No.24
-2022年12月-
猟期始まって1ヵ月。
今のところ、ヌートリアとイタチしか獲れていない。
「うーん、今年もアライグマ獲れずじまいかなぁ」
俺はそんな予想を立てながら、ある野池に仕掛けた箱罠の様子を確かめるため、見回りに来ていた。
その池は、去年俺がヌートリアを獲り尽くした池である。
今年は池のすぐそこではなく、堤防から山につながるところに仕掛けていた。
仕掛けた場所の近くに停めた車から箱罠をちらっと見ると、箱罠の扉が閉じていた。
「んんんっ!?」
俺は思わず目を疑った。
なにせ、今日の今日まで、鶏肉を餌に使ってまったくかかっていなかったのだ。
今日は閉まってるとなれば、そら驚くだろうさ。
「一体何が入ってやがる?」
俺は車から降り箱罠に近づく。
箱罠の中には、イタチよりも一回り大きい動物が入っていた。
体毛、大きさ、威嚇のときの声、もしやこいつは。
「テン!」
俺は瞬時に答えを導き出す。
だが、間違って屠った場合が怖いので、一応スマホを取り出し特徴を確認する。
何度確かめても、箱罠の中にいる動物は、テンの特徴を全て満たしていた。
「ま、まさか人生で1度でもテンの生きた姿を見れるとは……」
俺は目の前の事実に、少し呆けてしまう。
はっ!と気を取り直した俺は、箱罠を池まで持っていく。
+++++++
「よし」
処理のルーティンを終え、テンを車の中にあるRVボックスに入れる。
「……テンって2人以上で獲りに行くな、と言われるくらい毛皮が高値つくって言われてるが、実際どうなんだろうか」
そんなことを思いつつ、箱罠を仕掛けなおす。
「うーんしかし、たった1頭しかいないからなぁ。
なめし失敗したが最後なんだよなぁ、怖いなぁ」
毛皮が高く売れるとなれば、なめし加工を必然しなければならない。
しかしなめしの仕方を知らない以上、さっき獲れたテンで初めてのなめしをやるわけにはいかない。
「ヌートリアの毛皮で何度も試してからにしよう、そうしよう」
仕掛けなおしが終わった俺は、そう決意して車に戻り、現場から去る。
「にしても、本当にテンが。信じられん」
俺は未だ余韻に浸りながら、テンが獲れた箱罠が見回り最後の罠だったので、家に戻った。




