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一章 砂時計の針 2


 惟月の言う “アイツら” の顔を思い浮かべて、楓牙も思わず笑いが込み上げてくる。姫を返せと懇願するであろう顔も、怒りで自分を押さえられないでいる顔も、どちらにせよ、興味深い。



「やっとだな。やっと見られる。特に水仙の方」

「楓牙はそっち? まぁ、確かにそっちは予想できそうでしにくいな。でもやっぱり、姫たちを間近に見たいね」

「……そうだな。行こう。二国のお姫様に、ご対面願おうか」



 そう言って二人は淡桜へと続く門へ走り出した。



◆◇◆



「緋名ー!!」

「玖! お久しぶり!!」

「そんなに久しぶりじゃないよ! あれ? 先月だよね?」

「そうです。先月ぶり! お元気ですかって、その羽織!」

「うん、早速使ってるの! 私も気に入ってるし、周りの反応もいいよ♪」

「良かった。気に入ってもらえて何より」

「緋名、相変わらず細い足! 寒くない?」

「この着物暖かいんですよーって、すれ違いにお会いしたおじ様にも同じこと言われたよ」



 屋敷の門前で、二人の姫はトークを始める。


 門の周りには、康矢や雪、登流をはじめとした側近はもちろんのこと、護衛の騎士たちもうろうろしている状態だった。少人数の騎士たちは、話始めこそ『ここで話すのか』と戸惑いがあったが、慣れたもので、自然と整列をし出す。

 登流と雪は、久し振りの挨拶を交わす。



「お久しぶりです、登流殿」

「久しぶり、雪も元気そうじゃないか」

「ええまあ……」

「どうかしたか? 人の顔をじっと見て。何か?」

「えっと……何かと言うか、なんと言えばよいのか……。こ、康矢殿!?」

「はい、雪。何か?」



 雪は必死になって言おうとするが、あとのことを考えると怖くて言えない。康矢に助けを求めるも、にっこりとかわされてしまう。

 頭の中はパニックになっていた。記憶の中の者と、なんかちょっと、全然違う気がする。違和感だけはそのままなのに、なんか変だ。

 いったい、どうすればよかったのか。まさか考えもしなかった。



「ご挨拶、終わったの?」

「雪、変わり者のうちの登流と、変わらずに仲良くしてやって下さいね」

「え? 緋名姫、登流殿は変わり者と言いますか……いや、あの」

「たまには服も変えればいいのに。いつも同じこの格好なんですよ。知らない間になんか増えてるし」

「……増えてる? やっぱり!?」



 玖も緋名も、雪と登流の会話に混ざってくる。緋名としては、雪にきちんとわかってもらいたいのだろう。さりげなく自分の意見を入れてくるが、今の雪には処理しきれない。服ではなく、別の部分から思考が離れない。



「はい。最近はこの状態が標準装備です」

「………おかめ?」

「ええ。表情が分かりやすいのは良いことなんですか」

「忍者が解りやすい表情って言うのも、問題じゃないの?」

「あのときより、種類増えてますよね?」

「うん。仕入先変えたから」

「………しいれさき……」



 途中から康矢も会話に加わり、雪はよりいっそうテンパった。あげく、お茶の準備を手伝うからと、康矢よりも先に屋敷に逃げてしまった。


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