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─3─血色のつづき ~ホラーしない奴等~

折角なので、更新しときます。


 赤錆に染まった大きな鉄門の前に、3人の学ランを着た学生が立っていた。いや、正確に言えば、金髪のヤンキーと白キャップを被った茶髪のチャラ男と男装したJKなのだが………。


 と、まだ夕刻と陽の光が辺りを赤く染めるなか、門を正面に右端の金髪ヤンキーが、口火をきった。


「………うわぁー、やっぱし雰囲気あんなぁ………話にゃ、聞いてたけどよー」


 心なしか、日が傾き影の差し始めた世界に、金髪ヤンキーの声は木霊こだますようだ。


「ねえ、っちゃん! やっぱり止めよーよ、デス。明日でもいいのデスヨ! ………たぶん」


 金髪ヤンキーに続けて、男装JKが何かの制止を呼び掛ける。胸元で握られた二つの拳が、恐怖心を物語っていた。

 そんな彼女に、相変わらず正面を向きながら、八っちゃんこと、金髪ヤンキーがこたえる。


「つってもよ、我らが参謀は中に居るぜ?」

「うっそ! ………デス。確認したのデス?」

「ん、………ああ。家に取り次いだんだけどよ、まだ帰らないんだと………つまり、俺と別れてから、まだここを出ちゃい無いってことよ」


 金髪ヤンキー、本名を八守やがみ 鏡八キョウヤと名乗る彼は、つい先刻一時間もない頃に、おかしな手紙を受け取ったと言う鏡八ひきいる地元ヤンキー集団の参謀を務めて………務めることになってしまった少年、高野宇治たかのうじ 蓮鵺レンヤと帰途を共にしていた。


 鏡八自身も、奇妙なその手紙を見せては貰ったものの、ドッキリ的なだろう、と判断したのだった。

 鏡八は、参謀こと蓮鵺レンヤとは、今現在3人が立つこの場所、10年以上前に廃園と化した遊園地の廃墟、その表門の方で裏門に向かう彼と、数刻前に別れたのだ。


 だがしかし、鏡八に二名を加えたこの三人がトンボ返りする羽目となったのが現状である。


「んで、お前ら二人も家のポストに?」

「──デス!」

「そうなりますね」


 白キャップは、ここでようやく初めて口を開く。案外綺麗な言葉使いだった………のは、まぁ良いとして、三人共に参謀レンヤと同様の赤い手紙を受け取っていたのだ。



「──日が暮れちまう! 早く蓮鵺レンヤ探して、帰ろうぜ!」

「同感です。急ぎましょう」

「本当に行くデス? ショっ、翔ちゃん離れないでよ、…デスヨ?」

「解っています。怖がりの小鳥ちゃん!」


 真面目な顔でキラーン、と言い切った白キャップこと、柚乃ゆうの ショウに、鏡八は、ため息をつく。


「ああー………、翔のキザ台詞は今に始まったことじゃネェしな………」

「何か、言いましたか? |八(、)っちゃん!」

「ッヌア! や、止めんか! お前に呼ばれると背筋がサミーんだよ!」

「|八(、)っちゃん! |八(、)ぁっチャン! ヤァっっ──」

「だかーら、やめろっって、言ってんだろーうがぁー!」


 おかしな言い合いが始まってしまった。まぁ、気を許しあった二人としては、いつものじゃれ合いのようなものだ。とは言え、今の空気に合わぬ行動に違いはない。

それに耐えかねたか、男装JKが間に入る。


「ねぇ、二人とも入るなら早くしよ! デス!」


「「………………」」


 二人の男は、思った。「一番入りたくなさそうにしてたのは、お前じゃねぇの?」、と。


 ああ、言い忘れていたが、男装JKは、学ラン同様、支給品のネイビィー色キャップを被った身長145㎝ちょいのちみっこで、高校1年生である。

 

 名を、ことり・アーシャ・リンネ という。よくある………よくはないのか、まあ取り合えずロシアンハーフだ。因みに、鈴音リンネは日本の、アーシャがロシアの家名である。外との交流が少ないこのド田舎では、かなり異質な存在として、彼女リンネ一家はとらえられるのが当たり前。

 しかしながら、ことりが初めに友としたのが、不良集団の参謀こと蓮鵺レンヤだったのが効を成したのか、周りをたむろすのは千種万別の染め毛ばかり。


 銀髪で、日本人の母を持つためか元々日本人向けの顔立ちだった彼女は、すぐに目立たなくなった。

 いや、むしろ、不良集団幹部と行動するものだから、別の意味で目立っていたのは言うまでもないだろう。


 そんなこんなで、仲の良い三人は、友人レンヤを探すために、各々の光源を片手に持って、陽はまだ傾き始めただけだと言うのに、妙に影の広がる廃遊園地へと門の隙間から滑り込んだ。


 金髪は、己のスマートフォンを、残りは、あらかじめコンビニで購入した小型ライトを片手にしている。


「おお、こっわ! 暗いし寂れてるしよ、おめーらほんっとにはぐれんなよ!」

「分かっているのデス! サー!」

「………で……どこを探すのです? まさか、全てのアトラクションを廻るわけでは、………無いですよね?」

「え! 違うの………デス?」

「「…………」」

「いっ、いやぁ~。知ってたのですよ? デスデス」

「まぁ、それは何でも良いのですが、取り合えず地図でも調達しないことには、………でしょ?」

「だぁーな」


 そんな会話と言うより相談のもと、三人は表門近くの『案内所・information』と消えかけた白字で書かれた建物へと向かう。


「これ、どうやって入るんですかね………」


 と、先を歩いていた白キャップこと、柚乃ゆうの ショウが、疑問を口にした。他人に話すと言うよりは、自分に問いかけるように。

 それに対して、二人は口を挟む。


「けーびの人を呼ぶ……デス!」

「いや、おめーアホかい。窓割るしかねぇんじゃね? まっ、取り合えずドアとロック状態を確かめてからだな」

「ですねぇー」

「阿呆は、酷いんデスよ! っちゃん! それに、窓割るのは犯罪です、なのデス!」


 一人会話に追い付けていないことに、何時もの事ながらと他二人はため息をつく。


「小鳥ちゃん。ここに不法侵入してる時点で私たちは法を犯しているのですよ。今頃ですし、それにアレを見てくださいよ」

「デスゥ?」


 ショウの指摘に、二人が視線をそちらに向けると、『案内所』の建造物に付いた窓は場所によっては割れているようだ。それも、人工的に何か硬い鈍器で殴られたように窓枠や壁に擦れるような跡が付いている。


 もう既に、先人によって手が付けられているのか、どのドアにも鍵は掛かっておらず、室内にあった案内用パンフレットや

その他諸々の書類系も簡単に判断のつくものは、すぐに入手できた。


 さて、どうするか、と三人は、片手で頬を扇ぎながら次の目的地を絞ると言う方針で、またもや相談を始めた。


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