No.27
-2023年1月-
ヌートリアを獲りすぎて獲れなくなったころ。
「ここ何がいるかね?」
俺は、ヌートリアを1頭獲った、去年ヌートリアを狩り尽くしたはずの池の、さらに上にある池に来た。
以前にここで銃猟者に遭遇しており、山に入ればイノシシがいると聞いている場所だ。
その池の堤防と山の境目周辺を偵察しに来たのだ。
「イノシシがいるってことはタヌキくらいはいるはず。
なら、タヌキ狙って獲れたらタヌキはまずいという通説の検証でもするかね」
箱罠を仕掛けてみることにした俺は、車に戻って箱罠を出す。
まずはキャラメルコーンを餌にして、俺はギリギリ堤防となる場所に箱罠を仕掛ける。
もちろん獣道を考えたうえで。
「まー獲れたらラッキーくらいでいよう」
俺は撒き餌を撒いた後、場所を後にする。
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数週間後
「そろそろ回収するか、何も獲れないし」
俺はそんなことを思いつつ、見回りのために箱罠に近づく。
すると、遠目に箱罠の扉が閉まっているのが見える。
「お?」
箱罠の異変を確認した俺は、のそのそ箱罠に近づく。
箱罠の中を見ると、そこには……
「た、タヌキだああああああああぁぁぁぁぁ」
タヌキがかかっていた。
「しかしこいつ、明らかに疥癬持ちだよな?」
ただし、かかったタヌキは、毛がほとんど抜け落ちていた。
「あーヒゼンダニ持ちかぁ。帰ったら殺虫剤かけないとな」
タヌキの処理をしたあとそんなことを考えつつ、袋に入れる。
罠を仕掛けなおし、タヌキを持って車に戻る。
すぐに家に戻り、殺虫剤を用意する。
タヌキが入った袋の中で殺虫剤を噴射する。
「気休めにすぎんが、やらないよりかはマシだろうよ」
殺虫剤をかけ終わり、俺は外の日陰にタヌキが入った袋を置く。
口を上にした状態で、動物に持っていかれないように、その上からみかんの収穫に使うコンテナをかぶせ、さらにその上にコンクリブロックを乗せる。
「さ、もう家に入って、解体は明日にしよう」
俺は家に入り、家事に勤しむ。
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タヌキ捕獲から数日が経つ。
俺はいつも通りに道具を用意し、タヌキの解体にとりかかる。
「あーやっぱこう、ヌートリアと筋肉のつきかたが全然違うなぁ」
解体を進め、後ろ脚肉を分離して思う。
ヌートリアと違った、少し肉の少ない後ろ脚。
筋肉の繊維がよくわかり、ヌートリアよりも黒い色。
少し後ろ脚肉を観察した後、すでに取り出した内臓を見やる。
ヌートリアより体積が少なく、腸が見てわかるくらいに短い。
「んー。こうしてみると当然なんだが、たまに甲殻類食うとはいえ基本は草食動物のヌートリアとは筋肉のつき方や内臓の大きさが目に見えて違うよなぁ」
実際に解体しなければわからない違いを感じながら、俺はタヌキを解体していく。
時間かかると思った解体は意外とあっさり終わり、目の前にはタヌキの前脚・後ろ脚肉の入ったフリーザーバッグがある。
「ふふ。念願のタヌキ肉が、目の前にある。
果たしてどんな味か、冷凍で寄生虫を殺してから調理して確かめるとしよう。
いつになるかはわからんが」
タヌキ肉が入ったフリーザーバッグを手に持ち、冷凍庫へと入れる。
解体道具を洗浄して片付けた後、自室へと戻り明日の準備をする。




