つないだ手のぬくもり
アルスが幼女になって4週間ほど経過した。あの変態魔王曰く、幼女化の魔法は大体一ヶ月で効果が切れると言っていたが、大体一ヶ月が経過したが、アルスは幼女のままだった。
「ねぇ、アルスっていつまで幼女の姿なの?」
と、三毛が弓彦にこう聞いてきた。弓彦は唸りながら答えを探したが、答えは出てこなかった。
「分からん。ただ、あの魔王が言っていたことは嘘じゃないと思うんだけど……」
そう答えるしかない。弓彦はそう思いながら三毛や御代達生徒会、岳人達風紀委員に答えをしていた。
ある休日の事。弓彦はバックを持って出かけようとしていた。横にいるアルスは、小さなリュックを背負って立っていて、ムーンは手提げバックを持っている。
「じゃあ行ってくるよ」
「気を付けてね~」
母親に見送られ、アルス達は出かけて行った。今日、アルスは弓彦とムーンとデパートへ行く日なのだ。弓彦はプラモデルと新しい服、アルスとムーンは新しい服を買いに。
バスに乗ってデパートに付き、アルス達は2階へ来ていた。
「アルス、迷子にならないようにちゃんとムーンの手を握ってるんだぞ」
「幼く見えるが精神は元のままだ。甘く見るな」
「そうですよ。仮に迷子になってもお姉さまなら何とかなります」
と、会話をした直後だった。デパートのアナウンスが響き渡ったのだ。
「只今より2階の婦人服売り場でスーパーウルトラアルティメットスーパーセールを行います。時間制なので、早く来ないと売り切れちゃうよ~」
その直後、周りにいる婦人の群れが慌てて走り出した。アルス達はその勢いに飲まれ、離れ離れになってしまった。
「いつつ……婦人って強い……」
もみくちゃにされつつも、弓彦は群れから抜け出すことに成功した。だが、アルスとムーンと別れてしまった。どうやって探そうか考えていると、後ろからさっきに似た変な感じを察した。後ろを見ると、そこには世界に似たマネキンが立っていた。
「うわっ、世界!?」
弓彦は悲鳴を上げ、後ろへ下がった。だが、マネキンは何もしてこなかった。
「……本当にマネキンか?」
不審に思いながら、弓彦は世界に似たマネキンに近付いた。だが、近付いたら荒い息が聞こえた。それを聞いて、弓彦はこれが世界だと察した。何やってんだと呆れていると、近くにいた店員が世界に近付いてこう言った。
「あれ?こんな所にマネキンなんてあったかしら?」
と言って、世界をマネキンと間違えて運んでしまった。
「いらないマネキンは処分するって言ってるから、これも処分してもらおっと」
この言葉を聞き、世界はいろいろとやばい事を察した。だが、意外と店員の握力が強いせいで、なかなか抜け出せなかった。この光景を見た弓彦は、あほくさいと心の中で思った。
「うーん……困ったな」
アルスは周囲を歩きながら弓彦とムーンを探していた。その時、一人の店員がアルスに近付いた。
「お嬢ちゃん、どうしたのかな?」
「連れと離れ離れになってしまった。まぁ、目的は分かるからすぐに会えると思うが……」
「迷子ね。お嬢ちゃん迷子ね」
「おい、話を聞いていたか?すぐに会えると言っているだろうが」
「じゃあ、お姉ちゃんが迷子センターへ案内してあげるから、着いてきて」
「あ、おい‼ちょっと待て‼」
というわけで、アルスは迷子センターに運ばれてしまった。
「ふぅ……幼女の姿のままだと動きにくいな……」
「何か言ったお嬢ちゃん?」
「いえ別に」
その後、アルスは手短に自分の名前を店員に告げ、弓彦かムーンが来るまで待機することになった。
「はぁ……いつになったら戻るのやら」
と言いながら、アルスは隅の方で横になり、こう呟いた。その時、いかにも悪ガキ3人組と言いそうな3人組がアルスに絡んできた。
「はっはー!お前も迷子か!?」
「情けねーの!」
「ばっかじゃねーの!?」
「私を馬鹿にするのか。ただ、言葉には気を付けろ。貴様らも迷子ではないか」
この言葉を聞いた悪ガキどもは、怒りながらアルスに近付いた。
「なめんなよ幼女ごときが‼」
「ケケケケケ‼50回連続で迷子になった魔池琉が怒ったぞ‼」
「あいつの拳は男女平等だ‼あの幼女、可哀そうに‼」
魔池琉が怒り出し、アルスに殴りかかろうとした。だが、アルスはその攻撃を難なく受け止め、こう言った。
「しょぼい拳だな」
「なっ……俺様のスーパービクトリーブレイクパンチが破られただと……」
「しょぼいパンチの割に、名前は立派なんだな……」
アルスはそう言って、ため息を吐いた。その時、店員がアルスに近付いた。
「弓彦っていうお兄ちゃんが迎えに来たわよ」
「おー、弓彦が来たのか。じゃ、行こう」
その後、アルスは迎えに来た弓彦と合流した。
「いやー、大変な目に合った」
「まぁ、こんな姿じゃあ迷子に間違われるな」
「すまんすまん」
この時、弓彦はアルスの手を握った。
「何をするんだ?」
「これなら迷わねーだろ。ムーンとは連絡を取った。こっからすぐ近くのフードコートで待ち合わせてる。じゃ、行こうか」
「……おう」
移動しながら、アルスは弓彦の手を握りながら思った。男の人と手を握るなんて初めてだと。
その後、買い物を終えたアルス達や無事に帰宅した。
「いやー、欲しい物があったよかったです」
ムーンはユニ〇ロで買った服を整理しながらこう言った。アルスも、同じように服を整理していた。そんな中、アルスは弓彦とつないだ手をじっと見つめた。
「……暖かかったな……」
「何がですか?」
「いや、そろそろ夏だから暖かいなーって」
「そうですね。夏が過ぎれば、お姉さまはここに来て丸一年ですね。なんていうか、時が流れるのって早いですね」
「うむ。そうだな」
「で……お姉さま、クリスルファーに戻れるとしたら……どうしますか?」
ムーンの言葉を聞き、アルスはその意味を聞いた。
「どういう意味だ?」
「いえ、今はまだあの世界に戻れる方法は見つかってないのですが……もし、何らかの方法が見つかって向こうへ戻れるとしたら……お姉さまはどうしますか?」
「そうだな……」
アルスが考えている中、突如体が光出した。
「え?何これ?」
「まさか、元の姿に……」
この直後、強い光と共に服が破れる音がした。この時のアルスを見て、ムーンは驚いてこう言った。
「お姉さまが元に戻った‼」
「何かあったのか!?」
音を聞いて慌てた弓彦が部屋に入って来た。その時、元の姿に戻ったアルスをt目が合った。この時、幼女時に身に着けていた服や下着は元に戻った時、びりびりに破けてしまった。つまり、今のアルスはスッポンポンの全裸である。
「う……うあああああああああああああああ‼見るなァァァァァァァァァァァァ‼」
アルスは恥ずかしさのあまり、魔力で弓彦をぶっ飛ばしてしまった。




