変態魔王は発情期である
とある河原。一つ大きい青いテントがたてられていた。その中から出てきたのは、魔王の部下、イータであった。
「はぁ……いつまでこんな生活が続くのやら……」
彼は何とかバイトをして、食費を稼いでいるのだが、肝心な魔王ショーミが全く働かず、美少女の後を追いまわしているのだ。その度に、ショーミは警察の厄介になっている。
イータはテントの中を見ると、大きないびきをかいて爆睡しているショーミの姿があった。
「ったく、あの人も働いてくれたらテント生活から抜け出せるのにな……」
彼はぼやきながら、火の魔法を使って料理を始めた。すると、いきなりショーミが起き上がったのだ。
「どうかしたんですか?また美少女の気配でもしたんですか?」
呆れながらこう言ったが、ショーミの苦しそうな顔を見て、イータはこれはただ事じゃないと察してショーミに近付いた。
「ショーミ様?顔色が悪いようですが」
「ム……ム……」
「ム?何を伝えたいんですか?」
「ムラムラする」
返事を聞き、イータは心の中で本当にいつかこの人を懲らしめたいと思った。
「あ~~~~~~~‼ムラムラするんじゃァァァァァァァァァ‼もう誰でもいい、幼女でも少女でも熟女でもいいから一発やらせてくれェェェェェェェェ‼私の胸の高鳴りを止めてくれェェェェェェェェ‼」
そんなあほくさい事を叫びながら、ショーミは飛んでどこかへ行ってしまった。
「あ!あの馬鹿魔王!クソッ‼」
イータは馬鹿魔王を追う前に、スマホを取り出してバイト先に連絡をした。
「あ、もしもしイータです。実は、急用ができてしまいまして、シフトを変えてもらいたいのですが……はい。ありがとうございます。では今日休みを取りますので、その分は日曜日に出勤しますので。はい。分かりました。ありがとうございます」
その頃、ショーミはアルス達が通う学校の近くに降り立ち、周囲を見回していた。
「匂うぞ。匂うぞ匂うぞ美少女の匂いが‼」
本当に気持ち悪いことを叫ぶショーミを見た周りの人は、スマホを取って警察に連絡を入れていた。だが、ショーミはそんなことを気にせず、変な動きで美少女を探し回っていた。その時、少女たちの会話が聞こえた。
「でさ~、風紀委員の連中にばれちゃったんだよね、授業中にスマホいじってたの」
「草生える。ばれたあんたが悪いじゃない」
「だって仕方ないじゃん。あのゴリラの授業つまんないんだもん。だったら○魂のBL同人誌読んでた方がまだまし」
「いや、授業中にとんでもないの見るんじゃないよ……」
この会話を耳にしたショーミは、口を大きく開けて女子高生の前に現れた。
「お嬢さん、今すぐラブホへ行ってフィーバーしませんか?それとも青い空の下でフィーバーしませんか?」
「な……何この人?変態?」
「あれでしょ。隣のクラスのアルスって人を追ってここに来た変態」
「そうです!私が変態です!いや違う、魔王です!」
ショーミはそう言うと、女子高生に襲い掛かった。
「ふひひひひひ、祭りの始まりじゃ~」
「何やってるんだお前は!?」
空から光が降って来た。その光はショーミの体全体を覆った。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼熱い、超熱いんですけど、顔溶ける‼マジで溶けてるんだけど‼」
「当たり前だ。それは聖なる光、邪なるものを打ち消す効果があるんだからな」
校門からアルスがセイントシャインを持ち、現れた。
「おい魔王、登校中に暴れるな。皆に迷惑だろ‼」
「そんなこと知った事か‼そうだ、勇者アルスよ、このまま我と一緒にフィーバーしようぞ‼」
「一人でやってろ‼」
と、アルスはセイントシャインを振り下ろい、ショーミに一閃を加えた。
「ピギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
「ったく、馬鹿のくせに体力は有り余ってるからな貴様は……」
「アルスー。魔王は仕留めたかー?」
「お姉さま、魔王の気配を察したので飛んできました」
弓彦とムーンが、様子を見にやって来た。それから、外の騒動を聞いて三毛や世界などの生徒もやって来た。
「この魔王もしょうがない奴だな」
「一回半殺しにします?」
「そんな事をしなくてもいい、こいつ回復力だけは恐ろしいから」
アルスは紐を持ってきて、気を失っているショーミの体を縛り、どぶ川に投げ捨てた。
「騒動は終わりだ。戻ろう」
アルスはそう言うと、教室に戻って行った。その時、三毛は一人で校門の外に出る世界を見つけた。世界の事だから、何か馬鹿な事を考えているんだろう。そう思った三毛はアルスに近付いてこう言った。
「世界が何かするかもしれない」
「何かしたらぶっ飛ばすだけだ」
この会話を聞いていた弓彦は、溜息を吐いた。
「あの女……今度は何をやらかすんやら……」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア‼濡れるよ臭いよベトベトするよー‼」
どぶに流されているショーミは、叫びながら助けを呼んだ。縄を縛られているせいで、体は動けないし、しかもその紐はちょっと特殊な紐で作れれていた。そのせいで、体に力が入らないのだ。
「うわーん‼こんな所で死にたくないよー‼」
「ショーミさん‼これに捕まってください‼」
と、世界が長い棒を持ってきて、ショーミに差し出した。天の助けと察したショーミは何とかそれに噛みついた。ショーミがかみついたのを察した世界は、棒を振り上げてショーミを釣り上げた。
「た……助かった……」
「とりあえず汚れを取りましょう」
「水の魔法を使えるから、それで体あらうよ」
その後、世界はショーミを縛っている紐を切り、ショーミは水の魔法で体中の汚れを落とした。
「魔王復活!で、何でお主がここにいるんだ?もしかして、私とフィーバーしたいのか?」
「私がフィーバーしたいのは弓彦君だけよ。そんな事より、あなたはアルスの体が目的なんでしょ?」
「そうだ。今は女性だったら誰とでもフィーバーできるが、できるのであれば勇者とフィーバーしたい!」
「私に協力しなさい。そうすれば、アルスの体はあなたのものになるわよ」
「で、あの弓彦という坊主の体は自動的にお主の物になる……お主も悪よのう」
「いえいえ。魔王様ほどでは。とにかく、私がアルスの行動を封じるようなことをするから、その間にあなたはアルスとフィーバーしてきなさい。ゆっくりじっくりとね」
「グヒヒヒヒヒヒヒヒ……あ、でも急に襲っても……」
「この際だから襲いなさい。その時にあなたの魅力をアルスに伝えなさい。体で。そうすればアルスはあなたの虜に……なるかどうか分からないけど、あなたの努力次第で虜になるんじゃない?」
「よしOK‼今すぐ学校に行くぞ‼」
その後、世界はショーミの手を掴んだ。そのことを察知したショーミは学校に向かって飛んで行った。
その頃、イータはショーミを探して町内を走り回っていた。
「ハァ……ハァ……どこだよあの馬鹿。いつも自分の性欲のために動き回りやがって……」
「どうかしたんですか?」
声をかけてきたのはムーンだった。イータはムーンの事を知ってはいたが、ここで戦うのはまずいと思い、こう言った。
「何でもないです」
「何でもないですではありません。どうして魔王の部下がここでばててるんですか?」
ばれてたか。
イータはそう思い、ムーンにこう聞いた。
「俺を始末するつもりか?」
「あなたを始末するようなことはしません。私は今から帰るところなんですから」
「……あとで始末するのか?」
「面倒だからしませんよ。早く帰って受験勉強しないと」
「……君はあの馬鹿魔王より立派だよ」
そんな会話をしていたが、二人はショーミの魔力を察知した。
「あの馬鹿、また学校に向かってるのか!?」
「お姉さまの体が危ない‼」
ムーンはそう言うと、急いで学校に向かって飛んで行った。イータは深呼吸をし、体調を整えた後、走って学校に向かった。




