二章 観覧車の音 3
しかし望んだ答えは返ってこない。
「さて、どうしましょうかね」
「……無計画か?」
「あれが来いと言ったものだから、てっきり道があるのかと思ってました」
「……来てみたら無かったと」
いつも計画的に物事を見ている康矢の、初めての無計画。これには登流も口をふさぐしかなかった。けれど。
「……姫たちはどうやって運ばれたんですかね?」
渓が正論を持ち出した。
「確かに。どこかに扉でもあるのか?」
「探してみましょう」
そして三人は別々の方向へ歩き、壁に何かないか探す。康矢は城主の間のような隠し扉がないかと手を当てて。渓は壁を壊せないかと音を確かめながら。そして登流は、水仙のカラクリ屋敷に似たものはないかと。
探し続けておよそ二十分。早く助けにいきたかったが、道が開けないことにはどうすることもできない。渓は自分の探した場所をあきらめて、一番近い康矢のところへ走っていく。すると。
「康矢さん……これは」
「私たちは行けますが、姫たちを運ぶのは難しいでしょうね」
「でも雪さんならば?」
「雪が目を覚ましているときなら、黙って運ばれることはせず、玖姫か緋名姫のどちらかを逃がすと思うんです」
「あ、そうか」
「とりあえず、登流のところへ戻りましょう」
康矢が探した辺りには、四、五メートル上に窓枠のような線が入っている。今の自分達だけならば、枠を壊して行けそうだ。だが、惟月は姫たち三人と通っているのだ。惟月の他に協力者がいたとしても、三人を運んであの高さは厳しいだろう。おそらく、他に道がある。
「しかし驚きましたね」
「はい。あんなところに枠があるなんて知りませんでした」
「錫飛様だけでなく、水仙の鳴雲様にも報告をしなくては」
そのまま進んで登流のところへいくと、登流の姿が見えなかった。
「あれ? この辺ですよね?」
キョロキョロと見回すと、壁の一部が出っぱっているのを見つけ、そこから登流がにょきっと出てきた。
「うわっ!?」
「あ、悪い」
「び、ビックリした……」
出てきたのがおかめだったら、もう少し驚きは抑えられただろうが、まさかのキツネ面だったので、見たことのなかった渓は声を荒げてしまった。
「どうしました……おや、キツネさん」
先ほど見た面だったので、康矢はそれほど驚かず、逆に渓を驚かせた。
「康矢さん、なんでそんなに普通……」
「通れるぞ、ここ」
回転扉の要領で、壁の中に入っていく。中は当然暗く、どこを歩いていくのか分からなくなるはず。しかし中に入り、扉が閉まった数秒あと、ポツリポツリと明かりが点る。
「……壁の中にも電気を通しているとは」
「ずいぶん手間かけてるんだな」
「けど、便利ですよね、これ」
ササッと走りたいが、罠があるかも分からない。康矢を先頭にして三角の形を保って慎重に進む。他に道はないか、登流は手を壁に添えて歩く。
「あ、行き止まりですね」




