二章 観覧車の音 11
「……はい。周りが見えてなかった時は、教えて下さい」
緋名は自分を信じてくれる二人を信じて進む。庭から狙い撃ちされないように、中の廊下を進んだ。
建物の造りが分からなくなってきそうだった。同じような景色ばかりで、さっき通ったのも、ここだった気がしてならない。けれど、後ろから声が飛んでこないので、大丈夫と自分に言い聞かせた。
俗に、大広間と呼ばれるような、大きな部屋。そんな部屋が視界に入ったとき、見慣れた男が二人、敵と戦っているのが見えた。
「あ、康矢!!」
玖の高い声が、空気を伝わって二人に届いたのか、はたまた偶然か。ちらりとこっちの方を見たのは、確かに康矢と渓だった。
緋名はホッとして急いで広間に入ろうとした。それが命運を分けた。
「行きま……っ!?」
「玖姫!!」
「わっ!!」
──爆音。
緋名の後ろで、玖の目の前で、なにかが爆発した。
緋名はとっさに、広間の扉の後ろに隠れ、衝撃から逃れようとした。しかし、すぐに後ろの二人を呼ぼうとし顔を出すと、頬にチリッとした痛みが走る。
「玖!! 雪!!」
緋名が叫んでも、二人の声は返ってこない。
もくもくと上がる煙の中に目を凝らすと、雪が玖の腰に手を回して、爆発から避けていたことがみえた。しかし、床には大きな穴が開いていて、とてもじゃないが、飛び越えられない。
「間一髪。玖姫ご無事ですか? ケガは?」
「私は平気。ありがとう、雪。緋名は? あぁ、良かった。無事みたいね」
三メートルと少しか、距離はあるが、会話は出来た。
「緋名! 康矢たちと合流して!」
「でもっ!!」
「早く! 雪とそっちへ向かうから!」
「……無事に!」
何も言わなければそのままその場に待機していそうな緋名は、とりあえず二人が向かった方向を覚えて、部屋の中に入った。
「緋名姫!? ご無事ですか!!」
戦いそのものはすでに終わっていて、康矢と渓は食料や、治療のための道具をせっせと集めていた。
細剣を片手に持った緋名の頬には、爆撃で負った傷がある。渓はすかさずそれを見つけると、すばやく緋名を座らせ、手当てを始める。
「わたしのことより! 先ほどそこで玖と雪とはぐれたんです。なにかが爆発して……」
「じっとしてください。小さな傷でも油断したら怖いことになりますよ」
化膿してしまうことと、登流に見つかって容赦なく攻められることと、二つ想像してしまい、緋名は口を閉じた。
「緋名姫が合流できて、ひとまず良かったですよ」
康矢がやわらかく笑ってくれたのを見て、緋名はここにいるはずのもう一人の名前を出した。
「あれ、登流は?」
「登流さんは、惟月って人と戦っています」
「いつき?」
「緋名姫、申し訳ないのですが、淡桜で別れてからのことを教えてくださいますか?」
「あ、うん。まず二人と別れて、はじめは何も、なくて。窓から二人が見えていたの。渓くんが合流したのも確認した」




