No.15
-2021年12月-
捕獲失敗事件から数日が経った深夜。
あの直後に車が壊れてしまったため、バイクを使って仕掛けた罠の見回りに行く。
もしかすると今回は獲れているかもしれない。
そんな直感が脳裏をよぎったため、狩猟道具・餌・獲れた獲物を入れても余裕があるくらいの大きさのリュックサックを背負って出発する。
早速近くの池に行き、罠の状況を確認する。
箱罠のある方向を照らすと、罠の扉が閉じているのが見える。
「これ、また脱出されてるというオチじゃ」
俺はそんなことを考えつつ箱罠に近寄る。
近寄りつつ箱罠のほうを照らすと、中には何かが入っているのが見える。
「まさか」
俺は淡い期待しながら箱罠に近づく。
箱罠の目の前まで到達し、全体を照らすと、そこにはヌートリアが入っていた。
「……」
俺はしばらく呆然する。
そして目の前にある事実を正確に認識した。
俺はヌートリアの捕獲に成功したという事実を。
「まさか直感が本当に当たるとは」
俺は事実を認識した後、それでも何度も箱罠の中に入っている獲物を確認する。
何度見てもヌートリアが中に入っている。
確認した後、俺は箱罠の中に入っているヌートリアを締める。
ヌートリアは外来生物法で特定外来生物に指定されている。
特定外来生物は生きたままの移動、運搬が禁じられている。
違反すれば懲役刑ないし罰金刑になる。
そのため、捕獲して持って帰る場合は現地で締めて持って帰るしかない。
それに従って俺は現地でヌートリアを締める。
ヌートリアを締めた後、死んだことを何度も確認してから手袋をし、持ってきていた袋に入れる。
獲れた獲物を袋に入れてリュックサックに入れた後、俺は再度箱罠の中に餌を入れ、周囲に撒き餌を撒いた後に箱罠をセットして後にする。
バイクに乗って家に帰り、獲れたヌートリアを一旦風呂場に置いておく。
深夜なので明日さばこうと考えてのことだ。
一通り道具を収め終わった後、狩猟者登録票を机の上に置く。
その裏に、年月、捕獲場所などを記入していく。
記入後、俺は感慨にふけった。
狩猟免許を取得して4年、更新時に診断書を書いてくれる医者を必死になって探して更新して、獲物の習性を研究して、その甲斐がやっと実ったのだ。
人生で最初に狩猟で捕獲した獲物が狩猟免許を取得するきっかけとなった動物とは、これもなにかの因縁だろうか。
そんなことを考えながら、俺は明日のさばくという段階に備え眠りについた。
 




