新しい家族
私は、皇帝であるジルベートの伯父のクリプトン公爵家の養子となった。
公爵とその妻である夫人に子供はおらず、私を暖かく迎えてくれた。
私の事情を聞き、皇帝の婚約者になった経緯を聞いた2人は、自分達を実の両親だと思ってくれていいんだよ、といってくださって、とても良くしてくれている。
さらには、お父様、お母様と呼ぶようにと言われてしまった。
最初は戸惑ったが、帝国に来て1ヶ月ほど経った今では、普通に呼べるようなった。
お父様は暗めの金色の髪に赤い目をしていて、少しジルベートに似ている気がする。
お母様は実は他国の王女だったそう。
綺麗な青い目と、しかも私と同じ銀色の髪をしていて、本当の親子みたいだとジルベートには言われた。
「まぁ、可愛い! アリスちゃんは本当になにをきても似合うわね!」
「お、お母様、褒めすぎです」
夜会用の藍色のドレスを着せられ、私を見たお母様が満面の笑みで褒めてくれる。
「そんなことないわ、まるで天使みたい! 本当にこんなにかわいい娘が出来るだなんて思ってもみなかったわ。ジルベートに感謝しなくてはね」
お母様に次から次へとドレスやワンピースを渡されて、現在着せ替え人形になっている。歓迎してもらえているのがわかって嬉しいが、2時間着せ替え人形は辛い。
「ほーんと、アリスちゃんを傷つけたっていう男、次見つけたら私が消し炭にしてやるのに」
満面の笑みで怖いことを言うお母様。
おっとりしたお母様だが、魔法の才能はピカイチなのだ。
「お母様、お気持ちはうれしいのですが、それでは私の役目が無くなってしまいますわ。それにお母様が捕まってしまったら私、耐えられません」
こう返す私も大概だとは思うけれど。
実際、私に冤罪を着せた彼らは憎いわけだし…………
「大丈夫、安心して。私が証拠を残すわけないでしょう。阿呆はなんの役にも立たないから、原型がなくなるまで徹底的に潰すわ」
え、お母様、何を潰すの?
というか、なんだか笑顔が怖い。
「今度は街にお買い物に行きましょうね。アリスちゃんは可愛いから何でも似合っちゃうわ」
急に話題が変わった。
両親に褒められるという記憶がない私は、嬉しくてつい顔が緩んでしまう。
昔から褒められるのはリーシェばかりで、あなたは未来の王妃なのだから出来ても当たり前だと言われていた。
「お姉様ってば、可哀想。でも仕方がないわよね、だってお姉様には褒められる価値すらないんですもの」
そう言ってクスクス笑っていたリーシェを思い出す。
昔から、両親の愛も、私の服も、お気に入りの装飾品も、友人も、そして婚約者も、何だって私の物を欲しがっていたリーシェ。
私はなぜ、あそこまでリーシェに嫌われていたのだろうか?
正直全く心当たりがない。