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勇者のプレゼント


 クリスマス前日。アルスは三毛とムーンと一緒にデパートへ出かけていた。


「うわー。本当にいろんなものが売っていますね」


 初めてデパートへきたムーンは、品物の多さに驚いて声を漏らしていた。


「私も弓彦ときた時、同じこと言ったと思う」


「で、今日はどうしたの?」


 と、三毛がこう聞いた。


「実は、弓彦に何か買ってやろうかと思ってな……どんな物を買っていいか分からないから相談に乗ってほしいんだ」


「プレゼントを贈るんだ」


「ああ。クリスマスだし、世話になってるからいいかなと思って」


「だったらこれでいいんじゃないんですか?」


 と、ムーンが雑貨屋で売っていた変な仮面を手にこう言った。


「いや、そんな仮面を貰ってもうれしくないと思う……」


 三毛はムーンにその仮面を返すように伝えた。その時、雑貨屋で売っているものを見渡した。


「弓彦君は男の子だし、男の子がもらってうれしい物ってないかな?」


「ペンダントとか便利なキーホルダーとかありますね。かっこいい物でよくないですか?」


「かっこいい物か……これなんかよくないか?」


 アルスが手にしているのは銃の形をしたライトだった。


「ライトか。でもこんなに大きいライトって欲しいかな?」


「これすごいぞ、引き金を引くと音が鳴る」


 銃型ライトの引き金を引くと、ズキューンと音を鳴らしながらライトが光った。


「ライトをつけるたび音が鳴るって少し恥ずかしいよね」


「そうか? 自分の居場所を知らせるにはもってこいと思うのだが」


「この世界でそういう時ってあります?」


 ムーンはそう言いながら店内を物色した。




 その頃、弓彦は一人部屋の中で本を読んでいた。そんな中、誰かが窓を叩く音が聞こえた。


「世界か?」


 うんざりした顔で弓彦は窓を開いたが、その時に箱のようなものが弓彦の部屋に飛び込んできた。


「うわっ‼ 何だ?」


 飛び込んできた箱を見ると、そこには『勇者アルスへ愛をこめて~ショーミ~』と書かれた札が付いていた。


「アルスは出かけて留守だぞ」


「何だって⁉」


 箱の中から全裸……だけど大事な部分をリボンで隠した状態のショーミが現れた。


「留守か……やはりいる可能性がある夜にやればよかった!」


「すいません。帰ってもらえないでしょうか?」


「うむ、すまないな。邪魔をした」


 と、ショーミは箱を抱えて窓から降りて行った。その時、下から「キャー!不審者ー!」と、おばさんの声が響いた。




「一体何を買えばいいんだか……」


 アルスはホットミルクティーを一口飲み、こう言った。デパートへ入って数時間が経過したのだが、未だに弓彦に何を渡せばいいか答えは出ていないのだ。


「簡単だと思ってたんですけど……意外と難しいですね」


「ハンカチとかでもいいと思ったけど、男の子の好きな柄って分からないよね」


「うーん……どうしたものだか」


 三人が考えていると、近くで知っている声が聞こえた。


「へーい彼女ー! 俺と買い物しなーい?」


「結構です」


「デパートでナンパするバカ野郎がいる」


「もしかして……」


 三人はナンパ野郎に近付き、声をかけた。


「やっぱり雍也先輩だ」


「へ? 三毛ちゃん……それにアルスちゃんと……誰?」


「私は賢者、ムーン・ローレリアです」


「賢者……じゃあアルスちゃんと同じ世界の子か。で、3どうして集まってるの?」


「弓彦へ渡すプレゼントを買いにきたのです」


「そうか……じゃ、頑張ってね。俺もナンパ頑張るから」


 そう言って雍也は去ろうとしたが、アルスが服を引っ張った。


「ちょうどよかった。私の買い物を手伝ってください」


「どうしてそうなるの?」


「男の子の好きなものが分からないんです。男である雍也先輩に聞けば何か分かるかもしれないんで」


「そう。だけど俺はナンパを」


「どうせ失敗します。だったら買い物を手伝ってください」


「酷いこと言うね君」


 そんなわけで、アドバイザーとして無理矢理雍也を同行させることにした。


「えーっとね……プレゼントを贈るならペンダントかキーホルダー。どんな形が好きなのかは人それぞれ違うから、買うとしたら変な形じゃないやつ。できればシンプルなものがいいね。もしペンダント以外なら……やっぱハンカチかマフラーかな。一色の物で目立たないマフラーがいいね。おしゃれしやすいし」


「ほう。結構いいアドバイスですね」


「これでも少しは勉強してるんだよ。ナンパ成功のために」


 と、どや顔で雍也はこう言ったが、誰も聞いてはいなかった。


「じゃあ冬に使えるように、マフラーでいいかな」


「それいいですね」


「今年は寒いっていうし」


 その後、マフラーを求めて服屋へ向かって行った。




 留守番をしている弓彦は、自室でゲームをしていた。すると、また誰かが窓を叩いたのだ。


「世界か? それともショーミさんか?」


 弓彦が窓を開けると、そこからラッピングされた箱が飛んできた。またショーミの仕業かと思い、弓彦はその箱を調べた。その箱には『弓彦君へ愛をこめて~世界より~』と書かれた札があった。それを見た弓彦は何も言わず、窓へ捨てようとした。だが。


「いつものようにはいかないわ、弓彦君‼」


 箱の中から全裸だけど、大事な部分を生クリームで隠した世界が現れた。


「さぁ、ちょっと早いけどクリスマスパーティーを始めましょう!」


「やだ」


 弓彦は部屋から出ようとしたが、世界は背後から弓彦を抱きしめ、そのままベッドへ向かった。


「おいコラ‼ ベッドの上に乗せるな‼ うわ、生クリームで布団が汚れる‼」


「布団のことは気にしないで……そんなことより私を汚して……」


「お前は心がすでに汚れてるだろうがァァァァァァァァァァ‼」


 弓彦は世界を突き飛ばし、部屋から逃げようとしたが、世界がその前に阻んだ。


「今日はマジよ‼ 本当にマジよ、あなたと一発やりたい‼」


「お前のような奴とやったら後々大変な目に合いそう! だから嫌だ‼」


「もう、純情な子ね。でもそこが大好きよ」


 世界が弓彦に近付こうとしたその時、アルスが帰ってきた。


「何やってんだお前は?」


 アルスは世界を掴み、世界の家に向かって世界を投げた。


「大丈夫か?」


「ああ……助かった」


 弓彦は服を直し、アルスにこう言った。


「夜に渡したいものがある。その時に部屋に入ってきてもいいか?」


「え? いいけど」


 アルスはそう言うと、部屋から出て行った。




 その夜。家の中で簡易的なクリスマスパーティーを終えた弓彦は部屋のベッドの上で座っていた。


「食いすぎたかな……」


 パーティーに出されたのはローストチキンやピザ、サラダとスープなど。母がいつも以上に張り切ったせいで料理がいつもより多かったのだ。


「冬休み中は動こうかな……」


 そんなことを呟いていると、アルスとムーンが部屋に入った。


「弓彦。渡したいものがある」


「え?」


 アルスは弓彦の隣に座り、手にした袋を渡した。


「何これ?」


「クリスマスプレゼントだ。前に言っただろ、クリスマスにはプレゼントを渡す習慣があると」


「ああ……」


「とにかく! 開けてみなさい、お姉様が一生懸命考えて買ったプレゼントなんだから!」


 アルスの横に座っているムーンが、こうはやし立てた。袋を開けて中を見ると、そこには青いマフラーが入っていた。


「あ、マフラーだ」


 弓彦はマフラーを取り出し、じっと見つめていた。


「寒い日に助かるな。ありがとな、アルス。そうだ」


 と、弓彦は机の上に置いてあった袋をアルスとムーンに渡した。


「この前、一人で出かけた時に買ったんだ。似たのが二つあったから二人にちょうどいいかなって」


 弓彦から渡された袋を開けると、それは小さくて青い石が付いたペンダントだった。


「安物みたいだけど……かわいいですね」


「お前とお揃いだな」


 アルスはそのペンダントを早速つけ、ムーンに見せた。それを見たムーンも、急いでペンダントを装備した。


「私も何か買えばよかったかな……」


「次のクリスマスでいいよ」


 弓彦は笑いながら、ムーンにこう言った。その後、アルスとムーンは弓彦に向かって同時にこう言った。


「「プレゼントありがとう。メリークリスマス」」


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