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見た目は子供、中身はチート勇者、その名は女勇者……それ以上言ったらアウトだよね

 翌日。幼女の姿となったアルスを見たクラスメイトは驚いていた。


「あ……アルス!?何でちっちゃくなってるの!?」


「実はな、あの変態魔王のせいでこうなったんだ」


「うわ……あの人のせいで……」


 ショーミの事を思い出しながら、三毛は呆れていた。だが、アルスの姿を見ていた岳人は、死んだような目をして心の中でこう呟いていた。


 子供の状態だけど、僕より身長が大きいってどういうことだ?


 この時、こっそりこの様子を見ていた世界が、下種な笑い声をあげながら姿を見せた。


「あーらあら、勇者さん、こんな格好になって大変ですわね~」


「何の用だ?」


「あなたには用はないわ。用があるのは弓彦君だけよ」


「お前に用はないが。というか、あるわけねーだろ。すぐばれる嘘を言うな」


「そんな事言わないでよー。さぁ、とんでもない事をやってこの作者のなろうアカウントを削除しちゃいましょ」


「させるか」


 アルスは左手から、魔力の塊を世界に向けて放った。


「ゴアッハァ‼何で……幼女になったんだから、力も落ちたんじゃあ……」


「残念だったな、力と魔力は落ちていない」


「クッソー‼幼女化して弱くなったと思ったのに‼何でだよ‼」


 世界は捨て台詞を吐きながら、去って行った。その後、三毛はアルスにこう聞いていた。


「元に戻るの?」


「ああ。ムーンから聞いたのだが、一部の闇魔法には対象の体を幼くしてしまう魔法があるらしい。まぁ、効果は一時的なものだからいつかは戻ると思う」


「変なタイミングで戻らないといいね」


「そうだな。私としてはすぐに戻ってもらいたいな。このままだと不便だし」


 アルスは自分の手を見て、こう答えていた。




 その日、アルス達の授業の中に体育があった。体操服に着替えたものはいいものの、丁度アルスのサイズに合うものがないため、アルスは元の体操服で授業を行うことにした。


「おいアルス、どうして子供になってるんだ?」


「あれあれこれこれで」


「そうか。だが、その服じゃあ体を動かしづらいだろ」


 体育教師にこう言われ、アルスは腕を回し始めた。


「ふむ。肘が服に当たって動きにくいな……」


「今のアルスの体形に合う体操服はないしなー……どうしようか」


「まー、今のままで大丈夫です」


 この言葉を聞いた弓彦は、慌ててアルスの元へ近づいた。


「おい、本当に大丈夫か?」


「ああ。私は勇者だからな」


「勇者とかそう言う問題じゃねーよ。こけたらどうするんだ」


「何とかなるだろ」


「何とかって……はぁ、怪我したらすぐに保健室へ連れていくからなー」


「ああ。頼む」


 弓彦はどうなるか、運に任せようと思った。そして、授業が始まった。今回の体育の授業内容はサッカー。ぶかぶかの体操服を着ているアルスはどうなっているかというと……。


「オラァァァァァァァァ‼」


「グッバァァァァァァァァ‼」


 いつものように暴れまわっていた。


「ああっ‼アルスさんの強烈なシュートで、石丸君が吹っ飛ばされたー!」


「そして、ボールは勢いを落とさずそのままゴールした‼しかも、ゴールネットを突き破ったー‼」


 空に飛んでいくサッカーボールと石丸君を見て、クラスメイト達が叫んでいた。


「これで点数は33対4……」


「いや、これもう逆転不可能じゃねーか」


「大丈夫だよ、ボールは友達!怖くない‼」


 と、クラスメイトの青空羽がドリブルをしているアルスの前に立ちはだかった。


「勝負だ、アルスさん‼」


 勢いよく羽は走り出したが、その前にアルスは強烈なシュートを放った。羽は飛んでくるボールを受け止めようと構えた。


「あいつ……あのボールを受け止めるつもりか!?」


「止めろ羽!ぶっ飛んじまうぞ‼」


 クラスメイト達の声が上がる中、羽は飛んでくるボールだけを見ていた。


「ボール友達怖くない‼友達だから怖くない‼」


 彼はそう言っていたが、徐々に近づいてくるボールを見て思わずこう言った。


「ダメだ、やっぱ怖い」


 そう言って、彼は横に飛んでボールをかわした。結果、そのボールはゴールに入った。




 その日の帰り、アルスは欠伸をしながら歩いていた。


「体が小さい分、かなり疲れたな……」


「こっちもな」


 弓彦は肩を回しながらこう言った。すると、目の前に不審な車が止まった。中から黒装束の男が3人ほど現れ、弓彦を殴り、横にいたアルスを連れ去ってしまった。


「あんた、大丈夫かい!?」


「今すぐ警察を呼べ‼」


 近所の人が騒動に気付き、弓彦の元へ集まった。遠くから騒動を目撃したムーンや三毛も、殴られた弓彦の元へ駆け寄った。


「大丈夫?」


「あ……ああ……何とか動ける」


「お姉さまは今どこへ!?」


「あの白い車だ……ムーン、後は頼んでいいか?」


「はい‼」


 会話の後、ムーンは急いでアルスを連れ去った男達の元へ向かった。それを見た近所のおばさんが、弓彦にこう言った。


「あの子に任せていいのかい?」


「はい。あいつなら、アルスの暴走を止めれると思いますので」


 おばさんは最初、弓彦が何を言っているか分からなかった。その直後、男達が乗った車が蛇行運転を始めた。さらに、走行速度も落ちてきている。そして、破裂音と共に窓から男が二人外にぶっ飛ばされた。中から煙が上がり、激しい爆発が起きた。


「あら……あらら……あらららら~」


 この後すぐ、アルスとムーンが弓彦と三毛の元へ戻ってきた。


「おいおい、やりすぎじゃねーのか?」


「いや、これでも手を抜いたほうだ」


「爆発したけど」


「気にするな」


 何もなかったかのように話をする弓彦達を見て、おばさんは思わずこう声を上げた。


「最近の子はたくましいねぇ~」




 家に帰り、アルスは風呂に入っていた。シャンプーをしようと思い、湯船から上がって上にあるシャンプーを手にしようとしたが、背が小さいせいで届かない。


「く……やっぱりダメだ。ジャンプしたいけど、滑ったら危ないしなー」


 アルスは腕組をしながら、考え始めた。そんな中、窓から気配を察した。アルスはため息を吐き、魔力を込めつつ窓を開けた。


「何をしている魔王?」


「何をしているって……そりゃー覗きに決まってる」


 直後、アルスは溜めていた魔力を一気にショーミの馬鹿にぶつけた。


「はぁ……早く元に戻らないかな……」


 アルスは何とかシャンプーを手にし、髪を洗いながらこう呟いた。

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