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時空魔人センテニアル  作者: 渡辺健太郎
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概観

 逆瀬川智は操縦席前方にあるタッチパネルからそれを選択し、人差し指でタンッと押した。

 反動による室内の振動は無い。機体全体の揺れを自動的に計算し、それを特殊サスペンションで打ち消しているからだ。

 全方向モニタで結果を見届ける。想定した結果がそのまま映し出された。

「初めて人を殺した」

「感想は?」

 このゼタトロニクス・ギアは二人乗りで、すなわち操縦席は二座あるという事になる。

 声が聞こえてきたのは狭い操縦室の上方から。針須エリカの席だ。

「想像以上に何ともないな。もっと何か来ると思った」

「頼もしいわね」

 しかし、操縦桿を握る両手はかすかに震えていた。カバーで覆われているのでエリカには分からないはずだ。


 月陽歴2046年、秀真国とヴェスゴア国の戦争が始まった。

 起動兵器『ゼタトロニクス・ギア』の性能差が決め手となり、戦争はヴェスゴア国が優勢となる。

 2048年7月、新型爆弾『ヴァザ』が工業都市芸藻に投下。秀真はヴェスゴアに降伏した。

 秀真はヴェスゴアの準植民地に転落。学業、就職、選挙、福祉等、様々な権利において秀真人は制限を受ける事となった。


 五年後。

「最終動作確認終了」

 秀真国の若者、逆瀬川智は手の甲で汗を拭った。『それ』の背中から作業用の足場を伝って下に降り、改めて見上げる。

「完成。タイムマシン付きゼタトロニクス・ギア、センテニアル!」

 言い始めは冷静を装っていたが、言葉が出てくるうちにその口調は上ずっていった。

 逆瀬川が見上げた先にあったのは高さ18mのゼタトロニクス・ギア。名をセンテニアルと言う。

 二足歩行型、人間でいう左腕の部分に4基の巨大なガトリングガンが備えられており、一方で右肩からは右腕と左腕両方が付いている。背中上部からは8本の管が上に向かって伸びている。

 脚部は人間の関節とは逆向きに折れ曲がった所謂チキンレッグ。しっぽのような物も付いていて、そこからはぬるぬるした液体が垂れている。

「そろそろ外は学校の時間か」

 ここは普通の空間ではない。時間と空間を同時に圧縮する技術『スペイス』の中だ。

 薄ぼんやりとした暗さで、空間と壁の境目は曖昧。その隅には、便宜上の隅にではあるが発電機が低い唸りを上げている。

「ログアウト」

 逆瀬川は螺旋状に渦巻く光に手をかざし、その空間から退出した。


「完成おめでとう」

 『スペイス』から退出した逆瀬川の意識がはっきりしてくるより前に針須エリカはその耳元で囁いた。吐息が直に感じられる距離で。

 その吐息で逆瀬川の身体が震えたのを確認するとエリカは背中に抱き着いた。

「予定通り。今日の午後決行ね」

「分かっているから離れて」

 逆瀬川の言葉を聞くと、エリカは素直に離れてバレエのようなポーズを決めた。

「つれないなあ。どこでも触らせてあげるのに」

「針須エリカ。お前はスポンサーだ。資金を提供してくれた事に感謝するがそれ以上は無い」

「疲れてる? 撫でてあげようか」

「うるさい。ド貧乳というのもおこがましい無乳」

 エリカの服装は長袖レオタードにピチピチのハイネックトップス。頭にはティアラ、靴はバレエシューズ。胸の大きさは乳頭よりトップスの端の縫い目のわずかなでっぱりの方が横から見た時に突き出ていると言えば伝わるだろうか。スカートはレオタードのお尻側にしか付いていない。

 逆瀬川の方はTシャツの上にクタクタの作業着、ズボンもすすけている。

 コンクリート造りの屋根裏部屋が蒸し暑さを加速させている。

「何処に行くの?」

「学校だよ。一応行っとかないと怪しまれる年だからね」

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