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二章 観覧車の音 4


「出口か?」



 真正面と、登流の右手は壁だ。残ったのは。



「こ、こっちいけます」



 渓が歩いていた左側に曲がり、また道は続いていく。淡桜の端っこから入った壁の道は、逆側、淡桜と水仙の境目まで続いた。そして、二つの国と鈴蘭が一番近くなるところでまた右に折れる。

 結果、左後ろに水仙、右後ろに淡桜、正面に鈴蘭という場所に、出口の扉がある。



「すごく回りくどい道でしたね」

「これ作ったの、もしくは作るように指示したの、さっきの惟月とかいうやつじゃねぇの?」

「私もそんな感じします。開けますよ?」



 扉を少し横にずらすと、小さな明かりは消えた。外からの強い光が、暗い中を眩ませる。康矢の後ろで、攻撃があったら即座に反撃出来るよう、登流と渓が武器を構える。



「あれ?」



 明るすぎる光に慣れて、扉を全開にしても、誰からも攻撃されない。



「誰もいない」



 目の前にはうっそうとした森が広がるだけで、人の気配はまったくない。



「おかしいな。てっきりここで待ち伏せしてるかと思ったけど」

「確かに、ここなら狙い撃ちしやすいですもんね」



 出口が一つしかないから、ここから出てくるところを狙えば一網打尽にできたはず。しかしそんな気配はまったくない。



「とりあえず、行くか」



 若干拍子抜けしたが、無駄に体力を使わないまま先へ行けるのはありがたい。

 先ほどと同じように、康矢を先頭にし、小走りで進んでいく。



「……のどかだな」



 深い緑の森。しかし静かな森。鳥のさえずる音は聞こえない。淡桜や水仙にいるような小動物の姿などもってのほか。本当に、木々だけの森。



「思ったより、きちんと道も整備されてますね」

「歩きやすいです。草むらだと思ってましたけど」

「鈴蘭の兵士、案外ヒマなんじゃねえの」



 自らが整備をするような城主ではないことは、隣国にいても分かる。いい噂を聞かないからだ。税などは重く、国民の苦しみなど知ったことかということを多く聞いている。

 このような国外れの道を整備するなど、想像がつかない。歩きやすいのはいいことだが、向こう側から丸見えなのではないかと、警戒は怠らない。

 そうして進むと、視界に門扉が見えてきて、進むスピードを落とす。



「ん?」

「どうした? 康矢」

「門を見つけましたが、兵士がいます」

「……普通ですよね?」



 木々に隠れながら、なるべく気配を消して三人は止まる。そして三人で、門を見る。



「ざっと数えても三十人以上いますよ。ちょっと多すぎですよ」

「蹴散らせる。準備運動にはいい数だ」

「あ、僕もいきますよ」



 登流は普段の口調で言ったからか、なんとなく、試されているように聞こえた。だからこそ、渓も普通に言った。


 しかし次に聞こえたのは、思いもよらない言葉だった。


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