未来の見える男
どうも。未来が見える男です。イェーイ!この度、僕の日常が、変わった作家を通して小説になりました。パチパチパチ。ん?「お前誰だよ。」って?だから、未来が見える男です。みんなからは見えません。別に、死んだからとかいう訳じゃないんだよ。生まれてきたときから二十代の男だったから。いつもは、皆さんを天界から見ています。天界っていうほど高くないんだけど。まあ、四百メートルぐらいかな?高さは自由に変えられるから。それじゃあ、ここからは作家さんとの合同執筆だからよろしく!え?姿が見えないんじゃなかったのかって?それは、ひ・み・つ、さ。
「見てご覧。あそこのアパートの三階にいる彼は今、慌てている。」
「確かに。(これは筆者である私です。)」
「寝坊したんだな。まあ、これは彼の枕元にある目覚まし時計…」
「いいデザインだね。」
「だろう?あれは手作りなのだけれど、それを作った男がその日は調子が悪かったんだ。まあ、奥さんと喧嘩していてね。それで、しっかり組み立てなかったのが、今日彼に災難をもたらしたと言う訳なのだよ。」
「そんな余談も君は分かるのか。」
「ああ。まあ、僕からしたら世の中なんてほとんど余談だけどね。ほら、玄関を出た。彼はテレビ局に向かうぞ。」
「え。有名な俳優とか!?」
「違うよ。ディレクターだ。主に、気象関係のデータを出している。」
「へぇ。そうなんだ。じゃあ、僕はこの人がテレビ局に着くまで寝てよう。」
「着いたら起こしてあげるよ。」
「着いたよ。」
「あれ、さっきの人は?」
「今、急いで情報を集めている。」
「そうか。」
「それよりも、この人。見てみ。」
「あ、気象予報士の!」
「そう。天原さん。」
「うわっ。めちゃくちゃ怒っている。」
「情報の収集が遅れているからね。」
「あ。さっきの人、なんかの書類を渡しているね。」
「ああ。これで、無事完了という訳だ。」
「へぇー。あ、あそこのスクリーンに映っている!」
天気予報
「はい。こちら、雲一つない快晴です。えー、今日は風も弱いため、洗濯物などを干すには最高のお天気ですね。最高気温は25度。最低気温は18度となっています。以上、天原でした。」
「よし、次行くぞ!」
「うん。」
「ほら。この会社の四階にいるあの人、この後、この人は部下をクビにするんだ。」
「クビに!?」
「ほら。呼び出したぞ。」
「本当だ。ものすごい剣幕で怒鳴られている…。」
「このクビにされる人はさ、いまいち営業で結果を残せなかったんだよ。」
「そうだったんだ…。」
「でも、エレベーターでは、絶対に開くボタンを押したり、道に迷っている人がいたりしたら絶対に教えたりする、いいやつなんだよ。」
「あの人の方があんたより年上だけどね。」
「でも独身だぞ。」
「そうなんだ。」
「まあそうだな。」彼はどこか幸せそうににやけていた。
「どうしたの?」
「いや、別に。」
「ほら、あそこ見てみろ。あそこの家で一人暮らししている彼女は、いつも着ていく服を決めるのに時間がかかるんだ。」
「でも結構美人。」
「モデルだからな。」
「そうなんだ…。あ、あの人さっきの天原さんのテレビ見てるじゃん。」
「確かに…。」
「次はこのカップルだ。」
「うわ、ラブラブだね。」
「そうだな。ほら、喫茶店に入るぞ。」
「本当だ。何を頼むか悩んでいるね。」
「フレンチトーストと、特大チョコケーキだ。」
「え。あ、そうか。君は未来が見えるからね。」
「そうだ。この特大チョコケーキは、彼女の方がねだって、渋々注文することになるんだが、彼氏の方が思ったとおり、ちょっとしか食べられずに、彼女はギブアップする。彼は、いつもなら半分ぐらい残して店を出るが、今日は違う。」
「なんで?」
「昨日の夜、同じサークルの友達が、「食べ物を残すのは、なんか失礼な気がする。」って言って、周りがみんなギブアップしたステーキを完食したからだ。」
「へぇー。だから、自分もちゃんと完食しようとしているんだ。」
「そういうこと。」
「ほら、あそこを歩いているのがさっき、あの人をクビにした部長。」
「ああ。いいやつをクビにした。」
「そうそう。見てろよ。一瞬だからな。」
「あ!すられた!」
「そう。でも彼は財布を捕られたことに気づいていないんだ。」
「あちゃー。」
「しかも、今日は貯めたへそくりでゴルフクラブを買おうとしていたからかなりの痛手だな。」
「うわー。」
「な、おもしろいだろ。」
「面白いって…。」
「いろんな人のいろんな出来事を見られるんだよ。僕は。」
「確かに。楽しいだろうね。」
「あ、さっきのクビにされた人だ。」
「落ち込んでいるよな。」
「うん。結構落ち込んでいるね。ん?さっきのカップル!さっき服を選んでた人だ!」
「何が起こると思う?」
「何!?」
「3…2…1…」
「0!」その時、強い風が吹いた。
「あ、あの人の帽子が!ああ。あの彼氏が拾うのか…って掴み損ねた!うわっ!さっきのクビにされた人の所に行く!」
「見ろ。二人の人間がお互いに一目惚れする瞬間だぞ。」
「あ。」
「あなたの…ですか?」
「え、ええ。」
「お、お綺麗ですね。」
「い、いえ。あなたこそ、かっこいいですね。」
「僕は…そんな…。」
「いいか?最初に見た人が寝坊したから、慌てたせいでデータを間違えた。そして天原さんは風が弱いと予報してしまった。そしてそれを見ていたあの美人モデルは、帽子を被る事に決めてしまった。そしてあの彼氏は、サークル仲間のかっこいい姿を見たことによって、特大チョコケーキを完食した。だが、そのせいでお腹がもたれて、いつものように身体が俊敏に動かず、帽子を掴み損ねた。そしてあのいいやつは、クビになったせいでいつもより早く家に帰ったら、途中で美人モデルの帽子を拾って、勢いでそのままゴールイン!」
「ご、ゴールイン!?」
「ああ。あのいいやつは、再就職して、そこでどんどん出世するんだ。もちろん、モデルの方もすぐに売れ始める。」
「うわー。奇跡だ。」
「奇跡、なのか?」
「偶然が重なって…。」
「いいか?未来が見える男は、奇跡が生まれるまでの過程を楽しめるんだよ。」
「君を主人公にして小説を書きたいな。」
「え?いいの?」
「はい。じゃあなんか喋って。」私はボイスレコーダーの録音ボタンを押した。
「えー。どうも。未来が見える男です。イェーイ!この度、僕の日常が、変わった作家を通して小説になりました。パチパチパチ。ん?「お前誰だよ。」って?だから、未来が見える男です。みんなからは見えません。別に、死んだからとかいう訳じゃないんだよ。生まれてきたときから二十代の男だったから。いつもは、皆さんを天界から見ています。天界っていうほど高くないんだけど。まあ、四百メートルぐらいかな?高さは自由に変えられるから。それじゃあ、ここからは作家さんとの合同執筆だからよろしく!え?姿が見えないんじゃなかったのかって?それは、ひ・み・つ、さ。」
「はい、オッケー。台本とか用意してた?」
「そんな訳無いじゃん。」
「あ。君未来が見えるんだよね?あれ?」
隣に、彼の姿は無かった。
「君の未来も楽しみにしてるよ。」
僕の耳のそばに、なにかがいた。だが、そのなにかはもう見えなかった。だが僕は確かにその声が聞こえた。もしかしたら、壮大な夢だったんじゃないのか。そう思って僕はボイスレコーダーの再生ボタンを押してみた。
「どうも。未来が見える男です。イェーイ!」