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元Sランク冒険者、孤独は辛いので幸せを求めて旅をします  作者: ヰ米
✩二章✩‐Extreme clumsiness of lullaby‐
14/36

焦燥を抱き《Holding the impatience》

昨日投稿出来ませんでした……、本当にすみません。塾と病院で時間がどうしても取れなかったのです。


では、本編をどうぞ

今、俺とアリーは席について、ヴェルンの話を聞く体制を取っている。

ヴェルンを落ち着かせるために、アリーがお茶を出し、ついでに俺の分も出していた。

落ち着く、などそんな流暢に言ってる暇はないだろうと思うかもしれない。しかし、ヴェルンの話以外に手がかりは無いのだ。


「俺たちは、三人で広場近くの公園で遊んでいたんだ。そしたら、急に女の人に声をかけられて振り向いた瞬間に三人とも口を塞がれちゃって……、俺は、二人より目を覚ますのが早かったから抵抗して逃げてきたんだけど、追いかけてくる様子はなかった。」


「それで、二人はどこにいるか分かる?」


アリーはヴェルンを気遣い、優しく問いかける。


「ううん……、ごめんなさい。俺、逃げるのに必死で相手の顔もよく見られなかったんだ……」


「だが、十にも満たない子供を襲う奴は大抵奴隷狩りじゃないのか?」


「確かにその可能性は高いね……」


奴隷狩り、闇ギルドに登録すれば臓器や労働奴隷、性奴隷等を高値で買い取ってもらえるため、闇ギルドのシステムを利用して荒稼ぎをしようと法律を破っているもののことだ。本来、このシステムは養う金銭的余裕のない人が近くに孤児院もないような場所で子供や女を拾った時に条件付きで売り、奴隷落ちという名目の上での保護のためにあるのだ。

例えば一週間に二日は休ませること。や、性行為は双方同意の上でないと禁止。等の条件をつけることが可能である。


しかし、売り手に相当な利益があるため、最近では孤児院やスラム、ましてや一般家庭の子供をさらっては酷い条件で売りつけたりしている。性行為や労働可能時間が長いほど高く売れるのだ。


閑話休題


そこで、俺はあることを思い出した。


「ああ、それとこの説は殆ど確定していると思う。半年前に、いきなり襲われた話はしたよな?その人、スラムの子を狙った奴隷狩りだと思ったらしくてな……、その時から増えているんなら今は相当数いる。」


「そういえばそんなこと言ってたね。じゃあ、この近くの闇ギルドを虱潰しに回ればいいってこと?」


「いや、その必要はない。闇ギルドは情報共有が早いからな。金さえ払えりゃなんでも教えてくれるだろう。売られたあとだとしても買い手より高い金で買い戻せばいい。」


「そっか……」


やはり院長のアリーからすれば、自分の子供と言っても過言ではないほど大切に育てていた子たちが金で取引されるのは嫌なのだろうか、表情を曇らせて沈んだ声で返事をした。


「兎に角、無事にここに帰ってくれば問題ないわけだ。そう落ち込むな。孤児院で負担しきれない額だったとしたら俺が出す。俺の貯金の限界はあってないようなもんだからな。」


落ち込むな。と言っても無理だろう。それはわかっている。だが、俺にそんな上手なことは言えない。だから、今はそんな彼女の肩に手を置いて捜索に尽力するしかないのだ。言葉で気持ちを表すことが出来ないなら行動で。


「ありがとう……」


アリーは口許を綻ばせて笑う。しかし、どこか自嘲げだった。









俺は孤児院を出て俺は一人歩みを進めていた。

アリーには孤児院にいてもらうことにした。闇ギルドの性質を知っている俺が行った方がいいのは明確であるのと同時に、孤児院にいる子供たちを置いていくことはできないのだ。だから、それなりに戦えるアリーに残ってもらうことにした。


だが、近場の闇ギルドと言っても場所がわからない。さすがに二百年前と同じ場所にあるとは思えないので今からスラムへ入って情報を金で買う。


「ここか……」


スラム街への入口とも呼べるような薄気味の悪い路地裏へと入り込む。湿度が高く、非常に過ごしにくい環境だが、彼らの許された生活は、当たり前の生活はここで行われるのだ。

歩いていると、ふと目の端に比較的体格のいい青年を捉えた。その青年の目はほかのスラム街の住人と違って生気が宿っており、妙に眩しさを感じた。

来たばかりなのかと思ったが、服や髪の汚れ具合から見るに長いこといるのだろう。

そして、帯剣して入口付近にいることから襲撃から皆を守る役割なのだろう。


「悪い、少し教えて欲しいことがある。」


青年に話しかける。そして、少しでも興味を持って貰えたらと思いポケットの中で銀貨どうしを擦り合わせて、金属音を奏でる。

青年は俺を見据えると、すぐに頷いた。


「なに?」


ぶっきらぼうにそう聞く。


「ここから一番近い闇ギルドへの道のり」


瞬間、俺は首筋に鋭い殺気を感じた。背筋が凍りつき、無意識に手が腰の剣へと向かう。だが、剣を抜いてはいけない。まずは信用を勝ち取らなければならない。


青年はよく訓練された素早い手つきで長剣を抜き放つと、間髪入れずに俺へと斬りかかる。

躊躇いのない、いい太刀筋だ。

こんな状況にも関わらず相手の技術に感心するところは、以前の俺のままだなと少しおかしくなってしまう。


俺は剣を見切り、手の甲を衝撃を逃がすように指を軽くまげた状態で剣の腹を叩く。軽く叩いた攻撃性の薄いものなので、流石に落としたりはしない。

しかし、効果は覿面のようでうまい具合によろけて壁へ剣を降ろしてしまう。


青年は驚愕の表情を浮かべる。

それと同時に壁に剣がぶつかって、石壁の破片がくるくると宙を踊り飛散した。


俺だってこの半年間鍛錬を怠っていた訳では無い。寧ろ以前よりも厳しく課していたつもりだ。実践が少ない分、基本と精度を大切にする必要があるからな。

……実践でも問題なく使えるようだ。


「連れていくなら俺だけにしてくれ……」


俺は得物を失った青年を見る。

覇気のない声でそううわ言のように呟く青年は、その声とは裏腹に覚悟を決めた目をしていた。

話し合いならできそうだ。


「違う。お前は勘違いしてる。俺は奴隷狩りに連れ去られた子供二人の捜索に来ただけだ。そう警戒するな。」


はっきりと、優先順位の高い順で話す。


「え?じゃあ……」


青年は先ほどと一変、どこか焦燥のようなものを感じさせる声音で続けた。


「ただの勘違い?……ごめんなさい」


青年は申し訳なさそうに琥珀色の双眸を濁らせると、素直に俺に頭を下げる。


「いや、問題ない。それよりも闇ギルドの場所を教えてくれないだろうか?」


「わかった。だけど金入らない。さっきのお詫び……、闇ギルドはこの路地を抜けてすぐのカフェ。一見カフェにしか見えないけど、表じゃない扉からはいる。」


「助かる……」


時間が無い。

この青年には次会った時もっとちゃんと礼をしておこう。

俺はそう心に決めると、屋根上へとジャンプしてのり、全速力でそのカフェへと向かった。


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