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二章 観覧車の音 6


「さすがに強くなってきましたね」



 渓だけではなく、康矢も登流も刀を抜き応戦する。呼吸は整ったままだが、さすがにじんわり汗ばむ。



「足を止めるまでには至りませんがね」



 話ながらの余裕はあった。しかし本丸への入り口が見えたとき、前を走っていた登流の足が止まった。



「わ! どうしました?」



 すぐ後ろを走っていた渓が、登流に激突しそうになって、慌てて止まる。一番後ろの康矢は、足を止めさせた人物に気づいた。



「康矢、あれ、もらうぞ」

「……姫たちのところには行かないと?」



 登流が発した言葉によって、渓も理解する。そして見つけたのは、木陰で一服中の惟月。真っ黒な服装が木々の陰を表しているようだった。



「姫様たち大丈夫でしょうか? 怪我していないといいのですが」

「緋名が怪我をしていたら問答無用で武術を取り上げる。不本意ではあるが、望み通りだ」



 どう聞いてもやる気ならば、そのまま放っておいたほうがよいだろう。康矢はそう判断した。



「……姫たちと合流したら、こちらに戻ってきます」

「その頃には終えているつもりだ」

「………あの人、強い……強そうです」

「久しぶりに全力で殺すさ」



 渓が呟いた言葉に、登流は笑みを含めて答えた。般若の面を付けているはずなのに、ニヤリと笑った気がしてならない。



「………登流さん、生首とか持ってこないでくださいね?」

「行け。あれは俺が仕留める」



 渓の言葉を聞いているのか聞こえていないのか、物騒な言葉しか返ってこない。



「土産はいりませんので、息の根だけ止めてくださいね」



 念のために康矢も忠告したが、渓の言葉より怖い。しかしそれにも返事はない。

 少しずつ、登流は康矢と渓から距離をとる。そして惟月との距離をつめる。惟月はそんな三人を見て、少し驚いた顔を見せた。



「あれ? もう来たんですか?」

「お前の首を獲りにきた」

「怖いなぁ。ま、退屈はしなさそうですね。せいぜい翻弄してあげますよ」

「そのまま舌噛んで死んでもいい」



 登流と惟月が戦闘体勢に入ると、康矢と渓はそこから全力で逃げた。



 二の丸から逃げ切って、二人は本丸に、城に入る。そうして姿が見えなくなってから、渓は口を開いた。



「……康矢さん」

「はい?」

「登流さんと惟月って、怖いですね」

「……何を今さら。あの二人は武術ではなく、話術で勝負すればいい人たちですよ。絶対に同じタイプですよ」

「周りとしてはその方が安全ですよね」



 城の内部、廊下をひたすら走る。障子がいきなり開いて、刀を持った者が出てきても、冷静に対応する。それでも話を続ける。



「その場には居合わせたくないです」

「私だって嫌ですよ。二人だけでやっていればいいんです」



 貶しているのか褒めているのか分からなくなってきたとき、叫び声が聞こえた。



「がぱぁぁぁ!!」



 康矢の隣の障子が、血飛沫によって赤く染まっている。あまりにも不自然なため、二人は足を止め、障子を開ける。そこには、首の後ろから喉を突き破ってナイフが刺さっていた。


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