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四章 散歩道と雨 8


 余計なチャチャを入れた惟月にむかって、登流はおかめを般若に変える。しかしマヌケな雰囲気をした般若を見ているため、惟月は余裕だ。怖いものではない。



「はいはい。凄そうな芸はその辺にして、作戦でも考えましょうよ」

「ちょ!! 惟月さん! いいながらこっちに移動しないでください! 般若さんがこっちに来る!」

「おまえも! 人のこと面で呼ぶな!」



 敵陣でもあっさりといつもの調子に戻る。姫たちの前では、渓が無表情の康矢の背を盾にして、惟月に文句をいっている。惟月の背から般若が顔を出すと、渓はとたんに黙る。なんとなく、惟月と登流は楽しんで渓をおどかしているように見える。完全に打ち解けさえすれば、もっと恐ろしいことになっているだろう。



「作戦か、確かに必要だな」

「先ほどの魔法、もしかしたら二種使いかもしれませんね。タイミングが良すぎです」



 楓牙がいった言葉に、康矢が情報を与えたが、それを理解できない者が二人。

 水仙はお国柄、体術や剣術を使うものが多い。城主が忍者ということもあり、あまり魔法は浸透していない。反対に淡桜は魔法に特化している。得手不得手を補って、二国は発展してきた。



「そうだ! 黒マントの! あの人、魔法使いだった! 利八(りはち)使ってたよ」



 玖も情報を渡すが、水仙の二人はさらに頭を捻る。よく分からない。が、いい機会だ。



「康矢、魔法についていくつか聞きたいことがある」

「そうですね。今のうちにちょっとお勉強しましょうか」

「簡単、カンタンにしてね?」



 不安げな緋名を呼び、楓牙と渓が守備にあたる。康矢と玖が説明を始め、惟月は横で聞いている。



「まずは、そうですね。基本の属性が七種類あります。火、水、風、土、光、雷、と。私は風、惟月殿は雷を使いますね。今いないですが、雪は水を使えますよ」



 康矢が言葉を発する度に、水仙のニ人が相槌を打つ。



「今のところ、水は攻撃だけですが、火や雷、風などは攻撃以外に回復の効果もあったりします。属性が土とはいえ、中身はほぼ、樹木に関することだったりしますけどね」

「閉じ込めたり操ったりね。光なんかは攻撃も防御も回復も、全部あるよ」

「世界共通の魔法ですが、大陸によって独自の呪文が存在するとのウワサもあります。基本的には一人ひとつの属性を使えます。ただし、魔力が高く、訓練次第によっては、一人で二つの属性を操れます」

「……さっきいってた、黒マントのように、ってやつか」

「そうです。彼の力は本当に強いと思います」

「康矢の風斬(かぜきり)も防いでたしね。あ、風斬っていうのは、かまいたちみたいなやつね」

「……そうですね。そして最後の一つ。忘れてはならないのが、残念なくらいの属性、とこしえです」

「あ! 七つ目か!」

「残念ってどういうこと?」

「大丈夫だよ、緋名。ちゃんと説明するから」



 玖は緋名のとなりで一緒に話を聞いている。途中途中で補足を入れたりしている。



「はい、緋名姫。永、というのも、実はまだ世界でもよくわかっていないといわれています」

「は?」

「共通している属性がないの。だから、分からないものを一つにまとめて、永って呼んでるの。体力を回復したり、壁を出して守ったり。瞬間移動とかもできるのよ」

「最初にいったのが誰なのかは、分かりません。そりゃもう世界のものですから。文献なども淡桜にはありませんでした。ただ、私が思うに、神秘の南にヒントくらいは残されているのではないかと」

「えー? ぜったい央国おうこくだよ!」

「玖姫、央国というのは伝説でしてね。確証がないといわれているのですよ?」

「でも神様が住んでいる大陸なら、絶対に何かあるよ!?」



 説明の途中で康矢が推理を披露すると、玖は反論する。その間に登流は自身の中で整理を付けている。ただ緋名は、二人の推理についていける。あまり考えずともすんなり聞いていた。



「誰一人として、場所をつかんでいないっていわれている、あの伝説ですか?」

「そうそう! さすが緋名!」

「神様が文献など必要としますか?」

「うぅ……」

「わたしはどちらかというと、南より、未知なる北の方がありそうだなって思います」

「おお! 貴重なご意見!」

「いやヒナ、今そういう話じゃないだろ……頭痛くなってきたぞ。だいたいなんでお前はさらっとついてってんの?」

「え? すっごく楽しいじゃない? 登流はこういう話苦手なんだね、難しい話をよく父上としてるのに?」

「ウチには魔法使うやつがいないだろ? 師はもちろん、屋敷の奴らも使うのはいない。図面とかにすれば、もうちょっと分かると思うけど、カラはキツイ」



 いつの間にか、登流の面はキツネになっていて、ウキウキと話す緋名についていけない様子だ。


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