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元Sランク冒険者、孤独は辛いので幸せを求めて旅をします  作者: ヰ米
✩二章✩‐Extreme clumsiness of lullaby‐
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居るべき場所《There should location》

レミアと初めてあった日から約半年が過ぎようとしていた。

季節は流れ冬の準備のため、孤児院での仕事は忙しくなる一方だ。俺もアリーに頼り切りな子育てではダメなので、なんとか一通りのことは自分で出来るように努力しているつもりである。

そして、最近……


「ぱぱぁ~」


うむ、控えめにいって天使だ。

目も開いてきたため、俺のことを意識して「ぱぱ」と呼んでくれているのなら尚更嬉しい。

俺はマシロの白い髪の毛を指先で弄りながら「ぱぱですよ~」と繰り返す。

俺の努力が報われたのだろうか、確かに初めて喋った言葉は「ぱぱ」だった。

その後には「ばいばい」を覚えて俺やアリーが仕事で部屋を出る時に言ってくれるようになった。この言葉をもらったあとなら俺はきっと魔王をデコピンで倒せるだろう。


「私のことはままって呼んでくれないの?」


アリーがすごく寂しそうな顔をしていた。だが、呼んでくれないのは仕方がない。アリーはココ最近忙しく、毎日遅くまで起きて書類の管理や申請書をつくったりしている。俺が子育てをできるようになったこともあり、必然的に一緒にいる時間が減ったのだろう。


「まあ、仕事頑張ってるんだし、いつかは呼んでくれるよ。それじゃあ、俺はあいつらに剣を教えに行ってくる。」


「いつもごめんね。あの子達は冒険者に憧れてるから……」


「いや、いいんだ。なにかに憧れる気持ちは大切だからな。」


そういうと、俺はベッドから腰を上げて、玄関へ向かう。

扉を開けた先はまさに銀世界であり、冬ということを改めて認識させられた。


「ケル、リヴィア!今日は二人だけか?」


俺は走って遊んでいるケルとリヴィアを見つけると、声をかける。

走ると、雪に靴が沈みなんとも言えない心地良さがあった。


「寒いから二人!」


「うん!僕は寒くてもさぼらないから!」


「そうか、えらいぞ!じゃあ今日も素振りから行くぞ!」


ケルとリヴィア。もうすぐ十歳になり好奇心の全盛期を迎えている元気な男の子達だ。

ケルは赤茶の少し荒っぽく切られた短髪。リヴィアは男子にしては長めなのでは?と感想を抱く綺麗な金髪を特徴としている。二人とも剣の筋はなかなかいい。


「ねー!どうしてエル兄の剣は途中で消えるの?」


「途中じゃないよケル、最初から消えてるよ!」


「でも途中で消えてる時もあるよ!」


最初から消えてる時、もとい振り始めと振り終わりまでの速度が一定の振り方をしている時、これはただの俺の訓練だ。

手足のように剣を扱えてこそ一人前の剣士といえよう。

だから究極的に速さと鋭さだけを求めた振り方も訓練の一環にしていたのだ。


で、途中から消える時、もとい変速させ相手に揺さぶりをかける振り方をしている時、これは実践を意識して、彼らの模擬戦のためにやっていることだ。

独特の緩急をつけることにより、認識をずらしたりなんかもできる。元が剣の天才などではなく、ただの凡人だった俺はこっちの方を得意としていた。相手を騙す方がバカ正直に戦うより性に合っていたのだ。


「見えないくらい速く振っているからだぞ」


嘘はいっていない。十にもみたない子供に緩急だの認識だの初速だのを説明するのは骨が折れると思っただけだ。


「凄い!僕も素振り頑張る!」


「ケルは単純……」


おい、リヴィア。









「疲れた~」


「ケルがはしゃぎ回るからだよ」


剣の稽古を終えた俺たちは、孤児院の中に戻り、昼食の支度をしていた。ケルは二時間以上騒いでいたこともあり、かなりお疲れのようだ。


「二人とも席につけー、今日の昼飯はオムライスだぞ!」


そして今日の昼食はオムライスだ。以前青い鳥亭で食べたものの味が忘れられなくなり、練習していたらできてしまった。まあ、ガルドさんとこのにはかなわないが。

不思議なことに、作り方はなんとなくわかったんだ。前にも作ったり食べたりしたことがあったのだろうか。まあ、あったとしても迷宮にハマる前のはずなのでだいぶ懐かしい記憶になるが。


「やったぁ!オムライスだっ」


流石ケル、復活が早い。


俺は袖をまくり、早速作業に取り掛かる。

冷蔵庫──これは氷魔術の応用で作られたらしく見た目以上の容量がある。──から卵とトマトソースの缶詰を取り出す。

次にアリーの炊いた米をフライパンの上に適量乗せて炒める。だいぶこの作業も手馴れたもんだ。何せ半年前まで料理なんて殆どしたことなかったのだから。


トマトソースの缶詰をご飯にかけるといい具合に色付いて来るので、巨大なフライパン──直径五十センチほどの魔道具──に似合うサイズの卵焼きを上に載せる。これではただのオムレツのせトマトご飯なのでオムレツの真ん中を裂いて全体にかかるようにする。


孤児院は人が多いので普通の作り方じゃ間に合わないのだ。

巨大なオムライス擬きを皿に移す。この作業が一番難しい。


「よしっ、今日はうまく乗った。」


破れることなく綺麗にされへと移せたことに喜びを覚える。

それを人数分に切り分けて大きな丸いテーブルに並べた。


「うん、今日は完璧だっ」


なんか違う気もするが、味は同じなのでいいだろう。俺は腕を組んでちょっとドヤ顔をしてみた。


「何してるのエリーくん?なんだか怖いよ?」


「……スマン」


見られているとは思わなかった。冒険者時代の知り合いにこんな光景を見られたとしたら十中八九「【斬鉄】がエプロンしてるぞっ」だの「【絶陣】が料理でドヤ顔決めてるっ」とか騒ぎ立てただろう……


その時だった。


「アリー姉!エル兄!大変だ!リリカとノヴァが攫われたっ!」


孤児院で年上の方に入るヴェルンが大量の汗を流し、息を切らせながら入ってきて、大声でそう叫んだ。


「なんだって!?詳しく聞かせてくれ!」


「ど、どういうことなの?!」


俺とアリーは声を荒らげて問い詰める。その様子に、食卓についていた子供たちは怯える様子を見せる。

……孤児院に来た経緯は様々だが、両親に問題を抱えていた子も多い。人の怒鳴り声に必要以上の警戒心を見せるのはそのためだろう。注意が足りなかった。


「…一旦、落ち着こう。」


「そうだね、ごめんねみんな……」


俺は幸せな世界にいすぎた。

この幸せがずっと続くなんてありえないんだ。失念していた。

浮かれて、惚けて、注意散漫になっていた。

……やはり、少しは戦いに身を投じることも大切なのだろうか。危機回避能力を高めるという意味では。


具体的にどうしたらいいのかが分からない。

ヴェルンに詳しく聞いてから犯人を探すか、今すぐ外へ出てリリカとノヴァの保護を優先させるか。

思考の堂々巡り。


「エリーくん……大丈夫?」


アリーが心配そうに俺の顔をのぞき込む。


「ああ、大丈夫だ。ヴェルン、詳しく聞かせてくれ。」


闇雲に動くよりはいいだろう。多少のタイムロスはあれど効率的だ。


す、ストックがっ

出し切ってしまいましたが、毎日投稿はできる限り続けていく予定です。また、自分は受験生なので急に休むことになったりするかも知れませんがよろしくお願いします。

……高校どうしよう((

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