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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
89/114

○水の章 エリアス・ペール インターバル

まだ読んで下さる方がいるのか、不安で仕方ないです。

 ○ 身の程


 現在5分のインターバル中。

 ディープインパクトは技場隅に円陣を組み。

 早速の作戦会議。

 のはずだが…。


 (マザー)

 「…。」


 時間は限られている。直ぐにでも打ちあわせを。

 それは誰もが理解しているはず。

 しかし、マザーは何も発せず。

 ただ、ふよふよと黙って漂っている。


 (悠)

 『沈黙ってさ。殴られるより痛い。』

 『そんな経験。きっと皆にもあるよね。』

 『そう!今がそれ!』

 『この怒ってますアピールってさ!』

 『やるやつ絶対に性格悪いよね!』

 『本人には言えないけどさ!』

 『だって怒ってるからね!

 『油注いじゃうからね!』

 『紅蓮の炎に抱かれて眠っちゃうもんね!』

 『怖いよね!火には気を付けようね!』


 そんな空気に耐えかて、マリエがコソコソと話しかけてくる。


 (マリエ)

 「ほら、やっぱり怒ってるわよ?」

 「どうするのよ?あの光ってる人。」

 「完全にヘソを曲げちゃってるわよ。」

 「光の玉だから、ヘソの位地分かんないけど。」


 「まあ、そりゃあさ…。」

 「バトルの前にした約束を、ほとんど何一つ守らなかった…。」

 「いや、完全に無視してやりたい放題やった。私たちが悪いに決まっているんだけど…。」  


 扇で口を隠しながら、二人にヒソヒソと声をかける。

 悠とレイナも腕を組み、ウンウンと唸ることしかできない。

 既にクランの全員が、マザーがご立腹になっている理由を理解していたのだ。


 そう、それはバトルが開始する前。

 マザーと交わした遠い日の約束…。


 (レイナ)

 「ええ~と~。確か何個かありましたよね?」

 「先ずは…。陣形について。」

 (悠)

 「陣形はマジシャンズ・スクエアを維持する。」

 「確かそういう話だったはず…。」

 (マリエ)

 「いやいや。これは無理よ。」

 「だってリナちゃんが急に覚醒したみたいに強くなって、私たちのフォローが追いつかなかったもの。」

 「これは守らなかったんじゃなくて、守れなかったが正しいわ。」

 「だからセーフ。これはセーフの範囲よ。」

 (レイナ)

 「リナちゃんに合わせられないなら、三人だけでも連携を組み、攻撃をすること」

 「確かそういう話もありましたよね?」

 (悠)

 「リナが速すぎて攻撃する暇がなかった。はい論破。」

 (マリエ)

 「非の打ち所もないわね。こんな完璧な論破は始めてみたわ。」

 (レイナ)

 『え?え?ホントに?』

 『流石にそれはちょっと厳しいです~…。』


 (マリエ)

 「ええと…。他は何だったかしら。」

 「確か、レイナちゃんの炎系の魔法と、回復効果のある魔法については、極めて重大な情報である。 情報の漏洩防止のために絶対に使用しないこと。」 

 (悠)

 「守ってる!これ完全に守ってるよな!!」

 (レイナ)

 「そもそも攻撃に参加すらしていない状態なので、守る守らない以前の問題なのかと…。」

 (マリエ)

 「ダメよレイナちゃん。怯んではダメ。」

 「弱味を見せると漬け込まれるわ。」

 「以下に自分に非がないのか。」

 「ここをアピールした上で徐々に論点を摩り替える。」

 「詐欺師の常套手段じゃない。」

 「きちんと覚えておきなさい。」

 (レイナ)

 『私別に詐欺師になりたい訳じゃ…。』


 (悠)

 「なんだよ!全然俺たち悪くないじゃん!」

 「マザーが機嫌悪いのは、きっと腹痛かなんかだろこれ!?」

 「あ~、ビビって損した!」

 (マリエ)

 「おかしいわね…。」

 「冷静に分析してみると、思った以上に悪い所が見つからなかったわ。」

 「それどころか、非の打ち所がないじゃない。」

 「やっぱり私って凄いのね。」

 「私以上に完璧な人間なんて、きっと世の中には存在しないんだわ。」

 (レイナ) 

 『違います~!そもそもお二人の人格が破綻してます~!』

 『自分に非がない事を前提に進めてるのが問題なんです~!』

 『そもそも私たちはこのバトルで何もしていません~!』

 『マザーは、それを怒ってるんです~!』

 

 レイナが必死に瞳で訴えかけるが、既に都合のいい結論に達した二人は、全く意に介さない。

 そして安心しきった悠は、自ら地雷に足を踏み入れた。


 (悠)

 「よう!マザー!元気してる!?」

 「俺は先ず先ずかな!」

 「ちょっと雰囲気悪くて息苦しいけどね!」


 「それでさ!マザーに提案があるんだけど!悪くない話だと思うんだよね!俺珍しく頭使ったし?」

 (マザー)

 「…。」

 (悠)

 「あれあれ?なんかご機嫌ナナメ?」

 「もしかして腹痛?ポンポン痛いの?」

 「ちょっとやめてよね~!こんな大事な時に!」

 「分かる?今凄い大事な話するんだよ?」

 「お腹痛いいた~い。じゃ困るの。」

 「ね?ワカル?」

 (マザー) 

 「……。」

 (悠) 

 「も~。何だか空気悪いよ~。」  

 「楽しく行こうよ!1回きりの人生だよ!」

 「楽しまないと損だって!!」

 (マザー)

 「………。」

 (悠)

 「んも~!ホントに聞いてる?」 

 「友人からのアドバイスは聞くものだよ?」

 「ましてや大事な約束は破らない。」

 「こんな素敵な友人。そうはいないよ?」

 (マザー) 

 「…………。」

 (悠)

 「あ~…。まあ、いいか。」

 「そういう日もあるか。仕方ないよね!」

 「そしたらさ、言っちゃうけどさ!」

 「提案なんだけど…。」


 「エリアスさんに一矢報いる為には、やっぱり四人での連携攻撃が必要不可欠だろ!?」

 「そう考えるとさ!やっぱりリナも不可欠じゃん!」

 「だからさ!もうこの際、怪我をしたリナの治療をレイナに頼もうぜ!」

 「多少情報が漏れんのは…。」

 「まあ、しゃーなしだよな!」

 (マザー)

 「パーなんですか貴方は??」 


 グサリ。

 マザーの言葉は悠の胸に突き刺さった。


 (マザー)

 「バカだとは思ってはいましたが。」

 「まさかこれ程とは…。」

 (悠)

 「ちょっ…。何もそこまで…。」

 (マザー)

 「私の!今日の!いえ!これ迄の!全ての時間を返して下さい!」

 「いえ、これ迄貴方と関わった全ての記憶を消して下さい!」

 「私はもう、貴方と正式に他人になりたい!」

 「今はそんな気分ですよ!」


 マザーからは、とてつもなく辛辣な言葉が返ってきた。

 当然だが、やはり全く話を聞かない彼らの姿勢に、強い憤りを感じていたのだ。


 (悠)

 「ちょっ…。や、やだなぁ…。」

 「そんな寂しいこと言わないでよ…。」

 「俺たちも反省してるんだからさ…。」

 「ね?マザーさんったら…。」


 悠は引きつった笑顔を浮かべ場をなごまそうとする。


 (マザー)

 「……。」


 しかし、マザーは無反応を貫いている。

 先程当人たちが話していた通り。

 マザーが与えてくれた助言は、ほぼ全て反古にされているのだ。

 マザーの怒りは最もだ。


 それが分かるからこそ。

 誰も言い返すことが出来ない。

 

 場には再び重苦しい空気が包む。

 三人は再び、コソコソと話を始める。


 (悠)

 「やっぱりそうだよね。うん。当たり前だよ。」

 (マリエ)

 「まあ、世の中そんな都合よくいかないわよ。」

 「初めから素直に反省しなさいよ。このバカ。」

 (レイナ) 

 『マリエさんは飽くまで、自分は悪くないスタンスを貫くつもりみたいです~…。』

 『流石にちょっと恐ろしいです~…。』


 場の空気は悪くなる一方だ…。

 悠は思わずため息をつき、下を向いて反省する。


 『そうだよな。現状を把握して、その上で誰よりもクランの事を考えているのはマザーなんだ。

 そんなマザーのアドバイスを無視したんだから。 そりゃもっと反省せにゃならんよな…。』


 反省し、項垂れる悠をマザーは横目で確認する。

 そして、居たたまれなくなり、結局はマザーが悠に詰め寄るのだった。


 (マザー)  

 「ホンっとに!!ホンっト~に!!!」  

 「そうやって反省することになるなら!」

 「どうして貴方たちは、人のアドバイスを最初から聞かないんですか!!?」

 「私に何か恨みでもあるんですか!?」

 (悠)

 「いやいや!ないない!恨みなんてない!」

 「ただ今回はリナの成長が著しかったから…。」

 (マザー)

 「確かに!リナさんの成長は目を見張るものがありました!」

 「ですが何度も述べたように!」

 「クランの連携にそぐわない物は!」

 「どれ程の力であっても必要ありません!」


 「結局はリナさんの単騎特攻!!」

 「あっさり撃沈!!」

 「緊急会議!!」

 「連携取るためにはどうするか!!」


 「相手が何度も待ってくれるからいいものを!」

 「何度目ですかこれは!?」

 「人の話は聞かないで!」

 「ずっと同じことの繰り返しじゃないですか!」


 (悠)

 「い、いや~、それは面目ねぇ。ホントに面目ねぇよ。」

 「でもさ、あの覚醒したリナだったら、一人でもどうにか出来るかもと思っちまったんだ。」

 「ホントに面目ねぇや。」


 悠は頭の後ろに手を回し、ペコペコと頭を下げた。反省はしているようだが、どうも動きに真剣さが欠けて見える。


 (マリエ)

 「というよりか、単にあれ程の速度じゃ、やっぱり私たちが完璧にフォローしきるなんて無理だったわよ。」

 「下手をしたら、あいつじゃなくて、仲間のリナちゃんを誤射してしまうもの。」

 「とてもじゃないけど、私も悠さんも、仲間の若い娘が、成長を遂げようとしている最中に足を引っ張る。」

 「そんな不格好な真似。恥ずかしくて出来やしないわよ。」


 マリエが悠をフォローするように口を割った。

 悠はその隣でウンウンと。腕を組ながら頷いていた。やはり若干の言い分を、彼らはまだ胸の内に残しているのだ。


 (マザー)

 「不格好って…。そんな事を気にしている余裕が何処にありますか!?」

 「相手はあのエリアス・ペールですよ!?」

 「Cランク一人でどうにか出来るはずがない!」

 「フォローが難しいなら、いつものスピードに戻させて連携をする!」

 「そう指示していたハズです!」

 「それなのに、暗にリナさんの単騎突撃を容認して!」

 「二人はリナさんの足を引っ張りたくないから黙って見ていた?」

 「その結果がこれですよ!」


 マザーは倒れているリナを示す。

 リナは変わらず、苦しそうに項垂れている。


 (マザー)

 「いいですか!?私が一番怒っているのはその部分なんですよ!?」

 「年上のお二人が冷静な判断をしないでどうするんですか!?」

 「ダメなものはダメ!」 

 「クランの連携を第一に考える!」

 「そうやってクランを纏めるのがお二人の役目でしょう!?」


 (悠)

 「分かってるよぉ…。」

 「だからごめんって言ってるじゃんか…。」

 (マザー)

 「分かってるなら実行して下さい!」

 「知っているだけではダメなんです!理解して実践してください!」

 (悠)  

 「分かったってば…。なんかホントに母ちゃんみたいな口調になってるし…。」

 (マザー)

 「誰のせいですか!?私は…。」

 (悠)

 「けどさ…。スピードだけなら…。」

 「スピードだけなら可能性あったじゃんか。」

 (マザー)

 「はい?」

 (悠)

 「いや、だからスピードだけなら…。」

 「エリアスさんを上回る可能性があるかなって…。」

 「リナを見ていて感じたんだよ…。」

 「アイツのあの様子を見ていて…。」

 「アイツなら、なんかスゲェ事をやっちまうんじゃないかって…。」

 「スピードだけなら、エリアスさんを上回って、一撃を…。」

 「いや、もしかしたら…。それよりもスゲェ結果を…。残してしまうんじゃないかって…。」

 

 悠はその時を思い出したのか、目を光らせながら熱く語り始めた。

 

 (悠)

 「マザーは思わなかったのか!?」

 「アイツやってくれそうだったじゃん!?」

 「帝の副官相手に!一発喰らわせそうだった!」

 「スゲーじゃん!あと一歩まで行ってたじゃんか!!」

 「一発でも入れられたら、俺たちにもやれるかもって思えただろ!?」

 「だからさ!邪魔にだけは成りたくなかったんだよ!!」

 「アイツが何かを成し遂げる瞬間を!」

 「邪魔しちゃ悪いって思ったんだよ!!」


 悠の言葉からは、彼の真摯な思いが伝わってくる。

 しかし、その話を聞いていたマザーは、驚いた様子で口を開いた。

 

 (マザー)

 「まさか…。本気で?」

 「本気でそんなことを?」

 (悠)

 「なんだよ!?何が変なんだよ!?」

 (マザー)

 「本気で…?期待をした…?」

 「だから邪魔立てしたくなかった…?」

 「本気でそう思ったから?」

 「手を…。出さなかった?」

 (悠)

 「そうだよ!それの何が問題なんだよ!」

 (マザー)

 「貴方は…。何を言っているんですか?」

 「何を?本気で言っているんですか…?」

 「まさかエリアス様から…。」

 「リナさん一人で?一本取れると…?」

 「確かにスピードには、目を見張りました…。」

 「けれど…。バカな…。バカげている…。」

 「本気でそう考えていたなんて…。」

 「何を愚かな…。どれ程の思い違いを…。」


 マザーは、信じられないといった様子でボソボソと呟いていた。

 その発言にムッときたのか、マリエがマザーに詰め寄った。


 (マリエ)

 「ちょっと!?聞き捨てならないわね!」  

 「現にリナちゃんはスゴかったじゃない!」

 「スピードでは、確実にあの女を上回っていた!」

 「防がれたとはいえ、アイツの能力の一部を暴き、速さで追い詰めて背後をとった。」

 「期待するには十分な内容だったし、それはあの女も認めていたじゃない。」

 「確かに私たちはCランクだけれど、これからの経験次第では、ランクを伸ばす可能性だってある。」

 「リナちゃんはこの戦いで、彼女のポテンシャルの高さを示した。」

 「私たちが彼女の成長に期待し、それを通じて自分の成長に期待することが、そんなにおかしい事かしら?」

 「それとも私たちが、自分の可能性を信じてはいけないって言うの?」

 「そんなの私。絶対に容認できないわよ。」


 マリエの声色から、彼女の沸き上がる怒りの強さを感じとることが出来る。

 プライドの高い彼女は、自分が絶対に越えられない人間がいるという発言を、すんなりと受け入れることが出来ないようだ。

 怒りに満ちた表情で、マリエはマザーを睨み付ける。


 (マザー)

 「…。」

 マザーは少しばかり黙り混んでいた。

 頭の中で、皆にどう説明すべきか悩んだのだろう。そして、マザーは隠し事は一切せず、真実を告げる事を決意する。


 「マリエさん。正直に話しましょう。」

 「貴方の言う事は、はっきり言って不可能です」

 「貴女方が、単独でエリアス様に挑み、一撃を見舞う。ましてや、勝利する。」

 「こんなことは、天地がひっくり返っても有り得ません。」

 「絶対に不可能です。」 

 「あまりにも格が違いすぎる。」

 「一瞬虚をつくことは出来ても、真正面から実力で打ち倒す事なんて、どんな奇跡をもってしても成し得ないでしょう。」

 「残酷な話かもしれせんが、それが紛れもない真実です。」

 「どれだけ時間を費やそうと、現状では絶対に無理。この結論は揺るぎません。」


 (マリエ)   

 「何ですって!?じゃあ、私たちは一生アイツらを越えられないっていうの!?」 

 「冗談じゃないわよ!」

 「私は直ぐにでもアイツを追い越して!」 

 「高いところから見下ろしている、帝とかいうやからも!」

 「いつかひれ伏させて見せるわ!」 

 「貴方が言う絶対なんて、私には通用しない!」

 「私がそうすると決めたの!!」 

 「だから絶対にそうなるのよ!!!」


 「この事実だけは、誰にも否定させるつもりはないわ!!」

 「私たちを舐めるのも、大概にしてほしいものね!!」


 いつも冷静なマリエが声を荒げる。 

 自分や仲間の想いを否定されたのだ。

 プライドが高く、仲間思いの彼女が我慢できるはずがない。

 これに対し、マザーの言葉は…。


 (マザー)

 「マリエさん。そして皆さんいいですか!?」 

 「皆さんは何か大きな勘違いをしています!」

 

 「貴方たちは確かに凄い!強くて!力にも恵まれた素質の塊の様な方々だ!」

 「誰もが貴方達を敬い、称賛するでしょう!」

 「このままきちんと研鑽を積めば、間違いなくそうなり得ます!」

 「私もそこは否定するつもりはありません!」

 

 「ですが!!」


 「それは、飽くまで《一般的な人達》を対象にした時の話です!」

 「今は相手が違う!一般論なんて通用しない!」 「帝の副官!エリアス・ペール様なんですよ!」 「我々とは持って生まれたものが!格が遥かに違うんです!」 

 「そこは予め分かっておくべきこと!」

 「当たり前であり!大前提なんです!」

 

 「確かに!!」

 「リナさんの成長は素晴らしく!」

 「今後の大きな可能性を感じさせるものでした!」「それは否定しません!」


 (悠)

 「そうだろう!だったら何の問題が…。」

 (マザー)

 「だが!!彼女は《Cランク》だ!!」

 「皆さんも含めて、我々は飽くまでCランクなんですよ!?」

 (悠)

 「え…?」


 (マザー)

 「いいですか!?」

 「これはクランの皆さんにも言えることです!」

 「皆さんはCランクである以上!!何処まで行っても、それはCランクの能力なんです!」


 「貴方たちは才能溢れる人達の集まりだ。」

 「ステラ中を探し回っても、そうそうお目にかかることは出来ないでしょう。」


 「だけど、自惚れないで下さい!勘違いしないで下さい!!」

 「Cランクの成長は、飽くまでCランクの成長なんです!」

 「例え何か一つに特化したところで、貴方たちは所詮はCランクなんです!!」 


 「例えどんなに速く動こうが、成長の範囲はCランクの範囲内!!」

 「あのエリアス・ペールを相手に、Cランカーがどんなに息巻いても!!」

 「どんなに成長を遂げようとも!!」

 「その程度の開花など、鼻唄混じりに簡単に撃墜されるんですよ!!」


 「そんなの当たり前でしょう!?」

 「明らかに彼女の資質の方が、皆さんを上回っているんだから!」

 「彼女が面白がってこちらのやり方に付き合ってくれない限り!」

 「触れることさえ叶わないはずなんですよ!?」

 「はじめから格が違いすぎるんです!!」


 「いい加減に身の程を知ってください!!」


 「そうじゃないとホントに死にますよ!!!」  

 「貴方たちみたいな愚かものは!!!」


 シーン………。


 会場を暫しの静寂が包んだ。


 マザーのあまりの迫力と。

 そして突然知らしめられた。

 あまりにも厳しい現実に。

 ディープインパクトの面々は、返す言葉が思い浮かばない。


 その様子を黙って見ていたエリアスが、溜め息をつきながら近付いてきた。


 (エリアス)

 「ふ~…。おいおい…。大丈夫か?」

 「もうすぐバトルは再開されるというのに。」

 「仲間内で随分と荒れておるようじゃが…。」


 (悠)

 「…。いや~。お恥ずかしい限りですね。」

 「あんな啖呵を切っておきながら何ですが。」

 「知らしめられた現実と。」

 「ボロボロになった剣士ちゃんをどうするか…。」

 「頭も上手く回ってくれなくて…。」

 「正直言って頭が痛いです。」


 悠は苦笑いを浮かべながら答える。

 はっきり言って、現状八方塞がりになっていた。


 インターバルの間にマザーを説得し、レイナの回復魔法でリナの治療を行うつもりでいたのだが。

 現状を考えるにマザーが納得するとも思えない。


 恐らく大勢の観客の前で、レイナの能力を晒してしまう事へのリスク。 

 これを上回る程のリターンを、今のマザーに提示できる余裕は、悠や仲間たちにはないのである。


 かといって、手負いのリナを抱えながらの連携では…。

 今まで以上の攻撃は期待できない。

 悠の表情は焦りの色を隠せなくなっていた。


 (エリアス)

 「ふむ。まあ、確かにその通りじゃろうな。」

 「連携を謀るにも、剣士は手負い。」

 「私もそれなりの力で打ち込んでおる。」

 「5分程度では、まともには動けまい…。」


 エリアスは横たわるリナを見つめる。


 (エリアス)

 「かといって、3人の連携では火力に不安。」

 「後列の魔法使いを、お主ら二人で死守出来るとは言い切れんのだろう。」 


 今度は悠の顔を見つめる。

 悠は悔しそうに、黙って頷くことしか出来なかった。 

 悔しさで自然と拳に力が入る。


 (エリアス)

 「更に加えて…。」

 「仲間である案内役から、私との絶望的な戦力差を突きつけられ。心理的なダメージもある。か。」


 「うむ。確かに。正に八方塞がり。」

 「もうやめにして帰りたい。」

 「正直なところ。そう思っても仕方がない状況だの~。」


 エリアスは手を顎に置き、状況に苦しむディープインパクトを感慨深げに見つめている。


 (マリエ)

 「なによあんた?」

 「バカにしにきたの?」

 「私はやるわよ。」

 「周りに何を言われようと、あんたに必ず一撃見舞ってみせる。」

 「そうしないと、腹の虫が治まらないわ。」


 マリエが闘志を剥き出しにして、エリアスを睨み付けた。

 その目をじっと見つめ、エリアスは少しばかり嬉しそうな表情を浮かべた。


 (エリアス)

 「なんじゃ…。まだまだ目は死んでおらんではないか…。」

 「それならば、細かいことなど気にせず、思いきり来るがよい。」

 「案内人の言う事は正しい。」

 「だが、勝てぬからと言って、戦わない理由にはなるまい。」

 「結果はどうあれ、戦いに挑まぬものに、勝利の栄光がもたらされることはないのだからな…。」   

 そう話すと、エリアスは自身の胴着のポケットをゴソゴソとあさり始めた。


 (エリアス)

 「確か…。大分前にここに入れた記憶が…。」

 「お!あったあった。大分古そうじゃが、まあ大丈夫じゃろ。」


 彼女はポケットから、古い瓶を一つ取り出した。

 そして…。

 「おい、魔法使い!」 

 「これを剣士に飲ませろ!」


 レイナに向かい、その瓶を放り投げた。


 (レイナ)

 「わ!わわわ!」

 あたふたしながらレイナは瓶を受けとる。

 「…。きっと治るーよ水?」

 「あの…。これは?」


 レイナは古ぼけた瓶を見つめる。

 

 (エリアス)

 「読んで字の如し。」

 「我が大陸秘伝の回復薬じゃ。」

 「一本飲めば、大抵の外傷は治してくれる。」

 「体力までは戻せんが、次の一撃位なら、その剣士も動けるじゃろう。」


 エリアスはそう話すと、クルリと向き返り歩き始める。


 (エリアス)

 「剣士が回復したら再開じゃ。」 

 「案内人とごちゃごちゃ話しておったが気にするな。」

 「今は確かに勝てなくとも、勝とうと言う意思を持ち続けることには、絶対に意味がある。」

 「相手は副官だから勝てっこない。」

 「そんな常識に捕らわれないやからを探したくて、私はこの大会を開いたのじゃ。」


 (マザー)

 「エリアス様…。貴女は…?」

 (エリアス)

 「何も聞くな。案内人よ。」

 「お主が言うほど、こやつらは悪くない。」

 「私なりに楽しんでいるつもりじゃよ。」


 そう言い残すと、エリアスは闘技場の反対側に移動した。


 (エリアス)

 「さあ来い!ディープインパクト!」

 「次の一撃が最後となろう!」

 「最後の最後まで!」

 「私を楽しませて見せろ!!」


 そう言って、ニヤリと笑うエリアスに対し。

 敵に塩を送られる形ではあるが、迷いの吹っ切れたディープインパクトの面々。


 (マリエ)

 「色々と腑に落ちない部分もあったけど。」

 (悠)

 「これでいかなきゃ男が廃るな。」

 (レイナ)

 「女だって廃ります!ですよね!?」

  

 話をふられるとスウッ。とゆっくり息をすい。

 その剣士は煙を纏い。

 再び刀を構えた。


 (リナ)

 「当たり前よ!」

 「助けて貰ってなんなんだけど!」

 「残り火で散るつもりはない。」

 「あたしを復活させたこと…。」

 「後悔させてやるんだから!」


 ディープインパクトのメンバーが配置につく。

 最前線はリナ。

 その後ろはマリエと悠。

 後列中央にレイナ。


 展開した陣形。

  《マジシャンズ・スクエア》

 

 この試合最初で最後の連携攻撃で、

 彼らは絶対に勝てない相手に、

 全力でぶつかることを誓う。


 (悠)

 「もう出し惜しみはなしだ!」

 「初めから全員全開でいくぞ!!」

 (リナ・レイナ・マリエ)

 「異議なし!!」


 最後の一撃が迫る…。


何だか台詞が多くて話が進みません…。

忙しくて更新も出来ず、申し訳ありません。

読んでいて何か気になる事とかありましたら教えてくれると嬉しいです。

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