ファミリー
義人はハンバーグをひっくり返す。
良い焼き具合な気がする。
その時、玄関の扉が開く音がした。孝明はその音を聞きつけ、玄関へと走る。
自分はどうしようか考えたが、ここで台所を離れると、成功しかけたものが炭になりかねないので止めた。
またハンバーグをひっくり返す。
火は通っただろうか??
「おかえりー!!」
孝明の舌っ足らずな声がした。
皿にハンバーグを盛り付けた。
ソースをかける。
ソースは大根おろしとポン酢を混ぜた、簡単な和風ソースだ。
次はサラダだ。
そう思い、トマトを手に取った。
「ただいま!!」
振り返ると、美智子が孝明を抱えていた。
「おかえり」
「うわっ!!すごい美味しそうじゃん」
「そう思う??」
思わず笑みがこぼれる。褒められるのが嫌いなやつはいないだろう。
「いまサラダ作ってるから、着替えてきなよ」
トマトを片手に言った。
「サラダだってー」
美智子は吹き出した。
「あまりの亭主の変わりようにびっくりしたろ??」
トマトを四等分する。
「うん」
美智子は腹を抱えている。
「まぁ早く、着替えてきて」
「うん」
美智子は目に涙を浮かべていた。レタスの葉を何枚かむしり、水で洗う。
粗めに切り、皿に敷き詰める。その上にトマトを乗せた。
簡単なサラダだが、これでいいだろう。
ごま油と醤油を混ぜて、ドレッシングを作った。ちなみに、料理本に載ってたお手軽レシピだ。
それをサラダに振り掛けた。
ご飯を盛り、ハンバーグとサラダと共にダイニングテーブルに置く。
義人は一歩離れて、ダイニングテーブルを見つめ、うん 初心者が作った物ではない、と自画自賛した。
不意に美智子が着替えてやってくる。
「さ、食べよう」
「うん、もうお腹ペコペコよ」
美智子はお腹に手をやる。
「孝明は??」
「テレビ見てる」
美智子は言いながら席につく。
「孝明ー!!ご飯だぞー!!」
リビングに向かって叫ぶ。
「はーい」
孝明はこちらにかけてくる。
孝明が座ったのを確認する。
「さぁ、じゃあいただきます」
手を合わせた。
美智子はハンバーグを箸で切り分ける。そして大根おろしをたっぷりと付け、口に放り込んだ。
孝明もそれに倣い、ハンバーグを食べ始めた。
義人は一人、サラダを食べる。うまい、そう言われてから食べ始めるつもりだった。
「美味しい!!」
美智子は確かにそう言った。
「ほんとに??」
聞き間違えたと思ったから確認した。
「うん!!普通に美味しいよ!!」
良かった……
義人はようやく、ハンバーグに手をかけた。
塊を一気に頬張る。
うまかった。
もしかしたら、店に出せるんじゃないか??そんな妄想をしてしまうほど、義人の口に、ハンバーグの味が響いた。