季節外れの水着回
あっという間に時は流れ、夏休みがやって来た。アルス達は御代に呼ばれ、彼女の別荘へ来ていた。
「うわー‼おっきーい‼」
水着に着替えたムーンは、目の前に広がる海を見て、感動してこう言った。
「海に来るなんて久しぶりだなー」
弓彦は運動しながらこう言っているが、横にいる岳人はムーンの水着姿を見てボーっとしていた。
「岳人、どうかしたか?」
「いや、別に……」
この岳人の姿を見て、雀と乃小、乃小の友人はにやにやと笑っていた。そんな中、浦沢がカメラを持ってはしゃいでいた。
「ひゃっほー‼こりゃーいい光景が取れるぞー‼」
「ちょっと待ちなさい」
後ろにいた若葉が、浦沢のカメラを没収した。
「あなたのようなスケベ面の人は、何かエッチな物をとると思いますので、これは没収」
「あーん‼」
取られたカメラを見て、浦沢は涙を流していた。その光景を見て、日枝はため息を吐いてこう言った。
「当たり前です。麗しき会長の水着姿を写真に収め、エッチなことに使うつもりだったんでしょう。そんなことしたら半殺しにしますよ」
「いや、あの会長の水着姿なんて撮っても何も得がありません。というか、需要がないです」
その後、日枝は浦沢を地面に埋め、大声でこう言った。
「只今よりスイカ割りをしようと思います。参加者はそこに置いてあるトゲ付きバットを持って参加してくださーい」
「ああああああああああああああああああああああ‼すみません、助けてくださーい!」
命の危機を察した浦沢は、大声で助けを呼んだ。
何やってんだか。
心の中で呆れていた弓彦だったが、後ろからアルスと三毛に声をかけられた。
「何をやってるんだお前?」
「海に行かないの?」
後ろを振り返り、弓彦はアルスと三毛に返事をしようとした。その時、アルスの水着姿を見て、動きが止まった。アルスは白いビキニを着ている。そのせいか、今のアルスがより魅力的に見えている。
「あの……その……」
「どうした弓彦?顔が赤くなってるぞ」
「体調悪いの?」
「そんな事はない。俺は先に泳いでるから」
と言って、弓彦は先に海へ向かって行った。
弓彦が海で泳いでいると、近くで悲鳴と強烈なビンタの音が聞こえた。何かがあったのかと思い、近付いてみた。そこには、ぼっこぼこにされた雍也が浮かんでいた。
「ナンパに失敗したんですか?」
「うん」
と言って、弓彦はその場から去ろうとした。だが、雍也が弓彦に近付いてこう言った。
「何か言うことないの?」
「いや、いつもの事じゃないですか。もう慣れましたよ」
そんな中、平塚の笑い声が聞こえた。あの人の事だ、何か馬鹿な事をしているのだろうと弓彦は思い、平塚の声がした方を振り返った。
「やっほー!これたのしー‼」
平塚はジェットスキーに乗り、海の上を走っていた。
「平塚先輩、どうしたんですかそれ?」
弓彦の問いに対し、平塚は笑顔でこう言った。
「あそこにあったのを拾った‼」
「それ、泥棒じゃないですか!?」
「多分だいじょーぶ‼」
と言って、平塚はどこかへ行ってしまった。あの人をほっといていいのだろうか?弓彦は心の中でこう思った。
で、女子達は海辺でキャッキャウフフ的な感じで遊んでいた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼面白いなこれは‼」
超人的な運動神経を持つアルスは、どんな波が来ても見事なクロールで海を泳ぎまくっていた。
「いやー、彼女は元気ねー」
「そうですねー」
パラソルの下にいる御代と日枝は、用意されたメロンソーダを飲みながら日光浴をしていた。ムーンは雀と乃小達と遊んでいる。たまにはこんなゆっくりした時間を過ごすのもいいか。御代はこう思っていた。そんな中、泳いでいたアルスが岸へ上がり、周囲を見回した。
「どうかしたの?」
アルスの様子がおかしいと思った御代は、アルスに近付きこう聞いた。
「あの変態がいます」
「あの魔王の事ね……」
御代は察した。今回は水着回。あの変態野郎がどこかにいてもおかしくない状況だと。アルスは周りを見ていると、変な茂みを見つけた。アルスはため息を吐き、光の光線で茂みを破壊した。
「アギャアアアアアアアアアアアアアアアアス‼」
すると、そこからショーミの悲鳴が聞こえた。
「あれ?何でばれたの?何で?」
「バレバレだドアホ‼」
アルスはショーミを踏みつけ始め、ボロボロにした後、首を掴んだ。
「どうせしょうもない理由でここに来たんだろう」
「そうでーす。目の保養のために来ましたー。あと、ポロリ期待」
「大丈夫だ。そんなのはない‼」
アルスはショーミを地面に埋めようとしたのだが、ショーミはアルスの手を離し、アルスに抱き着いた。
「はーっはっは‼罠にかかったな。喰らえ‼」
すると、アルスの体に不思議な魔法陣が発生した。
「あ‼貴様、また私を幼女化するつもりか!?」
「そんな事はしない。今度は貴様の魔力を封じさせる!」
そう言うと、ショーミは後ろに下がった。ショーミの言葉を聞いたアルスは、小さく笑うと手を前に出した。
「魔力を封じる?そんな事が出来ると思うか?」
と言うと、魔力を出そうとした。だが、魔力は出なかった。
「……あれ?マジで……」
アルスが魔力を使えないことを確認したショーミはアルスに抱き着いた。
「フッフッフ……さぁ、ここから禁断のR-18タイム」
「させませんよ‼」
「何やってんだクソ魔王‼」
ここでムーンとイータの攻撃がショーミを襲った。ショーミは頭を押さえながら、ムーンとイータの方を振り返った。
「痛いって……というかイータ、貴様今クソ魔王って……」
「さっさと帰りますよクソ魔王。明日バイトなんですから」
「あー‼また言った‼泣くぞ、大人げなくワンワン泣くぞ‼」
「黙れ‼」
その後、クソ魔王はイータと共に去って行った。
弓彦は海で遊んでいる中、先ほどの光景を見ていた。
「あほらし……」
そう言うと、アルスが弓彦に近付いてきた。
「すまん。あの馬鹿魔王、今度は私の魔力を封じ込めてしまった」
「使えるまで俺がサポートするから大丈夫だよ」
「そうか。また世話をかけるな」
そんな話をしていると、二人の目の前に巨大な波が現れた。
「え……」
「まさか……」
その後、その巨大な波は二人を飲み込んでしまった。この光景と見たムーンは慌ててアルスと弓彦の元へ向かったが、そこに二人はいなかった。
「嘘でしょ……お姉さま……お姉さまあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
ムーンが悲痛な悲鳴を上げる中、雀が慌ててこう言った。
「弓彦先輩の事は!?」
アルスの耳に波の音が聞こえる。その音で、アルスは気が付いた。
「う……うう……」
立ち上がろうとしたのだが、弓彦が抱き着いてなかなか起きれなかった。離れ離れれになるのを防ぐため、必死に抱き着いていたのだろうとアルスは思った。
「弓彦、大丈夫か?気付いてくれ‼」
「はへ……うああ……」
弓彦は頭を抱えながら、目を覚まし、立ち上がった。
「アルス、無事でよかった」
「確かに私達は無事だが……ここはどこだ?」
周囲を見渡すと、ボロボロの看板とボロボロの骸骨を見つけた。その看板を見ると、そこにはこう書かれていた。
『ここは無人島。誰もいない……誰も来ない……寂しい……こんな所で死にたくな……by剣地』
この文章を見て、弓彦の顔が真っ青になった。そう。二人は無人島へ流れ着いてしまったのだ。
成瀬:ギルドの自室
「クソ作者‼人を勝手に殺すな‼」
突如、剣地が寝言でこう叫んだ。一体どんな夢を見てるんだろう……。




