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勇者、買い物へ行く


 ある休日の話である。アルスが庭で竹刀を素振りしていると、バックを持った弓彦が出かけようとしていた。


「弓彦、どこへ行くんだ?」


 素振りを止め、アルスはこう聞いた。


「買い物。そろそろ冬物の服が欲しいからデパートに行くんだよ」


「デパート? 何だそれは?」


「いろいろな物を売ってる大きいお店だよ」


「店か、じゃあ武器とかも売ってるのか?」


「そんな物騒な物は売ってない」


「そうなのか……じゃあ何を売ってるんだ?」


「うーん……主に服だけど、他にも本やゲーム、スポーツ用品も売ってるよ」


「なんか面白そうだな。私も行くからちょっと待っててくれ」


 その後、アルスは着替えをし、弓彦と共にデパートへ向かって行った。その様子を、世界が陰から隠れてみていた。


「クソが……羨ましいわ、弓彦君とデートなんて。そうだわ、あの女をどっかへやって、代わりに私が弓彦君とデートしよーっと」


 と呟き、二人の後を追って行った。




 数分後、二人はデパートの入口にいた。初めて見るデパートの入り口を見て、アルスの目は輝いていた。


「何だこれは? あの城よりも立派な建物じゃないか……」


 アルスは柱や中を覗き、こう言った。その直後、自動ドアが開いた。


「うわぁっ‼ ドアが勝手に開いた‼」


「自動ドアだからな。あ、確か向こうの世界にはないんだよな」


「当たり前だ、自動で動くドアなんてない! あー、びっくりした」


 アルスは立ち上がり、デパートの中に入って行った。中を見て、異様な数の品物と広さを見て、感激していた。


「何だこの道具屋は? 広い、広すぎる!」


 テンション上がってしまい、アルスはそのままどこかへ行ってしまった。弓彦はアルスを止めようとしたのだが、先にアルスは行ってしまった。


 携帯あるしいいか。迷子になっても連絡すれば何とかなるだろう。


 と思った弓彦は、目的地であるユ○クロへ向かった。




 その頃、世界は息を切らせながら、デパートの前にいた。


「はぁ……はぁ……やっと着いたわ。バスの跡を着いてくのって……本当に疲れるわ」


 息切れしながら世界は呟いた。このヤンデレは走ってアルスと弓彦が乗ったバスを追っていたのだ。愛の力というのは、本当に恐ろしい。まぁ世界の場合は一方的な愛だけど。


「さて……弓彦君はどこかしら……」


 世界が周囲を見回すと、黒ずくめの服を着た集団を見つけた。


「何かしらあれ? もしかしてコ○ンに出てくるあの連中?」


 世界は集団を見つめていたが、その時、後ろから襲われて気を失った。世界を襲った男の服は黒ずくめだった。


「おい、周りに誰かいないか?」


 男の仲間のが、こう聞いた。世界を襲った男は気を失った世界を担ぎ、答えた。


「大丈夫だ。だから言っただろ、見張りが必要だって」


「確かにな。だが、お前のおかげで我々の計画は守られた」


「よし行こう、準備は終わっている」


 その後、黒ずくめの連中は、バックを持って店内に入って行った。




 弓彦は買い物を済ませた後、携帯でアルスに連絡を取ろうとしていた。だが、何度電話をかけてもコール音しか聞こえなかった。


「はぁ、アルスはどこにいるんだよ?」


 ため息を吐きながら弓彦は呟いた。それから弓彦は上の階に行き、フードコートでアイスを買って再び携帯を手にした。


「今度は出るかな……」


 アルスが電話に出ることを期待し、再び連絡をした。だが、アルスは電話に出なかった。


「どこにいるんだか。昼飯おごろうと思ったのに……」


 この呟きの直後、突如非常ベルが鳴り響いた。フードコートにいた客はどよめき、皆非常階段へ向かって移動した。そして、事情を察知した店員が、大声で叫んだ。


「皆様! 今武器を持った強盗が一階にいます! 店内警備員の指示に従い、速やかに急いで移動してください!」


 強盗の存在を知った弓彦は驚いた。アルスと合流しようとしたが、人ごみに飲まれてしまい、そのまま下の階に移動してしまった。




 その頃、アルスは雑貨店にいた。


「店主、これはなんだ? 武器か?」


 アルスが手にしているのは、ただの大きなラップだった。


「これはラップです。知らないんですか?」


「そのくらい知ってる。サランラップだろ。にしても、でかすぎないか?」


「これはお皿用のラップではありませんよ、別の所で使うラップですよ」


「別の所……お前まさか、いやらしいことに使う道具を仕入れたんじゃないだろうな?」


「そんなことに使いませんよ」


 その時、近くにいる店内警備員が、強盗が押し入ったことを伝えた。店主は悲鳴を上げながら逃げ始めたが、アルスはそのまま下を見た。


「ほー、あの黒い連中が強盗か」


 敵を確認し、その後数を調べた。その中で、アルスは捕まっている世界を見つけた。


「世界? あいつ、どうしてここにいるんだ?」


「どうしたんだね君?」


 警備員がアルスを見つけ、声をかけてきた。アルスは警備員の方を見て、答えた。


「知り合いが捕まってる。だから、今から助けに行く」


「何を言ってるんだ君は? 相手は武器を持っているんだ。ここは警備員に任せて避難しなさい」


「大丈夫だ。私は勇者だ!」


 アルスはそう言うと、そのまま下の階に向かって飛び降りた。下にいる強盗も、アルスの姿を確認した。


「お頭! 上から女の子が!」


「誰がパ○ーの真似をしろと言った? 上から女子なんて降りて……嘘だろォォォォォ⁉」


 アルスは飛び蹴りで強盗を殴り倒した。そして、周りにいる強盗も蹴りと裏拳で次々と倒していった。


「クソ! このガキ!」


 強盗の一人が、アルスに向けて銃を放った。銃声を聞き、客や店員は悲鳴を上げながら頭を下げた。


「そんな豆鉄砲、私には効かないぞ」


 アルスはそう言うと、飛んでくる銃弾を全て取って行った。しかも片手で。この光景を見て、銃を放った強盗の目は点となった。


「うっそーん……」


「これ、返すぞ」


 アルスは手にした銃弾を、強盗に向かって投げ捨てた。投げた時の勢いが強すぎたせいか、地面にめり込んでいた。


「ひ……ひえぇ……」


 これを見た強盗団は、悲鳴を上げて地面に座り込んだ。だが、一部の連中がアルスの後ろから襲い掛かった。


「バカめ! 後ろががら空きだッ!」


 強盗は手にしているこん棒がを、アルスの後頭部に向かって勢いよく振り下ろした。攻撃が当たり、強盗はにやりと笑った。だが、アルスはこん棒を持ち、睨みながらこう言った。


「何だ、今の攻撃は? ゴブリンの攻撃の方が痛いぞ」


 アルスは無傷だった。強盗は悲鳴を上げて逃げようとしたが、アルスは魔法を使い、逃げた強盗を捕まえた。


「何これー⁉」


 光の輪で捕まった強盗は、泣き叫びながらその場に倒れた。




 この騒ぎを察した弓彦は、入り口付近からアルスの活躍を見ていた。


「やっぱりな……あいつが一人でやると思ったよ」


 後ろから、パトカーのサイレンの音が聞こえた。現場に到着した警察官は皆、緊迫した表情をしているが、もう騒動がほぼ終わっている。この状況、警察の出番はほぼないのだ。お疲れ様と、心の中で弓彦はそう言った。




 数分後、アルスによって全滅された強盗団は、あっさりと捕まった。


「なぁ弓彦、こいつら一体何だったんだ?」


 アルスの質問を聞き、弓彦はすぐに答えた。


「強盗だよ。金目的で盗みに入ったんだろ」


「強盗だと? ニートよりクズな存在じゃないか」


「まぁ確かにな……」


 弓彦はそう言うと、アルスの手を握ってこう言った。


「お前と一緒に出掛けると、大変なことが分かった。次行くときは、手をつなぐぞ」


 アルスはつながれた手を見て、少し茫然としたが、すぐに気を取り直してこう言った。


「ああ、頼む。今日みたいにはしゃぐかもしれないしな」


「いつもはしゃいでるじゃねーか。まぁ、珍しいからテンションが上がるって気持ちは分かるけど」


「何だ、お前も一緒じゃないか!」


 アルスは笑いながら、弓彦の頭を叩き始めた。


「イタッ! イタッ! お前、素手での攻撃力が高いから、少し加減してくれよ」


「すまんすまん」


 と、二人はこんな会話をしながら帰って行った。




 そんな中、デパートでは世界が警察から事情を聞かされていた。


「すみません……私は弓彦君の後を追っていただけで……悪いのは全てあのコ○ンの敵の姿を丸パクリした奴らが悪いんです」


「いや、私達が聞きたいのは、あいつらはどうやってここにきたかと、どうして君が襲われたのか何だけど……」


「話はもういいです。早く解放させて、早く帰らせて、早く弓彦君の元に行かせてェェェェェェェェェェ‼」


 世界の叫びも意味はなく、話は二時間以上にわたって続きましたとさ。


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