No.19
2021年シーズン終了の際の話です。
-2022年1月-
「今日で最後、だな」
そう思いつつ見回りに出発する。
1月に諸般の事情で異動になり県外に転勤が決まった。
そのため今日が最後の狩猟ができる日である。
「さぁ、最後の見回りに行ってくるか」
私は、そう言って車に乗り込む。
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1ヶ所目。
「結局、ここでは何も獲れなかったな」
狩猟期間中、普段仕掛けている池に行く途中にも池があることが判明した。
最初に行ったときに獣が歩く音がしたため、何か獲れるかもと期待してそこに設置した。
しかし、結局魚・鶏肉・ザリガニ、どんなエサにしても箱罠に何かが入ることはなかった。
「ここも、撒き餌を盗るやつの正体は結局わからずじまいだな。
来年またリベンジして、今度こそは正体を明かしてやる」
俺は箱罠を回収した後、2ヶ所目の池に向かう。
2ヶ所目に行き、何事もなく回収し終えて3ヶ所目。
最後の回収である。
「ここは結局猫しかかからなかったな。
この辺りでアライグマの目撃報告があったのだが。
ここも来年仕掛けてみてどうなるか見ることとしよう」
3ヶ所目も結局目的の獲物は獲れずじまい。
全部の箱罠を回収し、家に戻る。
「クソ、こんなはずではなかったんだ」
俺は考え事をしながら、箱罠を順次回収していく。
そして見事にスカだった箱罠を全部回収し終え、家に帰り箱罠を倉庫に収める。
「結局アライグマは獲れずじまいだったな。
来年はここに帰って、狩猟期間全期間を使ってアライグマを捕獲する。
そのためには、まず箱罠の数を増やさないとな。
いかんせん、4台では無理がありすぎるのが今回の狩猟期間でわかったからな」
家に帰り、今期の反省をする。
結局、免許取得後4年目となる今期は、ヌートリアが8頭という結果となった。
今期で、ヌートリアの巣窟となっている池のひとつから、ヌートリアを駆逐した。
しかし、罠が4つしかないせいで、捕獲のペースがどうしても上がらない。
「しかし、転勤できない事情があるにも関わらず、今年から会社都合での遠隔地へ強制的に転勤が決まってしまった。
そのせいで強制的に狩猟を終了せざるを得なった。
おまけに無期限だから事実上帰れない。
しかも寮生活になるから狩猟なんて不可能。
このままだと、また狩猟ができず、捕獲技術が上がらないまま免許更新を迎えてしまう。
しかし業務命令となると、それに絶対に逆らえない。
クソが、ならどんな手を使ってでも、俺はここに戻ってやる……!」
今期の猟果が記載された狩猟者登録証を眺めつつ、思う。
来期に向けての対策、そして現状の打開に向けて、俺は策を練る。
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それから数日後、転勤を間近に控えたある日。
「すみません」
県庁に俺は来ていた。
「はい」
「狩猟者登録証を返納しにきました」
今期の猟を終えるために。
「はい、確かに受け取りました」
「ありがとうございました」
狩猟者登録証を返納して、すぐに車に戻る。
そして、家に戻って引っ越しの準備をしながら、現状を変える方法を考えていた。




