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幕間 星迷宮と祈 10


 兄・秀孝ひでみちとエレナが会っているとき、定孝やすなりは最後の仕上げをされていた。藤野見ふじのみは栄養剤を飲ませながら傀儡となった幼い少年にそっとささやく。



「まったく。茨姉妹には困ったものです。任務を投げ出して逃げるとは。やはり女は使い物になりません」

「いばら……しまい……」

「姉はいなくなってしまいました。三種の魔法使いは貴重だったのですが、まぁ、定孝がいますからね。穴埋めは大丈夫でしょう」

「僕……」

「妹はあなたの兄をそそのかして任務を放棄し、どこかに隠れました。まだ見つけられていないのですが、あなたの兄も役に立ちませんね」

「兄……さ、ん?」

「弟君がこんなに頑張っているのに。少しは見習っていただかないと示しがつきません。忠誠を誓ったあなたまで裏切ると考えなくてはなりませんから」



 兄のことを出されて、虚ろになっていた瞳が動く。



「待って、ください。僕頑張りますから、もっと頑張るから、兄さんを、殺さないで……」

「それは私には決められません。全ては閣下の采配です。あなたができるのはただひたすら任務をこなして役に立つことだけです」



 自分たちに都合のいいところはピシッと言い切る。都合のいい駒を二つ壊してしまったので、少しでも動かしやすい者たちを引き入れなければ、今後の作戦に関わってきてしまう。幸いなことに定孝兄弟と桐雪が任務にあたっていて、さらに貧民街から城主のために使ってほしいと差し出してきた子供が二人いる。この子供たちはかなり幼いながらも体術剣術の基礎を身につけており、なかなか使えそうだと報告されている。

 十歳未満のこの子供たちを上手く育てることができたなら、鈴蘭はもっと発展していける。藤野見やそれに並ぶ幹部たちは目の色を変えながら育成という任務に励んでいた。



「……兄さん……会いたい……」

「もう忘れてしまいなさい、あなたを役に立たないと言い切った愚かな兄のことは。そのかわり、その分閣下の役に立つのですよ、定孝。貴方が閣下の役に立ち、閣下が喜べば、兄の命は救われるかもしれませんよ?」



 それは本物の悪魔のささやきだが、壊されかけた定孝に本当かどうかの判別はつけられない。兄と会っていない間に、兄に愛想を尽かされているかもしれないと思ってしまった。一度そう思ってしまえば、それが本当に思えてしまう。そうしてとどめを刺される。



「大丈夫。閣下も私も、定孝を見捨てませんよ」



 それは甘く優しいとどめで最悪なものだ。けれど定孝はそれにすがりついてしまった。


 秀孝はできるだけ早く、しかしなるべく他の者に出会わないようにして部屋に帰る。兄弟に与えられた部屋に帰るのは、任務を言い渡されてから十日以上経っている。自分だけでなく、定孝も部屋に帰っていないのか、机の上に埃すら溜まっているように見える。



「……定孝……?」



 乱れた呼吸を整えながらつぶやく。けれどその声を拾うものはいない。仕方なく外に出る。まずはもっとも聞きやすい体術剣術の訓練場。他人と話すのは嫌だが、定孝を見つけなくてはならない。あまり操られていないような者を探す。



「最近弟を見なかった?」

「……見てない」

「知らない」

「魔法の修業場で見たことある」

「薬室の藤野見様と一緒にいたよ」

「薬室!? すごい、お気に入りなの?」



 わらわらと集まってきた同年代の子どもたちの中に、見たと言ってくれた子供がいた。剣術以外に芸術関連も学んでいる子供たちだ。桐雪もいる。



「薬室って本当に!?」



 飛びつくように聞き返すと桐雪とその隣りにいた二人も頷きを返してくる。



「いつも藤野見…様が一緒にいて、後見? とかいう話も聞いたことあるけど……」

「後見ってなに?」

「お父さん代わりってことじゃないの?」

「家族ってこと?」

「早く探したほうがいいのでは?」



 有力な話を聞いたが、自分という兄がいながら父親代わりだとか家族だとか言われるのが許せない。定孝を取り戻して、しっかりと訂正しないと気がすまない。そこにいた者たちの顔を覚えて、秀孝は急いで薬室を目指す。


 

なるべく早く更新できるよう頑張ります。

過去編もそろそろ大詰めです。もう少しお付き合いください。


ブックマークつけてくださったあなた!!ありがとうございます!!気力が湧きます☆


今作中に差し出されたという子供二人は、楓牙と惟月です。


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