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二章 観覧車の音 12


 説明が下手で、ところどころつっかえる。



「それから、わたしと玖姫が写真に目がいって、雪に緊張感を持ってくださいって叱られたというか、呆れられたときに……」



 黒服に身を包んだ大柄の男がいた。その足元に、雪が倒れている。何の音も出さずに侵入し、雪を気絶させていた。



『だっ……だれ!?』



 大柄な男に見下ろされ、じぃっと観察されて、緋名も玖も身震いした。



『淡桜の玖姫と、水仙の緋名姫だな? ともに鈴蘭に来てもらう』



 とても小さな声でボソッと呟いたため、すべてを聞き取ることは出来なかった。しかし男は勝手に拒否したと判断したのか、倒れていた雪に剣を向けた。



『……従え』



 ──それから窓とは反対の玄関から出されて、高台の方まで歩かされた。男は軽々と雪を抱えていたが、南天の森まで行ったあたりで、似たような格好をした三人の男たちが待っていた。そのうちの一人に雪を渡し、さらに、少ししてから、怪しい笑い方をする細身の男がついてきた。



「なるほど。最後に来たのが惟月ってやつですね」



 話の途中でいかにも知っていそうな男が出てきて渓が口を挟んだ。



「わたしと玖はそこで目隠しをされました。たぶんその人たちに担ぎ上げられて、鈴蘭に入りまーすって報告されて。鈴蘭の城に入ったところで目隠しを外されたけど、すぐに地下に……」



話の途中で、なんとなくの違和感を感じる渓。口を挟まずに視線だけ康矢に向けると、康矢も視線だけで返してきた。



「それから地下で、玖が珍しく弱音をはいて、慰めて。あ、そうだ。牢から出るとき──」



不自然に、そこで止まる。



「? 緋名姫??」



 康矢も渓も、緋名を見やるが、緋名は目を合わせない。なんとなく汗をかいているような気もするが、さすがにツッコめない。緋名も緋名で言っていいのか言わない方がいいのか、考えているようだった。



「緋名姫、どうか、躊躇わずに」



 渓が声をかけると、緋名はピクリと肩を震わせる。隠し事をしているのは明白だ。それでも先ほどの違和感といい、聞かないといけないと思い、問いかける。

 一瞬の間があってから、緋名は口を開く。



「あの、その……」



 何か重大なことなのか、何を発見したのか、康矢も渓も聞き漏らしがないように耳を傾ける。



「あの! 雪のことは、登流に秘密にした方がいいですか?」



 正直、気が抜けた。なんだそんなことかと思えば、緋名は真剣な顔で伺っていた。



「秘密にしなくて大丈夫ですよ。見た回数が少ないとはいえ、雪がその判断をしたのなら、しばらくはその格好でしょうしね」



 康矢が優しくそう答えれば、緋名の表情から緊張が抜ける。



「はぁー、良かった。登流に秘密ごとは作りたくなくて……」

「あとが怖そうですもんね」

「そうなんです」

「誰が怖いって??」



 にょきっと出てきたのはおかめだ。探しに行く手間は省けたが、心臓に悪い。



「登流!!」



 噂をしていた人物が現れ、緋名も渓も一瞬固まる。しかし渓はすぐに手当てのための道具箱と食料を手に取る。



「お疲れ様です登流さん。この非常食どうぞ。緋名姫も。登流さんお怪我は?」

「ありがとう。いただきます」

「どうも。怪我はたいしたことない。渓、誰が怖いって?」

「ひぃぃ!!」



 登流は渓を脅かすだけ脅して、緋名の横に座り込む。そしてぱくぱくと固形食を食べ始める。



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