アルスのごとく!
御代の家は金持ちである。祖父が資産家で、株やら石油を当てたとか何とかで結構金持ちである。伊豆とか熱海とかに、別荘とかがあるし、長期休みの時はそこへ行って過ごすという羨ましい生活を送っているのである。
家の中は部屋がたくさんある。御代の部屋Aとか御代の部屋Bとか、ド○クエのモンスターの表示かよと弓彦がツッコミを入れそうな部屋の名前もある。もちろん、掃除とかすべては住み込みのメイドさんを当てにしている。
そんなある休日の事だった。御代はパンを食べながら特大の12Kテレビで、め○ましど○うびを見ていた。
「お嬢様」
「んー?どしたの大野?」
メイドの大野が御代を呼んだのだ。彼女は他のメイドである二宮、相場、櫻井、松本を呼び、御代にこう言った。
「実は、5人一組で沖縄旅行が当たったんです」
「へー。いいじゃない沖縄旅行なんて」
「それで、今日から暇を取らせてもらいます」
「うん。分かったわ。リラックスしてらっしゃい。で、何泊すんの?」
「6日です。ほぼ1週間」
「そう。じゃあパパとママに家事は任せますか……」
「いえ、旦那様は昨日から出張でアラビアへ行ってますよね。そして、奥様は好きなBL作品の映画のはしごで1ヶ月は出かけると昨日言ってました」
「……他のメイドは?」
「皆下痢で休んでます」
「何よその理由!?とにかく分かったわ。私一人、ボッチってことね」
「いえ、お父様は明日の夜には買ってくる予定です」
「それまで、何とか生きてください」
「では、飛行機に送れるといけないので失礼!」
と、言い残し、5人は物凄い速さで玄関へ向かった。その際「待ってろ沖縄イヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥ‼」と、叫んでいた。
一人っきりになった御代は、冷静になり、今後の事を考えた。
「……仕方ない。頼むことにしますか」
数時間後、御代に呼ばれたアルス、弓彦、日枝、三毛が屋敷に集まっていた。皆、それぞれお泊りセットも用意している。
「俺、なーんかやな予感がするんだよな……」
「どうしてだ?」
アルスは弓彦にこう聞いた。弓彦は溜息をし、返事を返した。
「どーせ、メイドや両親が出かけて、一人でさみしいから俺らが一晩相手にしろっていうんじゃないのか?」
「そうかもしれないな。まー、あの人ああ見えてさみしがり屋だし」
「そこが可愛いんですよね~」
日枝はこう言うと、チャイムを鳴らした。しばらくし、玄関から御代が姿を見せた。
「皆来てくれてありがとう!」
「会長、私は会長のためならたとえ火の中風の中、水の中や荒れ狂う炎の嵐や荒海の中だって駆け付けますからね~!」
「そこまでして来られるとちょっと引くわ。とにかく、一旦中に入りましょ」
というわけで、アルス達は屋敷の中に入って行った。
数分後、メイド服に着替えたアルス達が、御代の前に立っていた。
「この前の学園祭で装備したのものと似てるな」
「あれの元になった衣装よ。うちのメイド服は他のと違ってポケットがいくつかあるし、防水加工で濡れてしまっても、透けて下着が見えるなんてことはないわ」
アルスや三毛はメイド服を見て話をしていたが、弓彦はある問題を御代に告げた。
「何で俺もメイド服何ですか!?」
そう。何故か弓彦もメイド服を着せられていたのだ。こんな展開、一体誰が得するんだか。
「大丈夫よ。あんたは化粧をすれば女の子っぽく見える。それに、あんたの声は若干女っぽいからばれないわよ」
「そういう問題じゃないでしょ!あぁ……本当に大丈夫かな……」
弓彦は不安そうにうつむいた。そんな状態の弓彦を無視し、御代は手を叩いてこう言った。
「じゃあ皆は掃除をお願い!私の部屋は自分でするから、後は自由にやって頂戴‼」
「アイアイサー!」
そう返事をした日枝は、バケツやモップをもって掃除を始めた。
「では、私達もするか」
「そだね」
アルスと三毛も、箒をもって掃除を始めた。
「じゃあ俺は二階の掃除をしてきます」
と、弓彦は二階に行こうとしたのだが、御代が呼び止めた。
「どうかしましたか?」
「二階はアルスと三毛に任せるわ。あんたは外で落ち葉の処理をお願い」
この言葉を聞き、弓彦は絶望した。
こんな姿を知り合いに見せたくない。というか、見られたくない。
弓彦は心の中でこう思っていた。当たり前だ。今自分はメイド服をしているからだ。もし友人の浦沢が見たら、「お前女装癖があるのかよ!?」と、確実に言うだろう。
ああ神様。知り合いが通らないようにお願いします。と、心の中で祈った矢先。
「あの、すみません」
と、作業中の弓彦に声がかけられた。知っている声だった。嘘だろと悲観しつつ、三刃は振り向いた。そこに立っていたのは、世界だった。
「な……何でしょうか?」
弓彦は自分と気付かれないよう、声を高く、女っぽい声を出して返事をした。
「この辺に崎原弓彦という子が通らなかったでしょうか?髪はツーブロック、目の色は茶黒、髪の色は黒で、年が16,17ぐらいの男の子です」
この言葉を聞き、弓彦は気付いた。もしかしてこいつ、俺が女装していることに気付いていないと。
「先ほど山の方に行きました~」
「分かりました!私の弓彦君、待っててね~‼」
世界は叫びながら、山の方に向かって走って行った。その数分後。
「すまない!我が愛しの勇者アルスの魔力をここから感じたのだが、アルスはいるか?」
現れたのはショーミだった。魔力を感じると言ってきているので、ここにアルスがいると言う事を確信してここにきているのだろう。どう対応して追い払おうか。弓彦がこう考えている間、イータがショーミを捕まえた。
「やっと捕まえた。あんたいい加減自分の性欲を抑えてくださいよ!」
「いーやーだー‼我慢は健康に悪いんだぞ!せめて、あのメイドと一発ヤらせてから帰らせてー‼」
「あほなことを言わないでくださいよもう‼」
呆れたイータは、睡眠魔法をショーミにかけ、眠らせた。
「初めからこうすればよかった……」
イータはそう言うと、弓彦を見てこう言った。
「君はそんな性癖を持っていたのか?」
「違います。無理矢理やらされました」
「そうか……お互い大変だな」
「……はい」
その後、イータは爆睡しているショーミを連れ、戻って行った。
数時間後、外の掃除は終了した。ショーミとイータが来て以来、知り合いは通らなかったので、弓彦はホッとしていた。
「弓彦―。昼飯が出来たから食べましょー」
「はーい」
御代に言われ、弓彦はキッチンへ向かった。
昼食後、アルス達の作業は主に御代の相手をするという、簡単な仕事だった。世話というか、ただ御代の遊びに付き合っているという感覚だ。スマ○ラをやったり、ダーツをやったり、映画を見たりしていた。そんなこんなしているうちに、時は流れて行った。
夜。晩飯を食べ終えたアルス達女子は、風呂に入っていた。
「御代会長の家の風呂は、大きいですね~」
アルスは湯船を見て、こう言った。
「剣道部の合宿の時の風呂と同じ大きさじゃない?」
三毛はシャワーで体を流し、アルスにこう言った。
「私の家の風呂はこんなもんじゃないわよ‼」
と、御代は澄についていたボタンを押した。すると、風呂から泡が噴き出てきた。
「なんと、ジャグジーバスにもなるのだ!」
「おおすごい‼」
感激したアルスは、その勢いで風呂に入った。
「あぁ~気持ちいいよぉ~」
今日の仕事の疲れが、ジャグジーで完全に消し飛んだ。アルスは身も心もすっきりしていた。
「いやー、やっぱ気持ちいわね~」
「そうですね~」
日枝は御代を抱きながら、こう言った。
「会長とお風呂は久しぶりですね~……ああいい匂い……やば、興奮してきた」
興奮した日枝は、そのまま倒れてしまった。
「日枝先輩!?」
「気にしないで三毛。この前一緒に風呂に入った時もこうなったから。心配しないで、すぐに治るから」
御代は日枝の耳元に近付き、小さな声で囁いた。
「起きなさい……日枝」
「はいっ!起きました‼」
気絶からすぐ目を覚ました日枝を見て、アルスは呟いた。
「あの人もあの人で相当変人だな……」
その頃、弓彦は一人で部屋でテレビを見ていた。アルス達が風呂から出てくるのを待っているのだが、なかなかアルス達が風呂から上がらないのだ。
「……早く風呂に入りたい」
弓彦は化粧のせいで少し汚れた顔を触り、小さく呟いた。




