○ 水の章 副官の目的Ⅳ
○ 大陸を破壊する獣
(レイナ)
「えええ~!?」
「え、エサ!?」
「私が!?亀の!?」
レイナは驚きの表情を浮かべ、ジタバタと手を動かしている。
突然訳の判らない頼みを受け、理解が追い付かない様だ。
(悠)
「ちょっと待った~~~!!!」
(エリアス)
「お、おお!ど、どうした!?突然!?」
(悠)
「エリアスさん!」
「ちょっと朝から!いやいや早朝から!」
「こ~んな日が高いうちから!!」
「流石にそれはないんじゃあないですか!?」
(エリアス)
「あ、朝から?何故時間が!?」
「時間は別に関係ないのだが…。」
(悠)
「ハアハア!」
「いいえ!ダメでしょうよ!」
「絶対ダメでしょう!いや俺はいいですけど!」
「ハアハア!」
「だって亀でしょう!?エサでしょう!?」
「ハアハア!」
「つまりはあれでしょう!?」
「アッチの話でしょう!?」
「亀がアレで、エサはアレでしょう~!?」
「つまりはアレがアレのアレなんでしょ!?」
「ハア~!興奮してきた~!」
悠は顔を真っ赤にしながら、息を切らし。
興奮を抑えられない。
彼の中で、亀と言えばアレで。
そのエサとなれば最早アレなのだ。
(リナ)
「それ以上喋るな。」
(マリエ)
「ちょんぎるわよ。」
一人で暴走する悠をリナとマリエが制止する。
リナの剣は首筋に。
マリエの植物の刃は股間に向けられている。
(悠)
「く~!これはこれでたまんね~!」
「これもアレがアレじゃね~か!」
「リナは若さ故に遠慮があって首!」
「これはこれでアリだね!」
「恥じらいがあっていいよね!」
「そしてマリエさんは、ハアハア…!」
「流石はお姉さま!直にそこに来ますか!」
「く~!たまらない!」
「直ですか!来ますか!?直に来ますか~!」
彼の思考は、最早全てがそっちの方向に向けられている。
下手な刺激はアレがアレの為、逆効果にしかならない様だ。
(エリアス)
「お、お主らは…。本当に…。」
「一体どういう場面なら
真面目に話ができるのだ…。」
エリアスは頭を押さえ、
ガックリと肩を落とした。
(レイナ)
「ええ、待ってて下さい。」
「諸悪の根源を、今私が滅菌してきます!」
レイナは無言で悠の顔面に刃を向ける。
(悠)
「待った~!待て待て待て待て!」
「レイナはダメ!ダメダメダメダメ!」
「レイナはホントにやっちゃうから!」
「この娘は本当にやっちゃうから!」
「ホントに刺しちゃうから!」
「誰か止めて!ホント止めて止めて!」
「マジだから!あの娘顔がマジだから!」
「おい誰だ!後ろから押さえてんの誰!?」
「マジやばい!
死んじゃう死んじゃう死んじゃう~!」
目を光らせたレイナが
ツカツカと歩み寄ってくる。
悠は涙を流しながら必死に抵抗する。
しかしリナとマリエに体を押さえつけられ、
逃げ出すことはできそうにない。
(悠)
「いや~!死んじゃう~!」
「らめ~!」
(マリエ)
「貴方いつも悪ふざけするから、
一回くらい死んだ方がいいわよ。」
(リナ)
「そうよね。バカは死ななきゃ治らない。」
「有名な話じゃない。」
(レイナ)
「貴方は世を蝕む雑菌です。」
「我が刃を持って滅菌します!」
レイナが杖の柄を向け走り出した。
(悠)
「やだ~!ホントに刺さっちゃう~!」
「アレな事になっちゃう~!!」
刃が悠の目の前まで迫った瞬間。
バシャ~ン!!
ディープインパクトの面々は、頭上から降ってきた水球により、ずぶ濡れになっていた。
(エリアス)
「いい加減に頭を冷やさんか!」
「この戯けどもが!」
蔑ろにされていたエリアスが割って入ったのだ。
(リナ)
「ちっ…。惜しい…。」
(マリエ)
「もう少しで始末できたのに。」
(レイナ)
「雑菌を滅却しそこねたか。」
ずぶ濡れになりながらも、殺害への執念を見せ続ける3人。
(悠)
『本気だった。今の絶対本気だったよ!』
悠は女性陣のダークサイドを垣間見た気がした。
(エリアス)
「さて…。下らん戯れは終わりだ!」
「全くお主らは横道ばかりそれおって!」
「いいな!話を戻すぞ!」
エリアスは再び腕を組み。
全員の正面に立つ。
(エリアス)
「フッフッフッ…。」
「心して見るがよい。」
「私が言う亀とはな…。」
「これの事だ!!!」
エリアスはおもむろに
ポケットから何かを取りだし。
高々と掲げあげた。
(悠)
「な、なんだ!?」
「そ、それは!?」
(リナ)
「し、萎びた…?」
(レイナ)
「か、亀の…?」
(マリエ)
「お、置物…?」
そう。その手に握られていたのは、すっかり萎びてしまった亀の置物。
色はすっかり泥により茶色を帯び。
干された甲羅だけが吊るされている。
(リナ)
「プププ~。なにそれきったな~。」
「そんなのポケット入れちゃってバッチ~イ!」
(悠)
「本当!勿体ぶって出しちゃって~!」
「そんはバッチイの出しちゃって恥ずかしい!」
「わ~!えんがちょ~!」
二人は汚れた甲羅を指差し笑っている。
しかし、一方で他の二人は…。
(マリエ)
「何かしらアレ…。
何だか強い力を帯びているわね?」
(レイナ)
「はい。やはりそうですよね。」
「魔力でしょうか?かなり強い力です。」
「あの甲羅に内在しているのが分かりますね。」
(悠・リナ)
「………。」
(リナ)
「なによアレ…。本当は実際に凄いもんなの?」
「萎びた亀のミイラじゃないの?」
「私全然分かんないんだけど…。」
(悠)
「俺もだ。マジできったね~甲羅にしか見えん」
「何だ?骨董品的な価値でもあんのか?」
「二人は有能な目利きだったんか?」
悠とリナは顔を近付けコソコソと確認する。
二人にはただの汚れた甲羅にしか見えないのだ。
(エリアス)
「うむ!そっちの二人は流石だな!」
「コレに見ただけで反応するとは!」
「魔力感知能力が高い!」
「流石は私が見込んだ事はあるな!」
エリアスは、レイナとマリエを見つめ。
賛辞を贈る。
(エリアス)
「そして!そっちの二人!」
ビクッと体を震わせ。
悠とリナはゆっくりとエリアスを見つめる。
(エリアス)
「これだけ高濃度の魔力を帯びておるのに!」
「何も感じんとはどういうことだ!」
「修行が足らん!もっと精進せい!」
「だからお主らはダメなのだ!」
「本当にダメだな!ダメだ!ダメだ!」
「本当にダメだ!」
二人は自らの不甲斐なさを叱責され、
肩を落としてしょんぼりと落ち込んだ。
(悠)
『だって本当に何も感じないもん。』
『てか、ダメって言い過ぎ。酷くない?』
『ただの臭そうな亀の甲羅にしか見えないし。』
『お。臭そうな亀。これまた卑猥ワードだね。』
『もしかして今日ちょっと冴えてる?』
(リナ)
『何よ偉そうに。ヒステリー起こしちゃって。』
『ダメって言う人がダメなのよ。』
『アンタだってもうすぐ
その亀みたいに萎びてくるじゃない。』
『若さを妬んで見苦しいのよ。』
『この年増おばさんめ!』
二人は落ち込んでいる様には見える。
しかし、結局身に染みてはいない様だ。
(エリアス)
「さて、この甲羅だが…。」
「そちらの二人が気づいたように。」
「ある程度強い魔力を備えておる。」
「言ってしまえば、中に封じておるのは…。」
「私と…。アイシスの魔力だ。」
(悠)
「エリアスさんと帝さんの!?」
「そりゃあ、また何とも贅沢な顔ぶれですね。」
(マリエ)
「つまり。それだけ重要な物…。」
「という事になるのでしょうね。」
(リナ)
「あのきったない亀がね~。」
「その辺の土産屋さんにあっても、
私は絶対買わないけどな~。」
(レイナ)
「リ、リナちゃん。また怒られますよ。」
「あれは本当に何か凄いものみたいですし。」
(エリアス)
「…まだ言うか。まあよい。」
「察しの通り。古びた甲羅ではあるが。」
「これは我々にとって、とても重要な物だ。」
「この中には、ある《化け物》が眠っておる。」
「それこそ、現在のステラの大陸間勢力図。」
「それを一変してしまう程のな。」
(悠)
「た、大陸間の勢力図を一変させる!?」
「その汚い甲羅にそんな恐ろしいものが!?」
「一体何が…。凄い兵器か何かですか!?」
(エリアス)
「ふむ。兵器の類いとはちと違うな。」
「この中におるのは強力な力を持った生物だ。」
(マリエ)
「封じられた生物か…。何だか厄介そうね。」
「そろそろ勿体ぶらず、何がいるのか
はっきり教えていただけないかしら?」
(エリアス)
「うむ。そうじゃの。」
「この甲羅の中には、過去の大戦中。」
「その余りに強大な力によって、
各大陸を破壊尽くした化け物が眠っておる。」
「その強大な力を危険視した、各大陸の帝たち が、総力を持ってしても倒しきれず。」
「何とか封印までは
漕ぎ着けたと言われる化け物。」
「その名を《精獣》。」
「そう。この甲羅はその精獣を封じた触媒。」
「逆に言えば精獣を復活させる切り札なのだ。」
(悠)
「大陸を破壊し尽くした化け物!?」
「帝でも倒せなかった!?」
「何だよそれ!兵器より質が悪いじゃないか!」
「そしてその甲羅は
その化け物を復活させる切り札だって!?」
「いやいやいや!いいんですか!?」
「そんなヤバイ生き物復活させて!」
「過去の帝達は、大陸を守るために
ソイツを封印したハズなんでしょ!?」
「復活させちまったら、
また大陸が大変な事になるんじゃ!」
(エリアス)
「うむ。その通りじゃ。」
「だから我々も、現状では
万全な状態で使うつもりはない。」
「恐らく完全な状態で復活させては…。」
「お主の言う通り、
手がつけられなく可能性が高いからな。」
(マリエ)
「現状万全な状態では使わない。」
「では、何のためにその触媒を所有し。」
「魔力を与えているのかしら?」
(エリアス)
「そうじゃの。言ってしまえば《抑止力》だ。」
「他の大陸の帝。そして《堕天者達》へのな。」
(レイナ)
「抑止力?」
「使わないのに?」
「つまり持っていること自体に意味があると?」
(エリアス)
「うむ。その通りだ。」
「現在のステラは、我々が望んでいた様に、
大きな争いもなく一定の均衡を維持しておる。」
「しかしそれも、
何時まで維持できるかは分からん。」
「実際に現在の教義を好まない者は多数おる。」 「堕天者だけでなく、大陸の有力者にもな。」
「いつ何処の大陸で、大規模なクーデターが起き ても不思議ではないのだ。」
「それこそ、我々が起こした様なな…。」
「それ位に、今の均衡は
危ういバランスの上で保たれておる。」
「今現時点で崩れ去ってもおかしくない程な。」
「だからこその《抑止力》だ。」
「クーデターにより、ステラに再び
争いの火蓋が切って落とされた時。」
「相手の侵略を少しでも躊躇させたい。」
「《精獣》の存在は正にうってつけなのだ。」
「恐らく他の帝達も同じ考えのはず…。」
「どこも躍起になって、
《触媒》を探している事だろう。」
「もしかしたら、
既に見つけた所もあるだろうな。」
「そうすれば、万が一にも。」
「クーデターの勢いがこちら側に飛び火した際、 反対勢力鎮圧の為の時間も作れる。」
「悪いことなど一つもないのだ。」
「そして何よりも、現在の抵抗勢力である。」
「堕天者達の接近を牽制する事もできる。」
「精獣が手の上にあることが分かれば。」
「奴等とて、そう簡単には、
こちらに手出しができなくなるはず…。」
「あくまで、我々の狙いはこの二点だ。」
「他の大陸の破壊や。」
「戦争の再開を望んでいる訳ではない。」
「あくまでも牽制のため。抑止のため。」
「まあ、現時点では。だがな…。」
(悠)
「……。」
「抑止力。か…。」
「使う為ではなく。《持っている事》。」
「それによって他の大陸や堕天者を牽制する。」
「あくまで大陸を守る為の最後の手段。」
「何だか何処の世界でも、平和を目指しているは ずなのに。行き着く所は変わらないものだな。」
(エリアス)
「…?」
「どういう意味だ?」
(マリエ)
「まあ、こちらの話になるけれど。」
「私達も同じ様な話を、何度も何度も
飽きる位に見聞きした事があるのよ。」
「確かに大きな争いは無かったわ。」
「現時点ではね。」
「ただ、抑止の為に作られた物は。」
「貴女方と同じ様に。どう考えても
平和とはかけ離れた物だったけれどね。」
エリアスはその言葉を聞き、
不思議そうに顔を歪め俯いていた。
(エリアス)
「そうか…。お主らが言っているもの。」
「一体何を指すのかは分からないが…。」
「それも正に。核心をついておるな。」
「争わない為に争いの武器を作る。」
「それはどう考えても矛盾しておるよ。」
「真の平和を望むなら、進んで放棄すべきだ。」
「争いに関わる。その全てをな。」
「だが…。」
(マリエ)
「分かっているわよ。」
「私達もそこまで子供じゃないもの。」
「大切な物を守りたいなら。」
「守るための準備は必要になる。」
「それこそ手を取り合って、
同時に全てを放棄する日でも来ない限りはね。」
「その日までは如何に相手より優位に立つか。」
「大陸を守るためには、
その一点に尽力するしかない。」
「《抑止力》。結構じゃない。」
「私は現実的で悪くないと思うわよ?」
(悠)
『そうなのかな…。』
『《抑止力》。確かに現実的だ。』
『けど…。心の何処かで…。』
『こっちの世界くらいは、そういう矛盾とか。』
『あって欲しくないな…。って。』
『思っちまうんだよな。俺が子供なのかな。』
何処の世界も変わらない。
何から何まで。
現実的な利益を優先して世界は回っている。
当たり前の事なのだが、悠は何処か寂しい気持ちを抱かずにはいられなかった。
(エリアス)
「さて…。それでだ。」
「先程から話しておる。」
「亀へのエサの件なのだが。」
エリアスは、パンっと手を叩き。
話を仕切り直し始めた。
(悠)
「ああ、そうだそうだ。エサの話ね。」
「レイナをその亀さんのエサにするって…。」
「まさか復活の生け贄として
食べさせるつもりとかじゃ~…。」
(レイナ)
「ええ!?嫌です~!!」
「こんなに早く最期を迎えたくありません~!」
「まだ幼稚園の先生にもなってないし!」
「結婚もしてないのに~!」
「それは断固拒否です~!」
レイナは涙を浮かべ、
身を小さくして震えている。
『あ、結婚願望はあるんだな。』
皆はレイナの新しい一面を見た気がしていた。
(エリアス)
「またお主は余計なことを!」
「何処まで話を茶化せば気がすむのだ!」
エリアスは悠を再び一喝する。
(エリアス)
「魔力だ!魔力に決まっているだろう!」
「魔法使いには、精獣復活のため…。」
「少しばかり魔力を提供して欲しいのだ!」
(悠)
「へ…?魔力?そんなんでいいの?」
(エリアス)
「そうだ!何度も言わすな!」
「魔力を供給してくれればよい!」
「さっきも言っただろうが!」
「それをお主が余計な事をグダグダぬかすから、
どんどんややこしくなっとるのだ!」
(悠)
「ええ!?俺のせいなの!?」
(エリアス)
「当たり前だ!」
(レイナ)
「あ、はい!だ、大丈夫です!」
「ま、魔力でいいのでしたら…。」
「別に構いません…。」
「けど、どうして私が?」
(エリアス)
「うむ。今回我々が見つけたこの触媒。」
「調べて分かったのだが、封印を解くには必要な 手順がある様なのだ。」
(レイナ)
「手順…。ですか?」
(エリアス)
「うむ。既にその殆どは我々が解決したのだが、 最後の所で行き詰まった。」
「どうやら最終的に触媒を完成させるには、
魔力量がずば抜けておる。」
「異なった3人の人間による、
魔力の注入が必要な様なのだ。」
「これがないと触媒が完成しない。」
(悠)
「3人の人間!?」
「既にエリアスさんと帝のは注入済み。」
「つまりその3人目に!?」
(エリアス)
「そうだ!その誇るべき3人目!」
「それに魔法使い!」
「お主を選びたいと言う訳だ!」
エリアスはビシッとポーズを決め、真っ直ぐにレイナを指差した。
(エリアス)
「これまでのバトルを見るに。」
「お主の魔力量は桁外れであった!」
「恐らく触媒に注入するに値する
量であることには間違いがない!」
「だから我々はお主を選んだのじゃ!」
「どうじゃ!?やってはくれぬか!?」
「これは大変に名誉な事なんだぞ!?」
エリアスはズイッと身を乗りだし、触媒をレイナの顔に近づける。
そのあまりの勢いに、
レイナは怯え、たじろいでしまっていた。
(マリエ)
「ちょっといいかしら?」
(エリアス)
「お?どうした?」
(マリエ)
「いえ、ちょっとした疑問なんだけど…。」
「どうしてレイナちゃんなのしら?」
「単純に魔力量が多い人物なら、
この大陸にも居そうなものでしょう?」
「それこそイアンさんとか…。」
(悠)
「確かにそうだよな。」
「イアンさんだってかなりの魔力量だ。」
「まあ、レイナの魔力の量も凄いけど。」
「イアンさんだって、
同じ位はありそうなもんだよな。」
(エリアス)
「ふむ。そのとおりだ。」
「こちらも始めはそのつもりであった。」
「だから手練れと思われる者は、
片っ端から試したのだ。だが…。」
(マリエ)
「だが?」
(エリアス)
「ダメであった。」
「触媒が受け付けんのだ。」
「いくら魔力を注いでも何の反応もなかった。」
「だから我々は、ある仮説を立てたのだ。」
(レイナ)
「仮説…。ですか?」
(エリアス)
「ああ、そうだ。」
「精獣復活の鍵は《3人》の魔力注入。」
「恐らくこの人数が鍵ではないか。とな。」
(悠)
「人数が鍵?つまりどういう事ですか?」
(エリアス)
「恐らく過去の帝達は…。」
「精獣達の強大な力を恐れ、簡単には封印を解除 できぬ様に策を講じたのだ。」
「恐らく我が水の大陸の場合…。」
「魔力量が多い3人の中に、
1人は属性が違うものを混ぜねばならん。」
「そういう条件をつけて封じたのではないか。」
「それが現在の我々の仮説なのだ。」
(マリエ)
「なるほど。同じ大陸には、基本的には同じ属性 の人間しかいない。」
「強者であれば尚更のこと。」
「けど、レイナちゃんの属性って…。」
(レイナ)
「え?あれ?おっかしいな~…。」
レイナはわざとらしく視線を逸らせる。
(エリアス)
「ハッハッハッ!気付かぬと思ったか!」
「お主が水に加え、炎の属性を有している事など 当の昔にお見通しじゃよ!」
(悠)
「マジかよ…。」
「確かこの大会じゃ何も使ってねぇのに…。」
(マリエ)
「何もかもお見通しか。」
「まあ、あのレベルの相手だもの。」
「手の内なんて最初からバレバレなのね。」
(レイナ)
「何だか悔しいです~。」
「それなら、あの人には始めから
出し惜しみしなければ良かったです~。」
(エリアス)
「ハッハッハッ!まあ良いではないか!」
「必死に隠しておるのは好感がもてたぞ!」
「まあ、例え属性を変えても
結果は変わらんがな!」
「しかしてお主らよ。どうする?」
「やってくれぬか?この頼み?」
エリアスは再び前屈みになり、わくわくしながら
回答を仰いでいる。
その表情は子供の様に無邪気に写る。
(悠)
「う~ん。急に言われてもな~。」
「確かに面白そうだけど…。すいません。」
「ちょっと待って貰っていいですか?」
悠は皆に手招きをし、打ち合わせを促した。
(悠)
「どうしようか?」
「個人的には精獣に興味はあるけど…。」
(リナ)
「え~。私は見たいな~。」
「きっと恐竜みたいなで~っかいのだよ!」
「一回見てみたいじゃん!」
「特に断る理由もないんだし。」
(マリエ)
「デメリットがあるとすれば…。」
「この頼みに寄って、私達が水の大陸寄りの
クランと判断されることかしら?」
「でも誰が触媒の封印を解けるのか…。」
「普通そんな機密は外部には漏らさないわね。」
(レイナ)
「確かに重要な機密ですよね。」
「まあ、普通に考えたら私みたいな外部の人間が 携わるとも考えないでしょうし…。」
(悠)
「う~ん。つまりは…。」
(マリエ)
「ここで水の大陸に恩を売っておくのも…。」
(リナ)
「うん!悪くないね!」
(レイナ)
「ですね~!」
全員の腹は決まった。
皆で軽く、悪い笑顔を浮かべる。
(悠)
『これを機会に、水の大陸での権威を得る!』
皆の腹の内は同じであったのだ。
(エリアス)
「うむ。その様子じゃ決まった様だの。」
エリアスがおもむろに声をかける。
(悠)
「ええ。満場一致です。」
「受けましょう!この頼み!」
「完全に好奇心だけですけどね!」
『権威も欲しいけどね!』
(エリアス)
「それで構わないのだよ。」
「すまぬな。本当に助かる。」
エリアスは一瞬表情を崩した。
緊張していたのだろう。
肩の荷が降りたかの様だ。
(エリアス)
「では、続きを話そう。」
「触媒に魔力を注入する者。」
「その中にお主がいるのは、
実は此方にもちょっとしたリスクがある。」
(レイナ)
「私だと?リ、リスクがですか?」
(エリアス)
「ああ、そうだ。」
「これからお主にも魔力を注入して貰う。」
「すると一度、精獣は出現するだろう。」
「条件を揃えた事により、
その姿を見せるはずだ。」
「そこまでは良い。」
(悠)
「一応出てくる事は出てくるでしょうね?」
「でもそこに何のリスクが?」
「まさか誰彼構わず暴れまわるとか…。」
(エリアス)
「いや、それはない。」
「精獣は召喚に携わった者には従順なはず。」
「少なくとも危害は加えないだろう。」
「だがな、これもまだ仮説なのだが。」
「調査によると、
触媒は魔力の《味》を覚える様なのだ。」
「触媒からすると魔力には、
一人一人個性がある様でな。」
「我々には理解できん話だが…。」
「つまり、次回の召喚には、
恐らく今回と同じ3人が揃う必要がある。」
「そうすると必然的にだな…。」
「魔法使い。お主がいない時には、
精獣を召喚できない事になる。」
「我々が言うリスクとはそれだ。」
「今後お主の協力なくして、恐らく
精獣の召喚は成り立たんだろう。」
(マリエ)
「なるほど。」
「召喚には、大陸以外の人間の協力が条件。」
「そして例え、一度召喚出来たとしても、
次に必要な時には出来ない可能性もある。」
「それこそ本当に必要な時の方が。」
「協力者次第の為に召喚しにくい訳か。」
「昔の帝達が、どれほど精獣を恐れたのか。」
「嫌という程伝わるシステムな訳ね。」
(エリアス)
「うむ。正にその通り!」
「お主は本当に物わかりがいいの~。」
(リナ)
「え?何々?どういう事?」
(悠)
「バカ!俺に聞くな!」
「ここは分かったフリして頷いとけ!」
「それが賢く生きるというもんなんだよ!」
(マリエ)
「貴方はバカだから全部聞こえてるけどね。」
(レイナ)
「アハハ~。私も分かりません~。」
(エリアス)
「まあ、つまりはな。」
「本当に必要な時とは、戦争の時なのだ。」
「大規模広範囲を迅速に殲滅する。」
「精獣とはその為に産み出されたものだ。」
「だが、こと戦争となれば。」
「基本的には大陸同士の争いになる。」
「これまでの歴史がそう物語っておるしの。」
「つまりは大陸以外の第三者が、喜び勇んで
力を貸すとは考えられないのだ。」
「要するに肝心な時には使えない。」
「一番必要な時には使えないのだ。」
「そうなる様に、過去の帝は厳重に封印を施した
と言う訳じゃな。」
(悠)
「は~。なるほど。」
「マリエさんはそれをあの会話の中で
全部理解したって訳ね~。」
「へぇ~。すっご~い。かっくい~。」
(マリエ)
「何故かしら。
何だか凄くバカにされた気になるわね。」
(リナ)
「いやいや!本当に凄いよ!」
「私半分以上理解してないから!」
(レイナ)
「リナちゃん…。」
「それはエリアスさんをバカにしている気が…」
(エリアス)
「お主らは…。まあ、よい。」
「とにかく協力して貰える事には感謝する。」
「では、そろそろ実際に
魔力を注いでみてはくれぬか?」
エリアスはそっと甲羅を地面に置く。
すると確かに、甲羅からは禍々しい気配が漏れているのが分かった。
(レイナ)
「わ、分かりました!」
「や、やってみます!」
レイナは甲羅に手をかざし、意識を集中する。
その瞬間。
凄まじい閃光と共に、突風が巻き起こった。
(悠)
「うわ!?なんだこれ!?」
「光と。か、風が!」
(リナ)
「凄い気配!これが精獣の!?」
(マリエ)
「風が!大気が震えている!」
「まさかこれ程とは!」
(エリアス)
「やはり私達の考えに間違いはなかったか!」
「さあ、出るぞ!古の怪物!」
「水流の化身!」
「エンシェント・タートルが!!!」
光と風が最大限に高まった。
次の瞬間。
大粒の水しぶきの中から、その獣は姿を現した。
(エンシェント・タートル)
「ふがふが…。」
「な、なんじゃ~。いきなり…。」
「まだわしゃあ…。」
「朝飯も喰うとらんに…。」
「…。あれ?喰うたか?喰うたかもしれん…。」
「いや、喰うてないよな…。」
「あれ?まあ、喰うとこか…。」
「腹は減ったしな…。」
「あれ?ここどこ?あの世?」
(悠)
「え?あ?あれが?」
(リナ)
「せ、精獣?」
(レイナ)
「エンシェント・タートル…。さん?」
(マリエ)
「み、みたい…。よね…。」
四人はゆっくりとエリアスに視線を向ける。
エリアスは俯いたまま、ワナワナと小刻みに震えている。
そして一度大きく息を吸い込み。叫んだ。
(エリアス)
「なんじゃあ~~!!!!」
「このシワッシワな亀は~~!!!!」
そう。そこに立っていたのは。
体長およそ140センチメートル位の。
白髪で眉毛が伸び、髭もまばらに伸びた。
年老いた亀。そのものであった。
召喚に応じた
エンシェント・タートル…。
…おじいちゃん。
(エンシェント・タートル)
「へぇっくし!!」
「は~、ズルズル。」
その実力は果たして…。
最初の方から、ちょっとずつ書き直してます。
全然進みませんが…。




