リーシェside
ザマァまでゆったり進みますが、気長に待っていただければ幸いです。
「ふふ、ふふふ、ついにあの女を追い出せたわ」
私はあの夜会の事を思い出していた。
思い出しただけでついつい笑ってしまう。
驚愕の色に染まったあの女の顔は、本当に面白かった。
味方だと思っていた人達にも信じてもらえず、絶望していたあの女の顔は傑作だった。あの場に画家を呼んで、書いてもらいたいくらいに。
絹のような銀色の髪に宝石のような緑色の目、肌は陶器のように白く、女神のように美しいと、愛らしいと称賛されるのはいつも姉のアリスだけだった。
少し可愛い顔をしていても、あれの隣に並べば霞んでしまった。
そしてほかとは比べものにならないような魔法の才を持ち、みんなにちやほやされていた姉様。
最初に抱いたのは、劣等感。
次に抱いたのは、嫉妬。
そしてそれが憎しみに変わる頃には、私と姉様の間に会話は無くなっていた。
そして何より許せなかったのは、王子との婚約だった。
ガンディア様はお優しくてとても綺麗な顔をしていた。未来の王妃なんて、この国で最も幸せになれる席。それなのに、あの女は毛ほども嬉しそうではなかった。
私が喉から手がでるほど欲している物を持っているくせに、いつもすました顔でいるあの女が許せなかった。
だから、何でも奪ってやった。
両親の愛も、友人も、お気に入りの装飾品も。それでもあの女は顔色一つ変えなかった。いつもこちらに向けてくるのは、その冷たい瞳だけ。
その瞳を向けられる度、私がどれだけ傷ついてきたか、きっとあの女は知らないだろう。
だから、あの女からあんな感情を引き出せたことが嬉しくてしょうがない。
あの女は、今どうしていることだろう。あの女はしぶといからそう簡単に死ぬとは思えない。
きっとまだどこかでいきているはずだ。
ずたぼろになり、あの綺麗な顔が、悲しみで染まっていることを想像しただけで、顔が緩んでしまう。
「リーシェ様、ガンディア殿下がいらっしゃいました」
「お通しして」
ノックの後、女官の声が聞こえててきた。
ガンディアは毎日、私のもとへ来てくれる。愛をささやき、アリスなんかよりも、私がよいと言ってくれる。
彼は私の自尊心を満たしてくれる大切な存在だ。
姉の物で無くなったあなたに正直もう用なんてないけれど、それでも今は側に置いてあげるわ。
「いらっしゃい、ガンディア様」
扉を開けた私は彼に笑いかける。私の顔を見たガンディア様は破顔して、私を抱きしめた。
ああ、あの女のいない世界は今日もこんなに美しい。
アルファポリスでの掲載が先行しています。




