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一章 砂時計の針 1



 この世界は、フレミネーア、別名 天那飛女神(あまなひめがみ)と呼ばれ慕われる女神を筆頭に、信仰している八名の神々がいる、魔法の世界だ。


 未知なる北・ミネル大陸。神秘の南・パクリュ大陸。豊かなる西・カセ大陸。幻魔の東・トスリコ大陸。この四つの大陸は、それぞれが全く違う国だが、北と南、東と西は少し似ている。


 大陸は色んな形をしており、それぞれ通称で呼ばれている。ミネル大陸はネコ。パクリュ大陸は月と星。カセ大陸は花。そしてトスリコ大陸はクマの頭。クマの一角、鼻元に鈴蘭(すずらん)。口元の向かって右側に淡桜(あわざくら)、左側に水仙(すいせん)がある。


 他国とはあまり関わりたがらない国が多く存在するなか、淡桜と水仙はそれらを一蹴するくらいに仲が良い。


 二国の主たちは、気づいた頃にはすでに友人だった。いつお互いを知ったのか、何歳の時に話したのか、などということは遠い昔で、ほじくり出すのは共に酒を飲んだときだった。

 それでもおよそ二十年前、互いに結婚して妻が子を身籠った時。



『子供が男と女であったなら、二人を結ばせて国を統一しよう』



 そういう約束をした。いや、約束なんて不確かなものではない。誓約だった。

 しかしその誓いはあっさりと消えることになる。

 生まれてきた二人の子は、時期こそ違えど、同じ年の娘だった。


 少々の落胆はあったが、些細なことだ。娘をつれて互いの国へ遊びにいった。娘たちに国を見せた。

 時には妻と娘と供だけで、隣の国へ行ったこともあった。やがて娘が自分の護衛を選び、その者と出掛けることになる。

 共に出掛け、迎え入れ、幸せなときは続いた。


 しかし危ぶんでいた大国・鈴蘭が、ついに動くという情報が持ち込まれた。

 淡桜と水仙、二つの国と同じように発達していたものの、二つの国に決して ”仲良く“ を持ってこなかった鈴蘭。彼らはクマの国を自分の国として持ちたいと、あり得ない野望を持っていた。

 手始めに、海に面している、逃げ場のない二国を取り込もうとしていた。



「水仙を先に潰そうかと思っていたが、まさか淡桜に二人の姫がいるとは……」



 薄暗い部屋に男が一人、上等な椅子に座って窓の外を見つめている。



「水仙には、城主どもが何やら話をしている様子。まずは淡桜にいる二人の姫を手中に納めてはいかがでしょう?」



 男の背に向かい、膝を折るのは、黒い服に身を包んでいる細身の男。

 二人の男は互いの顔が見えていないが、同じようにうっすら笑っている。



「ふむ。この計画、お前たちに一任しよう。決して見破られないように動け。期待している」

「承知いたしました。我ら、計画をくじくことは致しません」



 顔を合わせないまま、細身の男は一礼し、部屋を出ていく。

 出た廊下は、部屋の中とは真逆で明るい光を浴びている。その廊下を進み、自分の部屋とあてがわれたところに、自分と同じ黒い服を着た大柄な男が寝転がっていた。きっちりと扉を閉め、外に聞こえない音量で、ひっそりという。



「計画、俺たちに任された。出ましょう、楓牙(ふうが)

「おう? ってか本当に任されたのか? いつもの嘘じゃ、ないか」

「任せていただいたからには、全力で取り組む。それが役目」

「そのセリフ、嘘くさいんですけど、惟月(いつき)



 楓牙と呼ばれた、寝転んでいた男は、一言目に飛び起きた。しかし話ながら胡座をかき、惟月と呼んだ男を見上げる。


 楓牙が立ち上がれば、惟月を見下ろす形になるが、楓牙はまだ立たない。

 にやけるどころか不気味に笑う相棒の隣に立ちたくないのだ。

 黙っていれば格好良い男としてみられるが、惟月はかなりのくせ者で、敵味方構わずに騙してしまう。そしてそれを悪いと思わずに楽しんでいる。

 割りきって仕事をしていればいいようなものだが、一緒に働くことをたまにものすごく嫌なことだと思ってしまう。

 実際楓牙は惟月の嘘に、敵と一緒に騙された過去がある。それも数回。



「行くの淡桜だろ?」

「ああ。二人の姫を捕らえる。水仙へ行くのはそのあとだ。大事な姫が鈴蘭に捕まったと聞いたら、アイツらはすごい顔をしそうだなぁ」


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