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ご注文は女勇者ですか?

 この日は土曜日。天気は晴れ。降水確率は0%。降る気配は一切ない。本来土曜日は休みなのだが、この日は違った。何故なら今日は、文化祭だからだ。


 アルス達の通う学校では、大勢の人が集まっていた。生徒の関係者やおもしろそうだという理由でやって来た他校の生徒、いろんな人がいた。その中に、あの魔王の姿も混じっていた。


「フフフ……ついにこの日が来たか‼我と勇者エッチな意味で交わる」


「そんなわけねーだろ‼」


 イータの飛び蹴りが、ショーミに直撃した。ショーミは命中した背中を抑えながら、イータに叫んだ。


「イータ‼何するんだお前‼」


「帰りますよ‼人がいる状況で馬鹿な事を考えないでください‼さっさと帰ってバイト探しますよ‼そろそろ働かないと自分たち二人、飢え死にしますよ‼」


「我ら魔族は飲まず食わずでも最低3年は耐えれる。だから大丈夫‼」


「そう言う問題じゃありません‼住む家もない状況、クリスルファーに戻る手段を知るまで何とか生きながらえる方法を探さないと‼」


「そんな事より我の性欲を満たすのが先じゃァァァァァァァァァァ‼」


 と、ショーミは叫びながら校内に向かって走って行った。


「あ!待ってくださいショーミ様‼」


 走り出したショーミを追い、イータは慌てて走り始めた。




 校内では、他校のヤンキー生徒が廊下を歩いていた。


「ケッ、しけてる文化祭っすね」


「そうだな。おい‼何だそのまずそうなパンケーキは?もうちょいまともなもん作れやポンコツ‼」


 ヤンキー生徒は一般人を睨み、生徒が作った料理を罵倒しながら歩いていた。そんな中、アルスと筋肉ムキムキの男子生徒がヤンキーたちの前に立った。


「何だテメー?」


「俺らとやる気か?」


 アルスはヤンキーたちを見た後、溜息を吐いた。


「私が戦うとすぐに終わる。後はお前たちに任せる」


 というと、アルスは去って行った。アルスの声の後、ムキムキ男子生徒はイエッサー!と答え、ヤンキー生徒を取り囲んだ。


「何だ、あの女が相手するんじゃねーのか?」


「お前達とアルスさんが戦ったら、すぐにお前らが負けるだろう。無意味な戦いだと察したんだ」


 無意味な戦い。その言葉を聞き、ヤンキーの額に青筋が浮かんだ。


「じゃあテメー等ガチムキホモ野郎が相手になるってか?」


「ホモが俺らに勝てるわけねーだろ」


 と、笑いながら挑発をした。


「さぁ、戦いを始めようか」


「あと言っておくが、俺達はホモじゃない。全員彼女がいます」


 その後、戦いが始まった。30秒後、ムキムキ男子は台車を引いて外に出た。台車の上には、ボロボロになり、涙を流しているヤンキー共がいた。


「もう二度とするなよ」


「すいましぇ~ん……」


 ヤンキー共はその場から降り、救急車を呼び、救急車に乗って去って行った。




 数分後、騒動の処理をムキムキ男子に任せたアルスは、教室へ戻っていた。


「皆、戻ったぞー」


「アルスさん‼待ってたよー‼」


 メイド服姿の女生徒が、アルスを歓迎した。アルスは急いで教室の裏に回り、着替えを始めた。


「やっとアルスちゃんが来たようだぜ」


「ああ、客がたくさんいるから助かったよ」


 執事服姿で接客する弓彦と浦沢が会話した。しばらくし、メイド服姿になったアルスが現れ、接客を始めた。


 アルスの仕事が始まった数分後、ショーミが教室の傍を通った。


「ん?おお‼勇者がいた‼」


 ショーミは教室に入り、アルスを呼んだ。


「勇者アルス‼今日こそお前……と……」


 アルスのメイド服姿を見て、ショーミの動きが止まった。しばらくし、ショーミの口からよだれが流れ出た。


「クヒヒ……これが萌えという奴か」


「知らん。仕事の邪魔だ、出てけ魔王」


「嫌だ‼お前とチョメチョメするまでは、ここから出ん‼さぁ、もうそろそろ我と交わってェェェェェェェ‼」


 飛びかかって来たショーミに対し、アルスは背負い投げで投げた。投げられた先は窓。しかも、開いていた。


「あれ……嘘……」


 何もできぬまま、ショーミは窓から下に落ちて行った。


「勇者アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼必ずお前とイヤーンしてやるからなブッフォ‼」


 雄たけびの途中で、ショーミは地面に激突した。




 楽しい文化祭は事件も何もなく、続いていた。だが、とある男が学校へ来たのを境に、空気は変わった。


「文化祭か……私の舌を満足させる料理と出会えるといいが……」


 その男、名を陸原洋山という。陸原はそれなりに有名な美食家である。


だが、最近美味い物を食いすぎてか、舌の調子がおかしいのだ。


彼は察した。美味い物を食いすぎたせいで、自分の舌がおかしくなったと。ならば、味覚を戻そうと思い、高級と名のつかない料理を食べているのだ。しかし、健康面がよくなるばかりで、舌の調子は戻らないのだ。


 陸原は一応それなりに有名で、何回かゴールデン番組で出たことがある。なので、彼が学校に入った瞬間、生徒や先生、一般の客の目の色が変わった。


「あれ、テレビに出てる人だよね」


「やっぱ有名人でもこう言うところに来るんだ」


「サイン貰えるかな?」


「美○しんぼに出てる人だよね」


「海○○山……違った、別人だ」


 彼の耳に、小声が聞こえた。だが、自分を見て小声が流れるのは慣れている。噂話を流し、彼は校内に入った。


廊下にはお好み焼きやタコ焼き、パンケーキやクレープなどが売られていた。どれもこれも学生が作った簡易的な料理。だが、その中に高級料理になれた自分の舌を元に戻す料理があるだろうか。少し彼は期待した。


 しばらく歩くと、彼はメイド喫茶っぽい店を見つけた。何かを食べる前に、コーヒーでも飲もうと彼は考え、教室に入った。


「いらっしゃいませ~」


 この声を聞き、アルスは客が来たことを察した。


「よし!私がコーヒーを作ろう‼」


 アルスは張り切ってこう言ったが、横にいる三毛はアルスにささやいた。


「私の言ったとおりにやってね」


「大丈夫だ!それなりに勉強したつもりだ‼」


 自信満々でアルスは答えたが、横にいた弓彦は少し不安だった。そんなこんなで、アルスが作ったコーヒーが陸原の前に出された。自分がいれたコーヒーが飲まれるところを、アルスは誇らしげに見ていたが、弓彦はその横で不安げに見ていた。


「む!この味は……」


 陸原は立ち上がり、体を震わせながらこう言った。


「とんでもなく不味い」


 こう言うと、彼は気を失い、倒れた。


「……うまくできたと思ったのに」


 アルスはしょんぼりしてこう言ったが、弓彦はコーヒーメーカーの横に何かが置いてあったのを見つけた。


「何だこれ?」


「これか?世界曰く、これを使えばコーヒーが上手くなると」


 弓彦はそれを調べると、それはマヨネーズだった。


「世界、出てこい」


 弓彦がこう言うと、世界は恐る恐る壁から出てきた。


「ご……ごめんなさ~い。何が何でもあいつの評価を落としたくて~」


 世界の言葉を聞いた後、弓彦は何も言わず、世界を教室から追い出した。しばらくし、気を失っていた陸原が目を覚ました。


「……すまない。あまりのまずさに気を失ってしまった」


「すみません。こうなったのは一部の馬鹿の仕業です」


 アルスは頭を下げてこう言うと、お詫びの礼として近くの出店から買ってきたパンケーキを持ってきた。


「これは私からのお詫びの品です。どうぞ」


「うむ……」


 陸原はパンケーキを食べると、それを上手いと思った。


「うまい。丁度いいうまさだ」


「それは良かったです」


 弓彦は陸原が上手そうにパンケーキを食べるのを見て、安心した。アルスは弓彦に近付き、こっそりとこう言った。


「前にあの人がテレビで味覚がおかしくなったと言ったのを思い出したんだ。それで、癒しの魔法をあのパンケーキにかけたんだ。食べたら味覚が治るようにな」


「魔法ってなんでもありだな」


 無茶苦茶な方法だが、それで陸原にとって幸せな結末を迎えられた。なら、それでいいかと弓彦は思った。


 しばらくし、チャイムが鳴り響いた。


『これより、第33回校内美少女コンテストを開催します。勇気のある女生徒の皆さんの参加をお待ちしています。なお、この大会には我らがプリティエンジェル斑御代生徒会長も参加されます‼ロリコンの変態野郎ども、それ以外の野郎ども、絶対に生徒会長に票を』


『いいわ日枝、それ以上言ったら私が失格にされる』


 その後、日枝の声が響いたが、すぐに消えた。


「ったく、何考えてんだか……」


 急な催しの発表を聞き、弓彦は呆れたが、アルスは出る気満々だった。


「よし‼なんかよくわからんが出るぞ‼」


「お前正気か?」


「ああ!とりあえず出てみる」


 と言って、アルスは教室から出て行った。

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