掃除
八時になり、美智子に弁当を渡す。
「献立はなに??」
美智子は聞く。
「チキンライス。
おかずは入ってないから、そこは自分で」
義人は苦笑しながら言った。
「りょーかいです」
美智子は笑った。
「僕も食べたい」
「孝明のは、授業参観の日に作ってやるからな」
孝明の頭をなでる。
義人は、二人を見送ると、昨日と同じように洗濯と皿洗いを済ませた。やはり慣れがでたのか、昨日より早く終わった。
するともう、やることがなくなった。
ふと、リビングの隅に目が行った。ホコリがたまっている。美智子め、掃除をさぼっていたな。
よし、今日は掃除をしよう。
義人は、掃除機を手に取り、バケツに水をいれ、雑巾を用意した。
まずは二階からだ。義人は掃除機とバケツを持って、階段を駆け上がった。
孝明の部屋からだ。
孝明には、小学校入学を機に、部屋を与えた。最初は一人で寝れなかったみたいだが、一週間もすると慣れてくれた。いつまでも親にべったりする子は育てたくない。心を鬼にするつもりで部屋を与えたのだ。
部屋に入ると、なかなかかたずいている。机を見ても、勉強をしている痕跡がある。
よしよし、今日もお菓子を買っておいてやるか。
そう思いながら、掃除機をざっとかける。次に、部屋の端を中心に、雑巾がけをした。それだけで、目に見える変化があった。
次に寝室、二階廊下、リビング、一階廊下と、掃除機と雑巾をかけた。
次に、キッチンに移動する。
まずは、コンロの焦げを取ろうとした。が、洗剤を付けて洗うだけでは全く取れない。そこで、余り使っていないスプーンで根こそぎ取った。
小一時間かけて、焦げをすべて取る。
腰をずっと曲げていたので、腰を伸ばす。トントンと拳で腰を叩く。
ふと目線を上げると、茶色に汚れた換気扇が飛び込んできた。これも掃除せねばなるまい。
背伸びをして、換気扇に手をかける。かちっと音がして換気扇の網の部分が外れる。
洗剤を付けて水洗いすると、すぐに汚れは取れた。
乾拭きをして水気を取って、換気扇にはめ込む。
一歩下がってきれいになった換気扇をながめて、うんうんと首を縦に振った。