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二章 観覧車の音 7


 もちろん、絶命していたのは鈴蘭の兵士だ。しかし。



「このナイフ、惟月って名前が書いてあります」

「どれほど地獄耳なんだ。聞こえているぞって言われた気がする」

「ナイフ投げって限度ありますよね? 僕たち三回くらい曲がって来てますよ?」

「……怖いですねぇ」

「笑い事じゃないっすよ!! 僕らに当たっていたら即死ですよね?」



 あまりにもあり得ないことだったせいか、康矢たちは障子を元通り閉めてから、先に進んだ。


 同じ頃合い、登流はちょこちょこ動く惟月を追っていた。



「ちょこまか逃げてて粉々にできるとでも?」

「面倒ですね」



 般若のお面が、刀をもって逃げるものを追っていた。ぱっと見ただけでは、どちらが悪なのか分からない。ぼそっと呟かれた言葉は、風向きのせいで登流の耳に入ってしまう。



「あ? 面倒ってなんだ?」

「俺よりよっぽど地獄耳ですねっと」



 城を背に戦う惟月は、ナイフを一本、城へ向かって投げた。その行動に意味はあるのか、登流は疑問に思う。しかしおそらく、この男の行動に自分達が思う意味などないのだろうと結論付ける。

 登流は刀を握り直し、もう一本、今度は両刃の剣を取り出す。



「……二本……」

「お前を仕留めれば終わりってわけじゃねーんだよこっちは。さっさと終わらせてもらう」



 二刀流でさっくり終わらせて、康矢たちのあとを追う予定だった。しかし、惟月のとった行動は、登流を驚かせた。



「奇遇ですね」



 惟月は投げていたナイフの残りをその辺に捨てて、腰の剣を抜く。それは両方に刃がついている剣で、懐からもう一つ取り出した。次に取り出したのは片刃の刀で、登流とは逆手なだけの、同じ武器だった。



「……お前も、二刀流か」

「まさか俺以外にこの組み合わせを持っているとは思いませんでした」

「一緒にすんな。お前とは違う」

「同じでしょう? 逆なだけで。使い勝手いいですよね、これ」

「………」



 登流は惟月の言葉に同意したくなかった。かわりに、一撃を繰り出す。同じような武器を持つもの、しかも片刃と両刃の二つだ。戦いが長引いてしまいそうな感覚がある。この戦いが長引けば長引くほど、玖姫と緋名姫は危険だ。早く終わらせなければ、と思ってしまった。



「攻撃が焦っていますけど、いいんですか?」

「ちっ……」

「その刀の鍛えも相当でしょうけど、俺のこいつに全力で押されたら、折れますよ?」



 惟月の攻撃を、刀でおさえる。そのまま堪えていると、本当に折れかねない。登流は刀を滑らせ勢いを殺す。そして惟月の背に回り、距離をとる。

 そして距離を保って、聞きたかったことを聞く。



「うちらの国の境界線の壁に、通り道作ったの、お前か?」

「分かりました? 便利でしょう?」

「ふざけた道作りやがる」

「あれを作るの苦労したけど、楽しかったなぁ」



 刀を構える般若の前で、ニヤニヤ笑いながら平然と答えた。



「あと言っておくが、俺らの国に勝手に入ってきた分も斬ってやるからな」

「……」




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