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僕が好きだっていうなら誠意を見せろ  作者: ぽち
僕が好きだっていうなら誠意を見せろ
1/45

一話 日常だっていうなら穏やかに過ごさせろ

 大体2000~3000字です。

 初回のみ朝8時。二話から夜9時更新予定。

 見渡す限り、真っ白で何もない空間。ここには、僕と友人の霧雨(きりさめ) 雷牙(らいが)、そして自分を女神だと告げた女性しかいない。

 女性がどこか面倒くさそうに言った。

 ……女神というのだから女性なのだ、多分。


「単刀直入に言いましょう。これから、世界を救う『英雄』として、異世界へ転移してもらいます」


 あやふやな物言いなのは、女神の姿がただの光の球だからだ。

 そういう僕も、……ついでに雷牙も、似たような球でしかない。傍から見れば球が三つふわふわと浮いているだけなのだろう。でも、何故か僕にはその一つが雷牙だと判別できた。


 こんなナリだけど、僕たちはれっきとした人間だ。いや、だった(・・・)という方が適当かもしれない。

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 僕は、ほんの数十分前までの――もう粉々に砕かれてしまったけど――日常へと思いを馳せた。





「勇人! 今日も一緒にゾンハンやろうぜ!」


 月曜の放課後。授業も終わり、開放感に身を任せながら伸びをしていると、雷牙に声をかけられた。

 ゾンハンとはゾンビ・ハンターの略で、協力型アクションゲームだ。単純に言ってしまえば、街に溢れかえったゾンビを、プレイヤーは特殊部隊所属のハンターとなり狩る。ただそれだけのゲーム。


 一応特筆すべき点もあって、プレイヤーが使い捨ての兵隊でしかないということ。普通のゲームならばHPが0になってもアイテムとか魔法で生き返るのだけれど、ゾンハンは違う。死んだらゾンビになってキャラロスト。

 そしてすぐに新キャラクターを作って再出撃。かつてのマイキャラクターを殺して装備を奪い、ロストした分の補填をする。


 ――すごく悪趣味なゲームだ。


 にも関わらず、何故だか結構なヒットを飛ばしている。VR……だったかな、一年ほど前に仮想現実でプレイできる体感型ゲーム生まれ、それに市場が圧巻されているにも関わらずだ。

 昨今のゲームにないシビアさと、協力プレイの盛り上がりがその理由らしい。

 キャラロストの次に作った新キャラは当然、以前のキャラクターに比べ貧弱だ。だけど装備を取り戻すためには戦いを挑まなければならない。そんなとき、他のプレイヤーがいれば戦いが楽になるから……だとか。


「今日も? たまには他の人とプレイしなよ」


 僕は一言でいえばぼっちだ。

 友達がいない。話し相手も――雷牙が一方的に話しかけてくるけど――ほとんどいない。


 別にいじめられているわけではない。

 むしろ、クラスのみんなはよくしてくれていると思う。

 単に、自分から関わる気がないだけだ。入学早々のクラス割で、全く自分から話しかけたりしなかったらこうなった。


 最初のころは面倒を見ようと律儀な人が構ってくれていた。でも、そろそろ夏休みが近い今では、もう空気のようなものだ。周囲の誰も僕を気にしなくなった。

 正直、その方がありがたい。


 僕の同級生に対する無関心は今に始まったことではない。小学生のころからの筋金入りなのだ。


 では、雷牙が僕にとって特別なのかというとそうではない。

 出来ることなら放っておいてほしいのだけれど、毎日彼から話しかけてくるのだ。

 あまりにしつこいのでつい受け答えをしてしまってから、ずるずるとこの関係が続いている。


「お前とやるのが楽しいんだよ。家帰ったら、すぐゲーム取ってくるから待ってろよ!」


 こんな性分の僕が、協力型ゲームを自分からやると思うだろうか?

 答えは簡単、こいつに押し付けられたのだ。


「お前とプレイしたいから」


 の一言で一万円以上するハードと五千円程度のソフトを手渡されたときは


「こいつ頭おかしいんじゃないか」


 と思ってしまった。

 何故雷牙がここまで僕に執着するかはわからない。

 彼は、成績優秀スポーツ万能、コミュニケーション能力◎なクラスの中心人物。まるで物語のキャラクターのような完璧超人だ。その上、顔もいい。

 ホストや芸能人といった流麗な顔立ちではない。人好きのする笑顔と、軽く日焼けした肌。如何にも好青年です! って主張しているタイプ。


 当然のことながらモテる。

 校内だけに留まらず、他校から女生徒が告白しにやって来たのだから相当である。


 これだけ目立つのならば同性からのやっかみを受けそうなものだが、持ち前のコミュニケーション能力でカバーしてしまっている。一度だけ、ガラの悪い上級生に詰め寄られたものの難なくあしらい――それでいて相手は笑顔になっていた――追い返したのを目撃したことがある。


 僕に拘らずとも遊び相手は大勢いるだろうに。

 何度そういっても彼は譲らなかった。馬の耳に念仏。


 一応言っておくと、僕と雷牙は幼馴染だ。

 でも、別段、仲が良かったわけではない。それどころか、高校へ入るまで話したこともなかったのだ。

 同学年の、同じ区域の、同性。それだけだった。


「じゃ、帰るか!」


 雷牙に促され、僕はほとんど中身の入っていないスカスカのカバンを手に教室を出た。


 ――僕は一人で帰りたいんだけどな。


 すでに諦めの境地に達している。どうせ言っても間違いなく無視されるだろう。





 校門を出たところで、仁王立ちをしている少女が目に入った。隣町の、名門校の制服だった。

 僕の方を睨み付け――いや、間違いなく視線は雷牙を向いている――つかつかと歩み寄る。


「霧雨くん! どうして昨日来てくれなかったの!?」


 そしてがなり立てた。


「別に、お前と約束した記憶はない」

「『一緒に映画を見に行く』って言ったじゃない!」

「面白そうだな、って答えただけだ。誰もそんなことは言ってない」


 一刀両断である。

 その物言いに少女の顔が憤怒に染まった。

 彼女は、勝気そうなのが僕の好みではないけれど、間違いなく美少女だと思う。でも、勿体ないことに今は、その表情を大きく歪ませ崩してしまっていた。


 ――またか。


 内心苦笑する。

 理由はわからないが、前述した雷牙のコミュニケーション能力は、彼に恋する女性相手では全く役に立たない。

 ふとした一言が、意を添わぬ方向に受け取られ、勘違いされてしまう。似たような出来事は枚挙にいとまがない。

 そのあたりまで物語の登場人物っぽい。修羅場は日常茶飯事だ。


 幸いなことに、他校の女生徒相手だけである。日々を過ごす学び舎が殺伐してしまっては、落ち着いて過ごすことが出来ない。

 恐らく、学内の女生徒同士で牽制し合っている結果ではないかと僕は思う。もしかしたら先生まで参戦しているかもしれない。


 ――益々雷牙とは関わり合いになりたくない。


「先に帰っているよ」


 白熱する二人に声をかけると、僕は野次馬の輪から逃れた。

 自分で書いといてなんだけどゾンハンすげーつまんなさそう。

 特に物語にはかかわりません。

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