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No.30
-2023年2月-
それは突然だった。
いつも通り業務していると、上司から会議室に呼ばれた。
そして会議室に入ってすぐ、上司から衝撃の一言を告げられる。
「突然で済まない。君には海外に行ってもらう。
詳細な日程その他諸々は、今後追って説明する。だから、その準備をしておくように」
青天の霹靂である。
今年度も結局アライグマを捕獲だというのに。
「ちなみに、業務命令につき拒否権はない。
すまないが、わかってくれ」
その後、行先や待遇等の大雑把な説明をして、上司が会議室から出ていく。
「……」
俺は一人、会議室で呆然としていた。
「アライグマ、来年度こそ、必ず貴様を……!そう思っていたのに。
なんてこった、まさかこんなことになるなんて」
しかし悲しいことに、日本では業務命令に逆らうことは基本的に許されていない。
過去の労働基準法関連の訴訟における判例の数々で、そう判断されたからだ。
「……まぁいい。しかし、銃を持ってなくて本当に良かった、ってこういうとき本当に思うよ」
少しして、俺は会議室を後にする。
 




