くなってしまう。writing、listening、readingは問題ないが、speakingとなると難しい。とはいっても、英検は二級まで取得しているのだから十分得意だとは言えるが。
「沙葵ったら、どうしたの?もう授業終わったのに。」
「あ、ぼーっとしてた」
「ばっかだなあ。ほら、さっさといこ。」
あと1ヶ月でお別れだもんね。
その言葉を、沙葵は口の中へと追い込んだ。
キンコンカンコーン。
「久山。これ落としただろ」
隣の席の津崎が話しかけてきた。
「お、サンキュー…って、これあたしの消しゴムじゃん!どこに落ちてた?」
「E-4thの教室前」
「ありがと!助かった」
津崎 怜依。スポーツ好きで、声が高い。そしてバカである。勉強は別にしないで授業中ガヤガヤ騒ぐ連中の1人なので、男子には人気者で、女子にはどうでもいい存在だ。
え、顔?まあ普通。
その津崎が「なあ、知ってるか?この学校の階段の怪談」と聞いてきた。
階段の怪談ねえ。「知らないわけないでしょ」
湯野中には、1つ有名な怪談「階段の怪談」がある。体育館横にある階段にまつわる話で、その階段に男女2人ずつ4人で入れば、得体の知れない何かに自分の記憶を持って行かれる、という話だ。
「それを俺と濱口で昼休みに試してみたいんだけど、お前と清村で付き合ってくれねえか?」
「やだ。めんどい」
そんな幼稚なことする気おきないんだけど、バカじゃない?と、沙葵は大人しい中1女子が考えることと全く同じことを考えていた。
「他の人に頼」「1ドルあげるから」
「!」
ああ、今自分の目がどんなようになっているかが痛いほど分かる・・・。
「行く!あとで優梨に話しとく!」
「オッケー」
ちなみに、瀬里尾町での通貨はUSドルなのである。そして、津崎のコレはなんとも金持ち発言だと思われるが、実際瀬里尾町には津崎のような金持ちが多い。
なんて自分って釣られやすいんだろう。沙葵が心の底から後悔するのはまだ先である。
////
昼休み。
「もう、なんで優が・・・」
「ね、いいでしょ?もしかしたら津崎にお金もらえるかもしれないし」
「優はそんなにお金に終着はないんだよ〜」
「ね!お願い、いいでしょ?」
「・・・まあ、優は名前の通り優しいから付き合ってあげるよ」
「ありがと!大好き!」
優梨はブツブツ言いながらも沙葵についてきてくれた。彼女はなんだかんだ言っても沙葵には優しいのだ。
沙葵達のクラス「2-2」から体育館まではかなり遠いので、そこまで行くのに5,6分かかったが…
「おー、清村に久山」
迷彩柄の眼鏡をかけた濱口が手を振っているのを見つけた。
濱口 礼央。一言で言えば秀才。超有名な塾の看板生徒だ。スポーツは普通にできるので、男子からするとイラつくような存在…でもない。これまた男子には人気者で、女子にはどうでもいい存在だ。
ん、顔?こっちもまあ普通。
じゃあ津崎と濱口だったら?えー、どっちもどっち。
と、まあその話は後にして…。
濱口と一緒にいるはずが津崎の姿が見えない。
優梨が聞いた。「津崎は?」
「まだ弁当食べてる」
この学校は給食がないため、みんな弁当持参なのだ。
「何で隠れて待ってるの?」これは沙葵。
「なんか先生に見つかったらまずい気がして」
おいおい。沙葵と優梨が2人して思ったことは一緒であった。
男子と女子では話題が違うので、沙葵と優梨は2人で話していた。濱口は階段の中をのぞいている。
「でもさ、あの人ほんっとイラッと来ない?」
「分かる〜。あの話し方とか声とかさ」
「この中って一体どうなってるんだろうな」
「あの人と仲良い人っているのかな?」
「すごい暗いな。電気は結構前に故障したんだってよ」
「いないでしょ。いたら逆に尊敬するわ」
「やっぱり因縁とかありそうだな。お前らもそう思わねえか?」
「今年から転入してきたけど、誰も関わろうとしないもんね」
「お前ら話聞けよ!」
えっ、と2人が濱口の方を向いたとき、
「よお、濱口。悪い遅くなった」
と津崎がやってきた。
「ちょっと、うちらには謝らないの⁉︎」
「ご、ごめん…」
優梨が怒っているそばで、沙葵は斜め後ろで濱口が「おお〜い」と鳴いているのを聞いた。
////
カツ、カツ、カツ…。
足音がする。この足音が、4人が今ここにいる、ということを唯一示してくれるものだ。
「この階段っていつまで続いてるんだろうな」
「てか、何にも起き」「いたっ!何すんの!」
どうやら優梨の上靴が踏まれたらしい。
「い、いや・・・。今キラって光るものが見えて・・・あ、お前の靴下のラメだった」
「はあ?もう踏まないでよ」
「わりい。気をつける」
この2人はこうやってよくいざこざを起こす。
どのくらい降っただろうか。
「あ、ドア発見」
「「「え」」」
「ドアノブは・・・うげぇ、ホコリがやばいぞコレ」
津崎がドアノブを探そうとしてるがなかなか見つからないようだ。
「怜依、俺も探すよ」「まじ、サンキュ」
女子2人にそんなもの触る気は起きない。
「お、ミッケ」
濱口の声が少しくぐもっている。きっとホコリを吸い込んだのだろう。
「開く?」
沙希の質問には答えずに濱口(とおそらく津崎)はガチャガチャとドアノブを回している。
「せーので押すぞ」「オッケー」「「せーのっ」」
ーーーギィィィィ。
開いた!
「うわっ、まぶ」ズドン。
ーーーえ?
津崎の声が聞こえた…と思ったら音がした。何か、重いものが落ちるような、オモイモノガ・・・オチル・・・?
「怜依⁉︎」「「津崎⁉︎」」
コエガ、シナイ。
「おい、怜依!どこにーー」ズドン。
ーーーは?
濱口の声もしない?ハマグチモ・・・オチタノ?
「つ、津崎、濱口・・・?え、消えた?」
優梨がパニック状態になっている。無理もない。こんな状態になっているのだから。
「ここは、ドコ?」
ふらふらと優梨が歩いていく。まだ目は開けられない。まぶしさに目が追いついていけないのだ。
「優を、置いていかないで、ねえ…」
優梨が外に向かっている?
「優梨、だめ、やめて!」
本能的に体が、動く。優梨の服を、掴む。
「ドアの外に出ちゃったら、出ちゃったら・・・」
ドウナルノ?
ソトニデタラ、ナゼイケナイノ?
何かがあるの!危ない目に・・・
アブナイ?ドウシテ?ナニガアブナイノ?
足が、動く。
自分のものではないように。
感覚が、なくなる。
まるで最初から感覚なんてなかったように。
ア、オチタ。
クウチュウニ、ウイテル。
落ちて行きながら、かすかに聞こえたコエはーーー。
『ヨウコソ、我ガ子ヨーーー。』
どうでしょうか?
少しでも面白そう、と思っていただけたら喜びます。ベットの上で踊りだすかもしれません。
よろしくお願いします。