五章 三日月の絆 6
慎重に使いたかったというのが本音である。だけど言ってしまったものは仕方がない。すべてを白状し終わると、みんな渋い顔になってしまっていた。
「「玖姫、帰ったらお説教」」
初めて、緋名と惟月の声が重なった。玖は肩を上げて驚くが、声は出せなかった。
惟月は玖に背を向けて前に立つ。緋名からはちょっとピリっとした視線を向けられたが、ピタリと隣に立ってくれた。
楓牙も心配そうに顔を向けたが、すぐに力強くうなずいて離れた。そして守るように立ってくれる。渓には十秒ほど顔を見つめられ、「あとでデコピンします」と宣言されてしまった。今の玖には心強い反面、恐怖だった。渓のデコピンはかなり痛い。そして視覚的最大の恐怖の持ち主。
「……玖姫」
「ひぃっ!」
つい声が出てしまった。少しだけくぐもった声の主は、ひっそりと玖の真横に立っている。じぃっと視線を放ってくるそのさまは正直ものすごく怖い。般若だけの四面楚歌状態、という心地だ。だが壁につけられている普通の面は喋らないので今が地獄かもしれない。
「……あとで覚えてろよ」
ボソッと告げられた死刑宣告。今ここで気絶して目が覚めたらすべてが夢だった……なんてことはありえないのだが、つい夢見てしまう。
登流は玖の反応など気にもせず、いうだけいって楓牙の隣に足を進めた。
「登流が玖姫にタメ口ですか……。玖姫はずいぶんと緋名姫に近づいたのですね」
のほほんとした声が玖の耳に届く。いつもならばホッとできるその声も、今だけは死神の鎌だ。やはりかなり怒っているようで、それだけいうと他には何もいわずに前を向く。いっそなにかをいわれたほうが気が楽になりそうだ。
康矢はそんな玖の心情を分かっていて、あえて何もいわない。なにもしない。
怯えきった玖の隣には緋名が。二人の前に康矢と登流が立ち、その一歩前に惟月、楓牙、渓が並ぶ。
玖以外の表情は同じようだ。一同が考えていることは一つ。
『早く終わらせて、玖に罰を』だ。
「最後の会合は終わったようだな」
七人の前に立つ二人は、やれやれといった感じで笑いながらいう。
「なるほどな。言霊とやらの威力はたしかに厄介なものだ。しかし回数が限られているのならばそなたたちが我らに勝つことは無いだろう」
声を抑えていなかったのだから、会話は当然聞こえていた。しかし七人にピンチであるという気持ちはカケラもない。考えもしない。先程玖は言った。『必ずみんなで一緒に帰る』と。この言葉を信じている。
はじめに動いたのは楓牙だ。一歩遅れて渓が走り、楓牙の一撃を避けた城主に斬りかかる。そして二人の後ろから般若がぬっと現れる。右手に持つ刀で城主にかかり、左手の剣で定孝の剣を押さえた。カン高い音が響くと、城主と定孝を分けるように惟月と康矢が間に入る。
「貴方はこちらで相手をするといったはずですよ」
康矢は小刀を取り出し、少しずつ城主と離していく。
「……風ごときが……」
「気性が荒いのは火属性の性かな?」
惟月は剣を抜かずに右腕を空へと伸ばす。すると空には星空が消え、黒い雲が集まってくる。
「その法則でいきますと、惟月、貴方は気弱ですよ?」
「昔話はどうでもいい。敵を丸焼けにするのが俺の仕事」
「おや、ご存知でしたか?」
奇妙なことを話すその内容は、大陸全土に伝わる昔話。今でも四大陸のどこかに、伝説の子孫が暮らしているというおまけ付きの噂だ。
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