NO.16
注意
今回は、動物をさばくシーンが描写されています。
苦手な方はブラウザバックしてください。
-2021年12月-
「さて、準備しますか」
俺は数日前に獲れたヌートリアをさばくための道具を用意する。
さばく場所は風呂場。
なぜ風呂場かって?
周囲が住宅街なので、万が一さばいてるところを誰かが見て通報されてはたまったものではないのでね。
まずは桐の1枚板。
まな板使うのでは?と思われたかもしれない。
残念ながらヌートリア以上の大きさの獣になると、そもそも市販されているまな板には絶対に全体が載らないのだ。
だからあらかじめまな板によく使われる材料である桐の一枚板を猟期前に買っておいたのだ。
それから包丁と調理用はさみ。
さばく専用のナイフ?
そんなもの用意できる金はない。
そして包丁と板を洗うための洗剤とスポンジに調理用ゴム手袋。
それらを用意した後、いよいよさばく、前に狩猟読本を読む。
今まで獲れたことがなく、獲れた時に見ればいいと考えていたので、今確かめる。
獣類のさばく手順を、じっくりと。
俺は手順を何度も確かめた後、再び風呂場に戻る。
最初に、包丁・まな板代わりの桐の板、そして調理はさみを洗う。
それから食品用のゴム手袋をつけ、ヌートリアを袋から取り出して板の上に置く。
「果たして、うまくいくだろうか?
まぁ十中八九失敗するだろうな」
そう思いつつ、俺はヌートリアの左右の後ろ脚をつかみ、限界まで開く。
肛門の場所を探し、そこにハサミを入れようとすると、突然肛門からうん……が出てくる。
「うぉい!!!
いきなり出てくんなよ!!!!
出てくるなんて聞いてないぞ!!!!!!」
俺は驚きつつも、なんとかまな板(笑)の外にうん……を出し、ヌートリアを置き直す。
「えぇいくそ。もう一度だ」
俺はもう一度肛門に狙いを定め、はさみを入れる。
頭に向かって刃を入れると、どんどん刃が動き、切れていく。
そして、はらわたが出ると、草食動物特有の青臭いにおいが鼻まで届く。
「あぁ、草食動物だな」
当たり前の感想を抱きつつ、刃を入れていく。
それから、先ほど切った切れ目から後ろ脚、前脚に向かって刃を入れる。
足まで切れ込みを入れて、次は包丁に持ち替える。
4本の足の周りを切り、先ほど足に向かって入れた切れ込みと合わせる。
最後に、首のあたりとしっぽの付け根の皮、を1周ぐるっとハサミに持ち替え切る。
「よし、ここまでは成功」
俺は必要箇所に切れ込みを入れ終わり、ハサミを置く。
「イノシシはでかさと皮下脂肪があるから無理だが、ヌートリアはシカと同じ草食動物で、皮下脂肪はほとんどないはず。
なら皮をそぐ為のナイフも不要、このままカワハギの皮を剝ぐように皮をむくこともできるはずだ。
いっちょやってみるか」
俺は、右後ろ脚に入れた切れ込みを指先でつかみ、思いっきり引っ張る。
すると、本当にカワハギの皮を剥ぐような感じで、皮と身が剥がれる。
「いける!!」
しかしそう思ったのもつかの間、そのまま勢いで剥がすと、肉が薄皮に引っ張られて皮と一緒に剥がれていく。
「ちくしょーめぇ!!」
俺は思わず叫んだ。
しかしいくら叫んでも、肉が皮についてしまったのは事実。
俺は皮のほうについた肉を取り除きつつ、皮を剥いでいく。
しっぽ周りの皮をはぎ、頭に向かって皮を剥いだところで、俺は気づく。
「あ、内臓が破れる」
頭に向かって剥いだ皮を引っ張ると、それにつられて内臓が引っ張られて内臓、具体的には腸が裂けるように力がかかることがここで発覚した。
「どうすっかな?」
俺は一旦立ち止まり、少し考える。
そして、決断する。
「先に内臓を出そう」
まず、肋骨と肋骨の間をハサミで喉元まで切る。
切ったら意を決し、俺は内臓をまさぐる。
背骨側まで手を回して骨と内臓の間の薄皮を手で剥がす。
その後、内臓を背中側から一気に引っ張り、内臓を引っ張り出す。
食道と肛門を切り取り、内臓を取り出す。
「膀胱と胆嚢を潰さず出せたな。
じゃあ遠慮なく皮を剥ぐか」
俺は再び皮を剥ぐ。
前脚まで来て、俺は一旦背中側から皮を剥ぐのをやめ、前脚の皮を剥ぐ。
前脚も後ろ脚と同じことになったが、同じように処置して皮を剥ぐ。
そんな苦労をしつつ、なんとかして皮を剥ぎ終える。
「つ、次は肉ごとに分解か」
皮を剥ぐので、俺はすでに疲れ切っっていた。
しかし、解体はこれからの各部位への分解こそが本番だ。
なので、息を整えた後、部位ごとに肉を分離する作業に入る。
まずは右後ろ脚の分離にかかる。
後ろ脚を動かし、後ろ脚の肉の範囲を確かめる。
まずは骨盤から刃を入れる。
そのまま股関節まで切り、一旦刃を抜く。
次に背中側から刃を入れ、股関節周りの筋を切っていく。
股関節が見えるくらいまで切った後、ぐりぐり後ろ脚を回して関節を破壊する。
「よし、まずは右脚を取れた。次は左を」
次に左後ろ脚の切り離しにかかる。
右脚と同様にして左脚も分離する。
「よし、いいかんじに左も取れた。次は前脚か」
俺は右前脚の分離にとりかかる。
先ほど同様にまずは前脚の肉がどこまでかを確かめる。
しかし、俺はあることに気づいた。
「ん?前脚と背骨をつなぐ関節はいったい?」
人間でいうところの肩の関節にあたる関節を必死に探す。
しかし、いくら探してもそれが見当たらない。
「うーん。
こうなったらとりあえず脚の付け根に向かって刃を入れて切っていくか」
俺はとりあえず、前脚の周りの薄皮を切っていく。
そして、前脚と背骨の付け根と思われるところまで刃を進める。
しかし、それでもはっきりとした関節の感触が伝わらない。
「一思いに切るか」
俺は刃こぼれを覚悟で、一気に前脚と背骨を切り離すように切る。
すると、さしたる抵抗なく、前脚が背骨から離れる。
「え??ガチで関節ないのか???」
俺は切り離された前脚を手に持ちつつ思う。
しかし、骨が当たる感触もなく前脚が離れたのは事実。
受け入れるしかない。
「なんか釈然としないが、しょうがない。
次は左前脚を切り離そう」
俺はさきほどと同じようにして、左前脚を切り離す。
「背の肉……アバラ肉……労力に対しての得られるものが少ないな。
やめた、ここまでにしよう」
俺は前脚を切り離したところで、解体を終える。
「あ、皮……なめし出来ないから捨てるしかない。
できるようになったら考えよう。たぶんまた獲れるし、そのときに。
内臓も使いどころがないから処分しよう」
俺は切り離した肉をフリーザーバッグに入れながら決めていく。
肉を入れ終えた後、骨と皮、そして内臓をゴム手袋と一緒に大きいビニル袋に入れる。
口をしばってゴミ袋に入れた後、板とハサミ、包丁を洗剤で洗う。
板を風呂場に置いておいて、ハサミと包丁を収める。
「さて、ヌートリア肉が一体どんな味なのか、楽しみだな」
俺はつぶやきつつ、冷凍庫にヌートリア肉を入れる。
寄生虫を殺すために、24時間冷凍庫に放置するためあえて今日は食べない。
「しかし、どう調理するかね?
ジビエ肉だからな、スーパーで売ってる肉と同じ調理でおいしく食えるとは考えにくい。
まずは王道の唐揚げとかかね?」
俺は調理法を思考しつつ、次の猟に備えたあと、寝の谷へと落ちていく。
ここ1年半、自身に紆余曲折・急転直下な事態が発生していました。
そのためしばらく投稿ができませんでした。
状況が落ち着いてきたので、また投稿できると思います。




