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序章 冬の行進曲 1

この物語はフィクションです。

登場する人物、団体、法律および名称等は実在のものとは一切関係ありません。

誰も何も関係ありませんのでご注意ください。


 十六年前の星月の初め。淡桜。首都である桃の地にて。



「──(ひさ)。あなたの名前は、玖ですよ」

「名前は玖か。どういう意味なんだい?」



 布団に座る妻の元に、城主が来て座り込む。夫婦の間には、先日産まれたのであろう赤子が眠っていた。妻は赤子から城主へと目線を移し、また赤子に、玖に目を向ける。



「多くの者と共に、という意味です。水仙のあの子が、覚めるような紅い魂の輝きを持つ者、という名ならば、この子も。ですが、私の願いでもあります」

「願い?」



 城主は妻のひたいを撫でて聞く。



「はい。私とあなたの姫が、決して一人にならないようにと……」



 両親はそろって玖に目を向ける。妻は心配そうだが、城主は笑顔だ。



「大丈夫だよ。玖には緋名(ひな)が、緋名には玖がいる。それに他の子達も、僕たちもいる。君の願いは強力だからね」



 そして夫婦は手を背に当てて、互いの頬にキスをする。

 この願いの通り、二人の姫はすくすくと育っていく。



 そして彼女たちが三歳を迎えた秋。一つの別れがあった。



「父さま、あの人たちは、帰ってこないの?」

「父上、母上たちもみんな、また会えますよね?」



 幼い姫たちは、己の父に向かって疑問を投げつける。目の先には、もう小さくなってしまった人影があった。大人三人と、子供二人。決して振り向くことはなく、そのまま去っていく。

 その影が見えなくなると、二人の父はそれぞれ己の姫を抱き上げ、言葉を返す。



「大丈夫だよ、玖、緋名。僕たちが強くあれば、また会える日が来るさ」

「そうだな。母達も、いずれは帰ってくるであろう。それまで己を磨いて驚かせてやればよい」



 妻との別れをものともせず、二人の父は笑顔だった。その笑顔につられてか、姫たちも笑顔になっていった。



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