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気付けよ恋心

 岳人はなぜこんな気持ちになっているのか全く理解できなかった。生まれて17年ほど、こんな感情になったのは初めてだからだ。


「大丈夫か岳人?何かあったら相談しろよ」


 様子がおかしい岳人を見て、心配した弓彦がこう言うが、岳人自身何があってこんな気持ちになっているのか分からないのだ。


「どうなってんだか……僕……」


 岳人は小さくこう呟き、ため息を吐いた。




 そんな中、平塚は授業中岳人の今後について考えていた。


「おい平塚、授業中何やってんだ?」


 先生が考え込んでいる平塚に近付き、聞いてきた。


「おい平塚!何をそんなに考えている!?」


「弟の事です。最近元気がないので」


 平塚の返事を聞き、先生はそうかと言って、こう続けた。


「弟の事が気になるのはいいが、今は授業中だ。プライベートの事を考えたくなる気持ちは分かるが、授業に集中してくれ。お前、ただでさえ馬鹿だから授業位はしっかり受けろ」


「……分かった!分かったぞ、どうすればいいのかが‼」


 と、先生の言葉を聞き流ししていた平塚は、突如大声を出してこう言った。だが、その時にチャイムが鳴り響いた。


「あ、終わっちゃった……」


「お疲れさんです!ちょーっと失礼しまーす!」


 と言って、平塚は猛ダッシュで教室から出て行ってしまった。




 同時刻、教室で休憩しているアルスの元にムーンがやって来た。


「お姉さま、遊びに来ました~」


 ムーンの声を聞いた岳人が、少しだけムーンの方を向いた。その時、大声で岳人の名前を呼ぶ平塚の声が聞こえた。


「に……兄さん!?」


「おっ、あの子もいるじゃん。ちょーどよかった!」


 平塚はムーンに近付き、こう言った。


「お願いがあるんだけど。岳人の奴が君の事を……」


「あああああああああああああああああああああああああ‼」


 嫌な予感を察した岳人が、平塚をドロップキックで吹き飛ばした。そして平塚をムーンから離れさせ、こう聞いた。


「何やってんだ兄さん!?」


「ちーっとお前のお手伝いを……」


「何だよ僕のお手伝いって!頼むから勝手なことをしないでくれ」


「はいはい」


 と言って、平塚は再びムーンに近付いてこう言った。


「お願いがあるんだけど、岳人と(ピーーー!)」


「何言ってんだバカ兄がァァァァァァァァァァァァァァ‼」


 再び岳人のドロップキックが、平塚に命中した。


「あつつ~」


 倒れた平塚は腰をさすりながら起き上がろうとしたが、平塚の後を追ってきた若葉、そして御代と日枝が近付いて3人協力してキャラメルクラッチをかけた。


「お前は前回の話を忘れたのか!?」


「ギャアアアアアアアアアアアアアアア‼」


「本当にあんた馬鹿ね‼しばらく悲鳴を上げてなさい!」


「手を貸します、会長‼」


「アアアアアアアアアア!もう止めてェェェェェェェェェェェェェ‼」


 その後、廊下中に平塚の悲鳴が轟いた。




 放課後、ムーンは雀と乃小達とコンビニへ来ていた。


「えーっと……あったあった。今週号の女性の味方」


 乃小は雑誌コーナーから女性雑誌を手に取り、レジへ向かった。ムーンは物を見ながら、何を買おうか悩んでいた。


「何か欲しいのあったムーンちゃん?」


「どれも珍しいので、どれを買おうか悩んでます」


「ははは……」


 そんな時、ムーンはかわいらしい服を着た女性が映っている雑誌を見つけた。


「可愛い服ですねー。あ……でも高い」


「似たような服を探せば大丈夫だよ。ムーンちゃんもおしゃれに興味あるの?」


「ええ。お姉さまもこの世界に合わせて服はいくつか買っておいた方がいいと言われたので」


 その後、ムーンはその雑誌を手にレジへ並んだ。すると、店員が慌ててクズ玉やクラッカーを手に取った。


「何ですかこれ?」


「おめでとうございます!あなたが当コンビニの100万人目の買い物客となります‼」


 ムーンは突然の事で、びっくりして固まってしまった。


「私が、100万人目ってことですか?」


「そうです。あなたにこの記念品を差し上げます。どうか、使ってください」


 と、ムーンは店長から封筒を渡された。


「中を見ていいですか?」


「どうぞどうぞ」


 乃小と雀は中に何が入っているか気になり、ムーンの横で中身を見ようとした。


「では……開けます」


 中を開けてみると、そこには2枚の紙切れがあった。


「紙切れ?」


「ムーンちゃん……これ、紙切れじゃないよ。チケットだよ」


「おお!有名な千葉のマウスランドのチケット!しかも、プラチナだ‼」


「これがあると何かあるんですか?」


「有名な遊園地に行けるんだよ」


「しかも、これ高いチケットだからどんなアトラクションも優先して案内してくれるんだよ!1枚一万ほどするのに……いいな~」


 ムーンはこのチケットを見て、ある事を考えていた。


「お姉さまにこれを渡して……グヘヘヘヘ~」


「な……何を考えてるの?」


 涎を垂らしているムーンを見て、乃小は少し引きながらこう聞いた。




 家に帰り、ムーンはこのチケットの事をすぐにアルスに聞かせた。


「お姉さま!実は遊園地のチケットが当たったんです!一緒に行きませんか!?」


「ほう。遊園地か」


 この時、アルスはある事を閃いた。弓彦もそのことを察し、様子を見に近付いた。


「ムーン。これは岳人に渡せ。そして岳人と共に行け」


「どうしてですか?」


「一度助けてもらったんだろ?その礼としてだ」


 ムーンは少し考えた後、アルスにこう言った。


「分かりました。明日あの人に渡してきます」


「うむ」


 会話後、アルスは急いで部屋へ戻り、若葉に連絡を取った。


「若葉さん。今ムーンが運よく遊園地のチケットが当たったので、そのチケットを岳人に渡すように伝えました」


『ナイスタイミング‼で、いつ行くか決めたの?』


「まだのようです。分かり次第連絡をします」


『お願いね。岳人たんの恋心が伝わるかどうかはあなたにもかかっているんだから』


「承知してます。では」


 アルスは通話を切った後、弓彦にこう言った。


「弓彦。ムーンが出かけるとき日は開けておけよ」


「尾行するのか?」


「もちろんだ。ムーンの事を見守りたいからな……」


 アルスはどんな服をしていこうか考えているムーンを見て、こう言った。

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