表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

料理



月曜日までは今まで通り、美智子が家事をした。

義人は、長期休暇でも取ったような気分で、束の間の休みを楽しんだ。

孝明ともたくさん遊んだ。


そして月曜日、義人の主婦デビューの日、義人は美智子を起こさないように五時半ごろに布団から出た。

まずは朝食作りからだ。

白米と水を入れて、炊飯器のスイッチを入れた。これで六時半にはご飯が炊ける。

味噌汁を作ろう。それもとびきり旨いやつ。心配することはなかった。結婚する前は一人暮らししていた。料理くらい、どうということはない。

味噌汁なんて、お湯に味噌を溶いて、具材を入れるだけだ。

……いざ作ってみると、普段食べているものと全く違った。

塩っ辛いし、ジャガイモは煮崩れして、ワカメは溶けていた。


……あ、ダシを入れていなかった。

ダシを入れれば、多少は味が良くなるかもしれない。

……ダシ??ダシってどうやってとるんだっけ??


義人は、中学校でやった家庭科の授業を思い返した。

全く記憶になかった。


しょうがないと思いながら、布団にいる美智子を起こしてダシのとり方を聞いた。


「ダシの素が棚の中にある」


美智子は一言そう言って、また眠った。

なるほど、そういう物があるのか。一言礼を言って、静かに寝室の扉を閉めた。


棚を調べると、確かにダシの素と書いた袋があった。

どれくらい入れればいいのかわからなかったので、とりあえずスプーン一杯分入れて、味見をした。


うん、こんな感じだろう。

もし気に入らなければ、最悪納豆とご飯で食べればいい。


そうこうしていると、炊飯器から、なにか、メロディーが流れた。

どうやら炊きあがったようだ。


今、一応、味噌汁とご飯があるが、これだけでは寂しい。

卵でも焼くか。…うん、それがいい。目玉焼きなら、フライパンに卵を割って入れるだけだ。


フライパンに油をしいて火にかけた。

卵を割って入れた。焼けつくような音が台所に響いた。


……ん??あれ??

おかしくないか??

フライパンに接した面はどんどん焼けつくが、接していない黄身の部分が全く火が通っていない。焦げたにおいがしてきた。焦って火を止めた。

料理がこんなに難しいものだとは……。


結局目玉焼きは諦め、火の通っていない黄身の部分を取って、卵掛けご飯にすることにした。

底の深い皿に、一個一個黄身を移し替える。


気づくと時刻は七時になっていた。


孝明と美智子を起こす。


「わぁ、割と結構できてるじゃない」


「まあね」

平静を装ったが、あまりに汚点が多すぎて、冷や汗が出た。


味噌汁とご飯、卵をだした。


「うん、美味しい。

味噌汁がちょっと塩っ辛いけど」

美智子は笑いながら言った。


「そう」

義人は苦笑した。


孝明は味噌汁を一口飲んだだけで、飲むのを止め、卵掛けご飯を食べていた。

子供は正直だ。

義人はそれをみて、もう一度苦笑した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ