朝食 2
次の日の朝、義人は六時に起きた。一日家事をやったら多少の自信がついたので、起きるのが少し遅くなった。
だが、ご飯は昨日の夜に炊いたので、米を炊く手間はない。
まずは味噌汁だ。昨日のリベンジを果たしたい。
まず鍋に水をいれ、火に当てた。作りすぎないように水は、昨日より少なめにした。
ポットからお湯を出し、やかんに溜める。そして、熱々の湯を油揚げにかけた。これで、油揚げの油が抜けるらしい。男の料理本に書いてあった。
次にねぎを刻んだ。
今日の味噌汁の具はこれでいい。
次はおかずだ。鮭を焼こう。昨日冷凍庫を見たら、奥深くに鮭が三切れあった。これを見た時から、今日の朝ごはんは決めていた。
しかも、グリルには、焼き魚というメニューがあって、これで確実に失敗はない。
あとは完璧に味噌汁を作るだけで、完璧な朝食が出来上がる。
沸騰したところでダシの素を入れ、味噌を適量入れて、味見をする。
……少し薄いかな??味噌を入れる。そしてもう一回味見する。
……うん…!!うまい。
シンプルにそう思った。これは、主観だが、美智子のよりうまい気がする。
今、六時半。
昨日より、かなり早い。
進化の早さに、自分ながら感心する。
よし、次は美智子の弁当だ。
お手軽!!お弁当レシピ を開く。
適当にページをめくる。
おっ。チキンライスだ。確か孝明が好きだったな。
よし、予行練習も兼ねて、今日の美智子にはチキンライスを持たせよう。
おかず作る時間はないから、主食だけ持たせれば、おかずは勝手に買うだろうし。
よし、作るぞ。
義人はそう決意して、フライパンを手に取った。
まずは昨夜のハンバーグの残った玉ねぎを、みじん切りにして炒めた。
次にご飯を投入して更に炒める。
そこにケチャップを適量入れた。
白いご飯に赤色が付く。テカテカして美味しそうだった。
味見をすると、鮮やかな赤色に似合わず、味が薄かった。
首を捻って、ケチャップを更に入れる。
再び味見をするが、なにか足りない気がした。
塩分が足りないんだと思い、塩、胡椒を振った。また味見をする。うん、先程のものよりはおいしくなった。
義人は首を縦に振って、タッパーにチキンライスを詰めた。
時刻が七時を過ぎたところで、美智子と孝明を起こす。
孝明はすぐに起きてきたが、美智子はのそのそと起きてくる。久しぶりの仕事で疲れたのだろう。
「おはよ…」
美智子は絞り出したような口調で言った。
「おはよう」
孝明も言う。
「おはよう。朝ごはんできてるから、座って」
「はーい」
孝明は返事をしてすわったが、美智子は終始無言だった。
味噌汁とご飯、鮭をテーブルに出す。
美智子と孝明は味噌汁をすすった。義人はその様子を窺いながら、鮭の骨を取っていた。
「うん。今日のはおいしい。
ね??孝明??」
美智子はそう言って、ようやく眠たい声に張りが出ていた。
「うん」
孝明は味噌汁とごはんを交互に食べていた。
孝明は、その日の味噌汁を完食した。義人は少し誇らしく、満足気だった。
作った料理を完食してもらえる。これは、主婦の喜びの一つであろう。