勇者の恋心!?
「緊急事態よ、皆」
御代は三毛、日枝を生徒会室に集め、極秘の会議を行っていた。
事の発端はこうだ。休み時間にアルスは御代にこんな相談をしたのだ。何故か知らないが、胸がモヤッとすると。三毛が詳しい事を聞くと、世界が真剣に弓彦のためにチョコを作っている姿を見てからモヤッとしているらしい。その後、三毛からこの事を聞いた御代は、大急ぎで緊急会議を始めたのだ。
「では、この状況を打開できそうな人を呼んできました。風紀委員の若葉さんです」
と、御代は若葉を紹介した。若葉の姿を見て、日枝は立ち上がった。
「何で風紀委員のショタコンがここにいるんですか!?」
「うーん……話を聞いたら私なら助けになるって言って来たからさー」
「私の方があなたより健全な恋をしているつもりです」
「他の人から見たら健全からかけ離れていると思うけど。まぁいいや。で、どうしたらいいか教えてくれない?」
御代がこう言うと、若葉は少し考えながらこう言った。
「流れに任せるしかないですね。二人は同じ屋根の下で住んでいますし、告白するチャンスは他のカップルよりも多いはず。それに……こう言った問題は私達があーだこーだ言わない方がいいと思います」
若葉の意見を聞き、御代はそうねと返事をした。
「確かにそうだわ。私達があれこれする問題じゃないしね」
「ただ、アルスの場合恋心が分からないと思います」
「それに、弓彦もああ見えてラノベの主人公みたいに異性からの好意に対して鈍感だと思います」
三毛と日枝の言葉を聞き、御代と若葉は少し考えた。
「……その可能性もありね」
「二人の仲が進展する以前に、気持ちの事を教えないと」
「だったら俺に任せなさい‼」
そこに現れたのは平塚だった。若葉は呆れた顔をしながら平塚に近付いた。
「平塚さん、どうしてここに来たんですか?つーか風紀委員の仕事をしろ」
「面白そうだから話を聞いていました。そう言う事なら、俺に任せなさい!」
と言って、平塚は走ってどこかへ行ってしまった。
「あ!ちょっと待て馬鹿‼あーもう!あの馬鹿の事だから、きっと何か起こすわ‼」
若葉はこう言うと、去って行った平塚の後を追い始めた。
その頃、アルスと弓彦は剣道部へ顔を出していた。アルスは気合の入った剣さばきで、練習試合を連勝していた。
「今日のアルスさんすごーい」
「いつもより気合入ってんな」
「さすが勇者!俺達にできないことをやってのける!そこに痺れる!憧れるぅ!」
「ふぅ……流石に疲れたな。すみません、少し休みます」
アルスはロッカーへ行き、防具をロッカーへ入れた後、タオルで汗を拭こうとした。その時、平塚の声が聞こえた。
「おーい‼アルスー!弓彦ー!お前らの気持ち、教えてやるよ!それは」
「黙ってろ馬鹿野郎‼」
「余計なことをするな馬鹿野郎‼」
と、御代と若葉のWドロップキックが平塚に命中し、平塚は近くの池に向かってぶっ飛んだ。
「御代会長、それに風紀委員の若葉さん。どうかしたんですか?」
「いえ、どうもしないわ~」
「明日辺り生徒会に顔を出してね。じゃあ部活頑張って~」
そう言うと、二人は池で浮いている平塚を回収して去って行った。
その後、二人は体育館裏へ行き、平塚へ説教していた。
「ああいうのは本人に任せるって私達言ってるでしょうが」
「余計なことをしないでください」
「え~?だって見ててモヤッとしないの~?こいつら両想いのくせにいつになったら告白するんだよ?さっさとしろ‼って思わない?」
「思わない。そう思うのはあんただけよ」
「いい?二人の間になんかまた邪魔をしたら、今度は富士山の火口へ突き落すわ」
「じゃあ、あの人はいいの?」
と、平塚が指を指す方向には、アルスの着替えを覗いているショーミの姿があった。
「グヒヒヒヒヒ~。いや~、汗をかいて着替えをしている勇者はエロいな~。実にエロいな~」
こんな馬鹿な事を言いながら、ショーミは堂々と隠し撮りをしていた。ショーミに気付いたアルスは、ショーミに近付いて首を絞めた。
「何をやってる変態魔王?」
「覗きと盗撮」
「正直でよろしい。では、その後どうなるか考えてみろ」
「もしかして……右手で殴るんですか~?」
「NO!NO!NO!」
「も……もしかして左手で殴るんですか~?」
「NO!NO!NO!」
「も……ももも……もしかしてセイントシャインで斬り刻むんですかァァァァァァ~!?」
「YES!YES!YES!いでよ、セイントシャイン‼」
その後、アルスはショーミに斬りかかった。この光景を見た御代と若葉は、呆れながらこう言った。
「あの魔王の場合、何かしたらアルスが動くからいいわ」
その後、アルスは家に帰った後、ムーンにこう言った。
「私のモヤモヤの話だが、皆に聞いても分からそうだった」
「そ……そうですか」
ムーンは察した。皆もアルスの事を思い、わざと分からないと言ったことを。そして、この感情を自分で察した方が本人に良い事も。
「この気持ち、自分で考えてみるよ」
「はい。私も微力ながら、何かできることをします。私も協力しますよ、お姉さま」
ムーンは自分の考えに答えを出していた。いつかきっと、アルスも好きな人が出来て、その人と結ばれるかもしれない。その時になったら、自分にできることがある。それは、暖かく二人を見守る事。
もしかしたら、アルスは弓彦への恋心に気付くか、逆に弓彦がアルスに対して恋心を抱くかもしれない。どちらかが告白して結ばれた時は、二人を祝福しようと答えを出したのだ。
お姉さま、いつかきっと、その気持ちが何なのか分かります。だけど、その気持ちの答えを出すのは……自分の力でやってください。それがあなたの為であるのですから。ムーンは心の中で、アルスにこう言った。
そんなムーンの気持ちを知らず、アルスは一人で考えを出していた。
「そうか……そう言う事だったんだな……」
夜。弓彦は風呂に入っていた。
「今回の話、全く出番がなかったな……」
そんなことを言いながら、弓彦は体を洗っていた。そんな中、いきなりアルスが入って来たのだ。もちろん全裸で。
「弓彦!たまには一緒に風呂に入ろう!」
「あぎゃああああああああああ!?なんでそうなるんだ!?」
「私のモヤモヤが晴れるかもしれない‼今この状況で、なんかモヤモヤが晴れそうだ」
「何だよそれ!?つーか何か考え事でもあったのか!?」
「無くなりそうだから気にするな!」
そう言うと、アルスは無理矢理風呂場に入って来た。直後、そのことを察したムーンも風呂場に入って来た。
「お姉さまと一緒にお風呂に入るなんてずるい!私も一緒にお姉さまとお風呂に入りたいです!」
「だからってお前も来る必要ねーじゃねーかァァァァァァァァァァァ‼」
ムーンが服を脱いでいる時、窓から世界が現れた。しかも、手にはちょっとエッチな椅子があった。
「弓彦君!そういうプレイなら私も混ぜて‼」
「そんなことしてねーよ!つーか帰れ‼」
「ごめん、ちょっとだけでもいいからお風呂に入らせて。意外と外寒いから風邪ひきそう」
「バカじゃねーの!?」
「お姉さまーん‼一緒に入りましょー!」
風呂場から聞こえるドタバタを聞き、弓彦父はこう言った。
「大変だな、我が子も……」




