変態魔王降臨
アルスは夕食を食べながら、テレビを見ていた。テレビのニュースでは、政治家の汚職問題が取り上げられており、コメンテーターが偉そうになんか言っていた。
「コメンテーターという奴は、あまり好かんな。何かの専門家らしいが、なんか上から物事を言ってくるからな~」
「コメンテーターなんてそんなもんだよ」
弓彦はこう言った後、唐揚げを口の中に入れた。
平和な時間が流れているのだが、この時のアルスは知らなかった。魔王が自信のエロい体を求め、現代日本にやってくることを。
「うっひゃー‼オラ、ムラムラしてきたぞー‼」
ショーミはとんでもないことを口走りながら、異世界へ通じる空間を飛んでいた。
「ショーミ様‼今なら間に合います、戻りましょうよ‼」
「勇者以外にもエロい子がいるかもしれねー、わくわくしてきたぞ‼」
「私はわくわくよりもはらはらしてきたんですけど‼」
イータは何度も戻ることをショーミに告げたのだが、ショーミはエロいことを考えているせいで、全く話を聞いていない。
せめて、自分だけでも元の世界に戻ろうとしたのだが、イータの足には、紐が縛られていた。しかも、かなり強いせいで、ほどける気配がない。
「何だこれ?いつの間に……」
「あーそれ?お前が逃げないように縛っといた。一人じゃ不安だからな!」
「それ魔王が言うセリフですか!?」
ショーミへの説得を諦めたイータは、自分たちの無事を祈りながらショーミと共に空間を飛んだ。
数分後、ショーミとイータは異世界、日本へやって来てしまった。
「ほう。ここが勇者のいる世界か……」
二人が降り立った地は、どこかの山の上だった。そこからは、家やビル、車のライトなどの明かりが多数見えていた。
「なんか変な所ですね。下に星より輝く光が動いてますよ」
「異世界の文明かなんかだろ。ま、とにかく魔力を察知してみよう。勇者一人だけだから、すぐに見つかる……」
この時、近くの草むらで音が聞こえた。ショーミは魔法の弾で草を払い、音の主を見つけた。それは、全裸に近い状態の若い男女だった。
「うわっ!見つかった!」
「だから言ったでしょ、外でフィーバーするなんて危ないって!」
「だって今日、ラブホ行く金持ってないんだもん!」
ショーミはその男女に近付き、こう聞いた。
「なぁ、ここはどこだ?」
「え……日本ですけど……」
「ニホンか。ここについては後でじっくり勇者に聞くとしよう。全裸で、オイルでてかてかになって、絡み合いながら‼」
「さっさと行きましょう」
イータはショーミにこう言うと、カップルの方を見てこう言った。
「あんたらも外でそんな事してると、風邪ひくぞ」
魔力を察知すれば、すぐに勇者は見つかる。ショーミはこう思っていたのだが、思い通りにはならなかった。
「何故だ……何で魔力が察知できんのだ~~~!?」
ショーミは魔力を察知することは出来なかったのだ。今、二人がいるのはビル街の交差点のど真ん中。横断歩道を渡す人は皆、ショーミを見て驚いていた。それもそのはず、一般の人から見たら、ショーミとイータは変なコスプレを着た変な人。そう判断しているのだ。
「ショーミ様。とりあえず人目が付かない場所に行きましょう。ここだと目立ちます」
「うっさい!もうやけだ!話を聞いて回る‼」
「止めてください‼他の人達の目を見ましたか?あの目は我々を不審者と思っている目ですよ‼」
「誰が不審者だ‼誰が女好きの魔王だ‼誰がおっぱい星人の魔王だ‼」
「そこまで言ってねーよ‼人が集まるど真ん中で、自分の性癖を叫ばないでください‼」
二人が騒いでいると、二人組の婦人警官が声をかけてきた。
「えー、あなた達ですね、交差点で騒ぐ不審者は?」
ショーミは二人の婦人警官を見ると、にやりと笑った。
「ほう。若いな。それに体のラインも美しい……」
「な……何を言ってるんですか?」
「どうだ?私とやらないか?無理だと言っても、無理矢理やるけどな」
と言うと、ショーミは婦人警官たちを抱き寄せ、横になった。そして、二人のスカートの中に手を入れ、触り始めた。
「あぁっ……」
「んっ……」
不意に太ももに触られたのか、二人は小さな喘ぎ声をあげた。
「いい声を出すではないか」
ショーミはそのまま手を動かし、今度は二人の服の中に手を入れた。
「本番はこれからだぞ。私が優しくリードをするから安心して、その身を預けるんだ」
「あの……私彼氏がいるんですけど……」
「私は……彼女がいますっ!」
「ふふふ……今はそんなことを忘れるんだ」
ショーミは右手で抱き寄せている婦人警官の首筋をなめ、左側にいる婦人警官の胸を触り始めた。道の真ん中で始まったとんでもない行為を見るため、通行人は足を止めて見入っていた。
「もっと……もっと舐めてぇ……」
「体が熱い……もっと熱くして」
婦人警官たちは、エロい声を出してショーミに甘え始めた。
「そろそろいい頃合いだ。さぁ、(ピー!)と(ピー!)を合わせて(ピー!)や(ピー!)、そんでもって(ピー!)と(ピー!)な」
「この小説を潰すつもりかこの変態魔王がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼」
イータの怒りの魔法が、ショーミに直撃した。横にいる婦人警官には当たっていません。魔法を喰らったショーミは、空高く打ちあがり、しばらくして地面に落っこちた。我に戻った婦人警官は、服を整え、そそくさに戻って行った。
「何するんだイータ!?」
「あんた、道端でとんでもないことをするんじゃねーよ‼」
「私は、やると思ったらすぐに実行する女だ‼」
「場所を考えろよ場所を‼」
行為が中断されたことを知り、おっさんたちは残念そうに去って行った。
「と!に!か!く!勇者を探しましょう‼」
「そうだな。とっておきはとっておくことにしよう。グフフ」
ショーミはよだれを拭いてこう言ったが、何者かに腕を掴まれた。
「私、低町はのな。ねぇ、お話しようよ」
ゴリゴリマッチョの婦人警官が、ショーミの腕を掴んでいた。離れようと思ったのだが、力が強くてできなかった。
ちなみに、何で魔力が察知できなかったかというと……。
「ん~むにゃむにゃ……でかいプリンだぁ……」
アルスは寝ていて、魔力を使っていなかったから。
その後、ショーミとイータは警察に捕まり、刑務所の中で一晩過ごすことになった。
「ああ……何でこんなことに……」
イータは落胆していたが、ショーミは横になって爆睡していた。
「グヒヒヒヒ~。エロい子はどこじゃ?エロい子はどこじゃ~?」
あほらしい寝言を聞き、イータは溜息を吐いた。
「早く帰りたい」
イータは夜空に浮かぶ月を見て、こう呟いた。
翌朝。二人はなんだかんだで解放された。
「ん~……宿が取れるとは思ってもなかったなー。飯でもあればよかったのだが」
「あんたは気楽でいいですねぇ……」
柔軟体操をしているショーミを見て、イータはボソッとこう言った。ショーミは欠伸をした後、魔力を探り始めた。
「さーて、勇者はどこだ~?」
イータはすぐ見つかんないだろうと考え、その場に座った。だが、すぐにショーミは叫んだ。
「見つけた!」
「え?本当ですか?」
ショーミはイータの手を掴み、こう言った。
「飛び上がるから捕まってろよ」
「急上昇は止めて……」
止めてくださいと言うとしたが、その前にショーミは飛び上がった。
「うわあああああああああああああああ‼」
「叫ぶなよ、舌噛むからなー」
そう言いながら、ショーミはアルスの元へ飛んで行った。
その頃、アルスは庭で素振りをしていた。
「休みなのによくやるなー」
弓彦は本を読みながら、こう言った。
「休みだからこそやるんだ。それと、私は好きでやってるんだ」
アルスは素振りをしながらこう答えた。それからすぐ、アルスは素振りを止めた。
「ん?どうしたんだ?」
「……来る」
「世界か?もう俺の後ろにいる」
弓彦は後ろの戸を指さし、こう言った。
「世界じゃない。魔王だ……」
「魔王?」
「何言ってるのアルス、魔王なんて来るわけないじゃない」
弓彦と世界はこう言ったが、何かが飛んでくる音が聞こえた。
「何この音?」
「こっちに来てんのか?」
「二人とも隠れろ‼今すぐに‼」
アルスは二人に向かってこう叫んだ。この時のマジ顔のアルスを見て、二人は言うとおりに家の中に隠れた。
「くそっ、私の跡を追って来たのか……」
アルスは上空を見て、魔王が来るのを待った。
数分後、上空からゆっくりとショーミとぐったりとしたイータが降りてきた。
「……久しぶりだな、勇者の娘よ……」
「クッ……」
アルスはセイントシャインを出現させ、装備した。隠れている弓彦は、やばそうな戦いが始まるのかと思いながら、二人の様子を見ていた。