No.32
-2023年6月-
6月初旬。
「そろそろ病院行って診断書もらわないと」
俺は前に診断書を書いてもらった病院に、電話をかける。
「ご家族の方と一緒に来られますか?」
電話して事情を話すと、またしてもそんなことを訊かれる。
「以前に依頼した時は一人でも大丈夫だったんですが」
「あれ、そうなんですか?少々お待ちください」
俺が家族はおらず、家族同伴でなくてもいいということになっていたが、というような話をする。
すると、電話口のひとが電話を保留状態にする。
「お待たせしました。はい、確かにお一人でも大丈夫です。
いつになさいますか?」
「土曜日で予約できる一番近い日のでお願いします」
電話口のひとと日程について話し合った後、電話を切る。
1週間くらい後、精神科医の診断を受けて、診断書を発行してもらう。
値段は前回と変わらなかった。
それから別の場所で収入証紙を買った後、家に帰ってすぐに更新の申請書を書く。
「よし、これで完了!」
俺は申請書と診断書を全部入れた封筒を郵便局に出す。
「あとは実質更新試験受けるだけ」
やることやった俺は、家に帰って体を休める。
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-2023年7月-
「着いた」
海外赴任まで数日まで迫ったある日。
県北の狩猟免許の更新会場に来ていた。
「ただ、少し早かったようだな。まだ受付が始まってない」
会場に人は集まっていたが、人が溜まっていた。
「仕方ない、待つか」
俺は適当な場所で受付が始まるのを待つ。
「受付開始します」
しばらく待つと、そんな声が聞こえる。
俺は受験者の列に並んで、手続きを済ませる。
「はい、以上になります。
では、合格発表後、できるだけ早く取りに来てください」
更新試験が終わり、出口で係の人にそう言われる。
「私、このあと海外赴任なんですが、その場合どうしたらいいんですか?」
俺が訊くと、係の人が答える。
「次の免許更新までお預かりするので、帰ってきたときに 取りに来てください」
「わかりました」
「はい、お疲れ様でした」
答えを聞いてほっとした俺は、更新試験会場を後にする。
数日後。
「まもなく離陸します。
シートベルト着用をお願いします」
狩猟免許更新を済ませた俺は、今、航空機の中にいる。
今、俺の乗っている航空機は、滑走路上だ。
キーーーーーーーーーーーーーーーン
タービンの音とともに、航空機が加速し、離陸する。
「さようなら日本、またいつか」
ぽつり一言残して、俺は日本を去った。
 




