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賢者、学校へ行く

 賢者、ムーンが日本に来た翌日。弓彦とアルスは朝の支度を終え、学校へ行こうとしていた。


「じゃあ学校へ行ってくるよ」


「うん。気を付けてね。アルスちゃん、むやみに空を飛ばないでね。スカートだからパンツ見えちゃうわよ」


「スパッツを履いているから大丈夫だ」


「ならいいわ。弓彦、遅刻しそうだったらアルスちゃんと一緒に空を飛んで学校へ行きなさい」


「母さん、その発言はどうかと思う」


 弓彦達が玄関でこんな会話をしていると、二階からムーンが降りてきた。


「あれお姉さま、どこかへお出かけですか?」


「学校だ。時間がないからもう行くな」


「はい」


 アルスは弓彦と共に、学校へ行った。その後、ムーンは朝食を食べ、朝の支度をしていた。その時、ある事に気付いた。


「あの男と一緒に出掛けたんですか!?」


「あら、今更?」


「お姉さまが不安です、私も学校とやらへ行きます‼」


「あらー、大変ねー」


 ムーンは外に出て、アルスの魔力を察知し、空を飛んで学校へ向かった。




 その頃、学校では。


「くたばれアルスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼」


 世界はアルスに向け、思いっきり力を込めてボールを投げた。


「そんなもんで私が倒せるか」


 アルスは難なく世界が投げたボールをキャッチした。


「ったく、世界は変わらねーな……」


 二人のやり取りを見て、弓彦は呆れて溜息を洩らした。そんな時、上から何かが飛んでくる音が聞こえた。


「なんか飛んできた」


「鳥か?」


「飛行機か?」


「悟○さか?」


「いや、フ○ーザ様?」


「違う、少女だ‼」


 空から飛んできたのは、ムーンだった。ムーンはグラウンドに着地し、アルスと争っている世界を睨んだ。


「お姉さまの事が気になって飛んできたのですが……何でたかが人間がお姉さまと争っているんですか?」


「ガキが余計なことを探るんじゃないわよ‼」


 世界の殺意の矛先はムーンに向けられた。殺意を察したムーンは右手に魔力を発し、地面に向けてたたきつけた。


「しばらく身動きを封じます‼」


 その直後、いきなりグラウンドに草が生えた。草はぐんぐんと生えて行き、世界の体に縛りついた。


「ちょっと何よこれ!?」


「大地の魔法です。植物や地面を自由自在に操る事が出来ます」


 急に生えてきた草を見て、他の生徒達は慌ててグラウンドから離れて行った。


「魔法って本当に何でもありだな」


「いや、あれこえーよ‼」


「どうせなら触手で世界の触手プレイを……あー、あまり見たくないな」


「これがほんとの草生えたwwwwwwwww」


 この様子を見ていた体育教師は、生徒の一人にこう告げた。


「俺ちょっと除草剤買ってくる。とりあえずコンビニ行ってくるわ」


「先生、コンビニに除草剤は売ってません。せめてカー○ホー○センターへ行ってください」


 世界の体を封じたムーンは、魔力を練りながら世界に近付いた。


「これ以上お姉さまに危害を加えたらお仕置きしますよ」


「けっ、しゃらくさいガキね‼」


 世界は気合で自身の体に縛りついている草を振りほどいた。この様子を見て、ムーンは驚いて一歩引いた。


「そんな!ただの人間が私の魔法で作った植物を破るなんて!」


「こんなもんで私は止められまいわ‼」


「ならこれはどうです‼」


 と、ムーンは練っていた魔力を電撃に変え、世界にぶつけた。電撃を浴び、痺れた世界はそのまま気を失った。


「これでよし」


 手を払い、ムーンはアルスに近付こうとしたが、その前に弓彦がムーンを捕まえて学校の外に追い払った。


「これ以上騒動を起こすな」


 弓彦はそう言うと、校門から去って行った。




 昼休み。弓彦は浦沢と弁当を食べながら話をしていた。話の話題はムーンの事だった。


「なー、あの子一体誰なんだ?」


 浦沢がこう聞くと、弓彦は水稲のお茶を飲み、口の中のご飯を飲み込んで答えた。


「アルスの妹分のムーン。あいつも異世界の人間」


「へー、最近よく異世界から人が来るなー」


「昨日は大変だったよ。風呂に入っている中、いきなり現れたんだから」


「そりゃ災難だったな……」


「もう疲れたよ……」


 弓彦は溜息を洩らし、こう言った。その直後、外から窓を叩く音が聞こえた。またショーミが来たかと思った弓彦は、窓に近付いた。だが、外にいたのはショーミではなく、ムーンだった。


「あ‼やっと出ましたね‼お姉さまを出しなさい‼」


「か、え、れ‼これ以上騒ぐな‼」


「お姉さまと一緒にいないと不安なんですよ‼」


「お前賢者だろ、一人でも余裕じゃねーか!」


「いいから中に入れなさい‼」


「断る!帰れ!」


 弓彦は窓を閉め、鍵をかけたのだが、ムーンは魔法で鍵を開き、教室の中に入ってしまった。


「あ!そんなのありかよ‼」


「黙りなさい!」


「何だ、また来たのかムーン」


 アルスが教室に入って来た。アルスの姿を見たムーンは、すぐにアルスに抱き着いた。


「お姉さま~。やっと会えた~ん」


「ったく、帰ればいくらでも会えるだろ」


「いつでもどこでもどんな時でも、私はお姉さまの傍にいたいんです!」


「賢者ってのは我儘なのか?」


 ムーンの言葉を聞き、弓彦は呆れていた。アルスは弓彦の顔を見て、ムーンにこう言った。


「悪いなムーン。もうしばらく家で待ってくれないか?」


「どうしてですか?」


「私は今生徒として、学校に通っている。学校ではあまり騒動を起こしたくないんだ。皆に迷惑がかかる」


「そうです……ね」


 ムーンはそう言うと、窓に近付いた。


「では先に帰ります。待ってますね、お姉さま」


 ムーンはそう言っていたが、外にいた生徒がムーンが窓から飛び降りるんじゃないかと思い、騒いでいた。


「おい、女の子が窓から落ちるつもりだぞ‼」


「止めろー‼」


「親が悲しむぞ‼」


「そんな事しても意味はない‼」


「ラッキー、パンツが見えた」


「そんな事言ってる場合かバカ‼」


 下の騒動を聞き、弓彦はムーンにこう言った。


「普通に帰れ」




 自宅に戻ったムーンは、弓彦母にこう聞いた。


「すみません。どうしたら私もお姉さまと一緒の学校へ行けるんでしょうか?」


「うーん……ムーンちゃんはアルスちゃんの一つ下よね。じゃあ一緒の学校へは無理かな……」


「やっぱり同い年ではないとだめですか……」


「でも来年で16歳でしょ?勉強を頑張れば同じ高校へ行くことは出来るわよ」


「そうですか‼私、勉強頑張ります‼」


 ムーンはそう言うと、母に高校受験のあれこれを聞き始めた。




 数時間後、剣道部の部活を終えたアルスと弓彦が帰ってきた。


「ただいまー」


「あらおかえり」


 弓彦は靴を脱ぎ、手洗いをするために洗面所へ向かったが、アルスは周囲を見渡していた。


「ムーンはどこですか?」


「今勉強中。来年の高校受験の為に頑張ってるのよ」


「ほう。あいつも一緒の高校に来たらにぎやかになるな」


 と、二人はワイワイ会話をしていたが、話を聞いていた弓彦は二人にこう言った。


「あいつ、中学行ってないだろ」


 この言葉を聞き、母は弓彦に近付いてこう言った。


「弓彦、世の中気合でどうにかなることがあるのよ」


「母さん、根性論は通じないことがあるよ」


「大丈夫。裏で手を回すから」


「……なぁ、俺の家ってなんか裏あるの?俺に言えない裏事情があるの!?」


「子供がそんなことを着にしちゃ駄目よ」


 母は軽く笑いながら去って行った。その姿を見て、弓彦は恐怖と不安を感じていた。




 その夜。弓彦は風呂に入っていた。


「はぁ……なんか裏あるだろ。そんなんなければ急に来たアルスやムーンを居候にするわけないだろ、どこから金が出てるんだ?」


 家について不安を持った弓彦が、ぶつぶつ独り言を呟いていた。その後、湯船から出て髪を洗い始めた。そんな中、扉の開く音が聞こえた。


「全く、お姉さまと一緒にお風呂に入りたかったのに、勉強してたら遅くなっちゃった……」


 なんと、ムーンが入って来たのだ。


「え……いやあああああああああああああ‼何であなたがいるの!?」


「それはこっちのセリフだ!俺の脱いだ服が置いてあっただろ‼」


「レディーファーストという言葉を知らないんですか?女性優先という考えはないんですか?」


「俺はこの後すぐ寝るんだよ!イデッ、泡が目に入った」


 と、弓彦はシャワーを取ろうと手を動かしたが、シャンプーで目が見えないため、どこにシャワーがあるか分からない。手探りでシャワーを探す中、何か柔らかい物が、手に当たった。その直後、ムーンの悲鳴が聞こえた。


「……まさか……」


 弓彦の嫌な予感が当たった。自分の手が掴んでいるのは、ムーンの胸だったのだ。


「このエロ野郎ォォォォォォォォォォォォォ‼」


 ムーンの放ったビンタが、弓彦の頬に命中した。その音は、リビングまで届いていた。


「大変だな、弓彦は」


 父はその音を聞いて、一言呟いた。

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