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最高のノリツッコミです。

 私はその日、ジルベートの転移魔法で帝国入りした。


「私の素性はわかったんだから、貴方のことを教えてくれてもいいんじゃないかしら」


「ああ、それもそうか」


 私の言葉に彼はちょっと笑って答えてくれた。


「俺はジルベート・ディアベルトだ」


 ディアベルトという名に、私は目を見開いた。『ジルベート・ディアベルト』その名前は若き帝国の王の名前だ。

 

 まさか、この男が……あのディアベルトの鬼才、ジルベート・ディアベルト皇帝なの…………?


「どうかしたか?」


「貴方、皇帝なの………?」


「ああ、皇帝だな」


 そんな今日は天気がいいな。みたいなノリで言うことではないだろうは思う。


「じゃあ、何で皇帝が、真夜中にあんな森の中にいたのよ」


「使い魔に家出されて、迎えにいっていたんだ。面倒だからこっそりとな」


 使い魔に家出される皇帝ってどんなだと突っ込みたくなるけど、今は我慢だ。

 それに私も、真夜中の森に放置されて、生き延びてしまうような令嬢だし、まぁ人のことはいえない。



「トレゼルトにも不法入国者を感知する魔法具が起動しているはずだけど……」


「そんなの、俺の前ではないも同然だ」


「ああ、まぁ、鬼才ジルベート・ディアベルト皇帝陛下ですものね」


 しかしまさか、皇帝に拾われるなんて、私も変だと思う。

 転移した先は帝国の城だった。どっしりと構えるその白い城をみれば帝国とトレゼルトの財力の違いがよくわかる。


「流石、帝国……」


「立ち止まるな、さっさといくぞ」


 連れてこられたのは、恐らく皇帝の執務室。見張りをしていた騎士は皇帝の後ろにいた私をみて目を見開いた。


 そして、なにもいわずに主に道を譲った。


「あ、お帰りなさい。ケインは見つかりましたか…………って、誰ですかその女性は!?」



 執務室は必要最低限の家具しかおいていない部屋だった。けれど、どれも上等なものばかりで、ここでも帝国の財力を思い知った。


 中にいた黒髪に赤茶の目の男性は私をみて叫んだ。

 おそらくケインというのが、さっき皇帝がいっていた使い魔のことだと思う。


「拾った」


 私は捨て猫か、何かですか?


「そうですか、それは不思議なこともあるんですね……ってないわ! どこでどうやったらそんな美少女を拾ってくることになるんですか」



 おお、素晴らしいノリツッコミだ。

 名前も知らない彼に、心の中で賞賛を送った。  



 それから皇帝が彼に事情を説明した。

 一々、面白い反応をする彼に、ついつい笑ってしまった。


「なるほど…………トレゼルトの聖女ですか。で、まぁ拾ったというのはもうわかりましたが、どうするのですか?」



 ちらりとこちらをみた側近ぽい彼は溜息をついた。  


「あのー、仕事を紹介していただけるということではないのでしょうか?」


「今まで貴族令嬢をやってきたあなたに仕事ができるのですか?」


 怪訝な目を向けられる。

 ええ、まぁそれが普通の反応でしょうね。


「待て、ケビン。こいつは真夜中の森で狼を狩り、鼻歌交じりでシチューを作っていた奴だぞ。普通の令嬢という枠に入れたら、他の令嬢がかわいそうだろう」


「あの、喧嘩売ってます……?」


「いや、本心だ。気にするな」


「はぁ…………」

 

 真顔で返されて、反論する気すら失せるわ。


「図々しいお願いかもしれませんが、私的には魔法師団に入れてもらえればと思うのですが……」


「いや、駄目だ」


「駄目、ですか」


 やっぱり駄目ですよね………….。

 これでも一応トレゼルトでは魔法の天才と呼ばれていたんですが……


 しょぼくれていた私は、皇帝の一言に今世1番の衝撃を受けることになる。


「ああ、お前には俺と婚約してほしい」


「はっ……………!?」


 


 突拍子のない彼の台詞に、私は目を見開いた。

 婚約者になれなんて本気なの?


「なにをいっているんですか」


「最近俺の妃に収まろうと、令嬢たちがうざい。おまけにライバルを潰そうと暗殺祭りだ。お前が俺の婚約者になれば諸々の問題が解決する」


「つまり、私に、女除けになれと」


「なんだ、この皇妃の座は不満か?お前はお前を貶めたものたちに復讐が出来るし俺も平和が手に入る。悪くない話だろう?」



 たしかに奴らをぎゃふんと言わせるにあたって、身分というのは凄く重要だろうけれど、まさか人生二度目の婚約がこんなに味気ないものになるなんて、誰が思うだろうか? 


「というか、今の私は何の身分も持たないただの平民ですけれど……」



「そこは問題ない、帝国は実力主義だといっただろう。まぁ、伝手はあるから安心してくれ」


「そうですか…………」


 その時、脳裏に浮かんだのは憎きあの元婚約者の顔と、妹リーシェの顔だった。

 きっと彼らは今、私を計画通り追い出せて、喜び、高笑いでもしているのだろうか?


 許せない……


 沸々と怒りがわいてきて、私は拳を強く握った。



「どうぞ、よろしくお願いします。皇帝陛下」


 私は汚れた青いドレスを摘まんで礼をした。

 皇帝は満足そうに笑った。

アルファポリスの方が先行しています。



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