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おやじ妄想ファンタジー   作者: もふもふクッキー
88/114

水の章 対エリアス・ペール 第2ラウンドⅧ

 ○ 弱者の行方


 (悠)

 「リナ!!大丈夫か!?」

 (リナ)

 「~~~ッ…。ゲホッ…。ゲホッ…。」


 悠が手を伸ばすその先…。 

 そこには、エリアスの攻撃をモロに受け、苦悶の表情を浮かべているリナの姿があった。


 そんな中、エリアスだけは。

 現状がさも、当然であるかのように、悠然とリナを見下ろしていた。

 そして、彼女は困惑するディープインパクトを他所に、ゆっくりとリナに近づき。

 その顔を見下ろし、声をかける。


 (エリアス)

 「どうした娘?大丈夫か?」

 「それほど苦しむものではないだろう?」

 「今の攻撃に関するなら…。」

 「私はかなり、手心を加えたつもりであったのだが…。」

 「やれやれ困ったものだ…。」

 「弱い癖によく吠えるから。」

 「私も加減を過ってしまったではないか。」


 そう言いながら、エリアスはゆっくりとリナの顔を覗きこんだ。その顔には不敵な笑みが浮かぶ。

 そして、苦しみ地面に伏しているリナの髪を掴むと、無理矢理彼女を引き起こし、顔を近付けた。


 (悠・レイナ・マリエ)

 「リナ!?」

 「リナちゃん!?」

 

 止めを刺さそうと振る舞うエリアスに、ディープインパクトの面々は声をあげる。


 (エリアス)

 「何を驚いておる?」

 「これは『戦い』。血肉のやり取りだ。」

 「この娘は私を打ち倒そうと本気で斬りかかった。」

 「持てる力を出しきった。」

 「それは見事な一撃であった。」

 「だからこそ…。」

 「私も敬意を込めて、こやつを誠実に打ち倒そうと考えている。」

 「弱者とは言え、向かう相手にはきっちりと決着を着けてやらねばならん。」

 「己が力の弱さを知り。」

 「二度と歯向かう気など起こさぬように。」

 「誠実に。確実に。力の差を教えてやらねばならん。」

 「そうでなければ、お主らは学ぶことが出来ぬであろう?」

 「善戦したなどと戯言を抱かせては可哀想ではないか。」

 「自分の力を見誤り。また、勝てぬ戦いに身を投じるかもしれん。」

 「今回は私だから良かった。」

 「数日寝込む程度にダメージを抑えてやれる。」

 「だが、相手によってはこうはいかんのだぞ?」

 「死なない程度に痛め付け、拷問に近い扱いを受ける可能性だってあるのだ。」

 「今日は私との戦いで、己の力の限界をしる。」

 「この戦いには、そういった意味も込めておるのだ。」

 「強者との差を知り、自分の弱さを理解する。」

 「そこから何を得るのか。」

 「それはお主らは次第じゃよ。」


 その言葉には、相手への敬意。気遣い。遠慮も含まれていない。

 ただ、淡々と。事実を事実として述べている。

 そんな印象を与えるほど。

 彼女の表情は落ち着き。その言葉には濁りがなかった。


 そう…。つまりは。

 どんな策を講じようと。

 どんな成長を見せようと。


 彼女から見れば、弱者の戯れでしかないのだ。

 お前らの実力などたかが知れている。

 どんなに強い言葉で吠えようと。

 実際の戦闘において、遅れを取ることなどあろうはずがない。


 自身の力への圧倒的な自信。

 それに見会うだけの、圧倒的な資質。


 彼女はそのどちらをも保持し。

 そのどちらをも理解している。


 本物の強者の前では、弱者に抗う術などない。

 いいや、違う。

 抗わせるつもりなど微塵もないのだ。


 例えそれが、どれ程崇高であろうとも。

 弱者の気持ち。弱者の主張など。

 強者の気紛れで一瞬にして踏みにじられる。


 ここではそれが当然であり。

 それが摂理なのだ。


 資質に因って格付けが決まる世界。

 ステラでは、強者こそ正義。

 強者こそが律なのだ。


 打ち倒された弱者。

 即ちリナの動向は…。

 強者であるエリアスによって、今後の是非が決定される。


 ここではそれが真理。

 それが戒律なのだ。


 エリアスの言葉に、ディープインパクトのメンバーは、返す言葉を見つけられなかった。

 そう、彼らも理解していたのだ。

 言葉を返す権利など…。

 弱者である彼等には存在しないことを…。


 手を握り締め、悔しさを押し殺す彼らを横目に。

 エリアスはゆっくりとその拳を振り上げる。


 (エリアス)

 「安心せい。私も鬼ではない。」

 「顔は勘弁してやろう。」


 そう言い放ち、止めを刺そうと拳を降り下ろす。

 まさにその瞬間。


 (悠)

 「エリアスさん!待ってくれ!」

 「まだなんだ!まだ俺たちは!」  

 「貴方の期待に、力を見せると言う要求に!」  「まだ誠実に答えられてはいない!」

 「リナの力も含めて、まだ俺たちの全ての力を、貴方に見せることができていないんだ!」


 悠の叫び声に、ホンの少しだが、興味を抱いたのか。 

 エリアスは振り上げた拳を降ろし。 

 悠の目を見つめ。問う。


 (エリアス)

 「こやつを含めて、まだクランとして見せていないものがある…。」

 「つまりはこやつを解放してやり際すれば。」

 「まだまだ私を楽しませる準備がある。」

 「そう言いたい訳かの…?」


 エリアスはニヤリと笑い、悠を見つめた。

 悠はその表情に怯みながらも、リナを救出し、現状を打開する術を模索していた。


 (悠)

 『頭を回せ!思考を止めるな!』

 『必ずあるはずなんだ!』

 『いや、確かにあるんだ!』

 『リナを加えられれば、エリアスさんに一矢報いることが出来るかもしれない!』

 『そんな作戦が!』

 

 『けど…。』『けど、それには…。』


 答えの出しきれない焦燥した表情を浮かべ、悠はレイナとマリエに目を向けた。

 悠の表情と発言から、二人は悠が何を考えているのかを理解する。


 (マリエ)

 「私は、致し方ないと思うわよ。」 

 「このまま舐められて終わるのは絶対に嫌だし」

 「今更言いつけを守るほど、育ちが良いだなんて、私自身も思っていないもの。」

 

 そう話すマリエの口からは溜め息が漏れる。

 後で行われる長時間の説教タイムを想像し、それでも目先の結果に固執する自分達に。

 彼女は、愚かしさと。

 そして、何よりも誇らしさを強く感じているようだ。


 (レイナ)

 「私も別にいっこうに構わないです。」 

 「そもそもリナちゃんは先を見越して力を隠すなんて出来る人じゃない。」 

 「自分がやられたら、きっと私たちが何とかすると決めつけていたはず…。」 

 「全く無鉄砲で無責任な話ですが、そんな親友の期待を、私は何故か嬉しく思ってしまう。」

 「信じてくれた気持ちに…。」

 「答えたいと思ってしまうのです。」      

 「ですから…。」

 「やりましょう。悠兄さん。」

 「クラン・ディープインパクトととして。」

 「格上の。上位の資質者に。」

 「どこまで食らい付くことが出来るのか…。」   

 「きっとこれから旅を続ける私たちは、知っておくべき事なんです。」  

 「ここでの自分達の立ち位置を。」

 「きっちり理解しておくべきなんですよ。」


 レイナの瞳には、強い力が宿っている様だった。

 それに同調するかの様に、マリエも笑みを浮かべて扇を構え直す。  


 (悠)

 『腹は…。決まったか…。』

 『いや、俺以外の皆は、始めから覚悟していたんだろうな…。』

 『ホントに、ウチの女性陣と来たら…。』


 そう考えながら、悠は下を向き笑みを浮かべた。

 それから顔を上げ、引き締まった表情でエリアスに問い掛ける。


 (悠)

 「エリアスさん!不躾で非常識で自分勝手なお願いだとは分かっている!」

 「分かった上で、貴女に頼みたい!」

 「俺達に、もう一度だけチャンスをくれないか!?」

 「遥かに格上である貴女が、こうしてバトルの場を設けてくれた事に対して!」

 「俺達はまだ!誠実に答えられていない!」

 「こんな貴重な経験の機会を!」

 「力の差を見過って、愚作に溺れて、何も出来ずに終わらせる訳にはいかないんだ!」 


 「だからお願いだ!」 

 「リナを解放して、俺達にもう一度だけチャンスを!」

 「貴女の期待に答えるチャンスを与えてくれ!」

 

 そう叫び終えると、悠は深々と頭を下げた。

 大の大人が公衆の面前で。

 しかし、そんな下らない自尊心など、簡単に捨て去れてしまうほどに。

 悠は、この戦いで得られるものの大きさを感じていた。 


 頭を下げ続ける悠を。

 エリアスは黙って見つめていた。

 暫く沈黙が会場を包む。

 静けさの中で、エリアスは頬を掻き、何かを考えている様であった。


 そして…。 


 (エリアス) 

 「いいじゃろう。」

 「元々はお主らの力を知るための戦い。」

 「まだ楽しませてくれるのであれば、是非もなきことじゃ…。」


 そう話すと、エリアスはリナを地面に降ろし、その場から離れていった。


 (エリアス)

 「何かと準備が要るのであろう?」

 「そのボロボロの娘をどうするか…。」

 「きっちり考えて向かってこい。」


 「次も大して面白味もない攻撃であったならば…。」  

 「分かるな??」

   

 話終えると同時に放たれた魔力は、大気を震わせ会場全体を震え上がらせた。

 常人であれば、浴びただけでも意識を失うであろう、その強い威嚇に対し。


 悠は冷や汗をかきながら、しなし自信に満ち溢れた表情で答える。


 (悠)

 「任せてください。」

 「次は必ず…。貴女に一矢報いて見せます!」


 (エリアス)

 「それは…。楽しみだな…。」

 含み笑いを浮かべ、エリアスはその場を後にする。 

 その背中からは、自分に向かってくる相手と出会えた事への、喜びが満ち溢れているようであった。


 (悠)  

 「皆!集まってくれ!」


 悠は直ぐ様、皆に声をかけた。 

 

 「恐らくこの5分間で、俺達の今後の命運が決まってくる!」

 「少なくとも、俺はそう感じているんだ!」  


 「無知のまま、強者になぶられ続けるのか!」

 「弱さを受け入れ、弱者としての活路を見出だすのか!」  

 「次の攻防がその試金石になるはずだ!」

 

 「次の一撃で!俺達の覚悟を見せつけ!」

 「この世界で生き残れる事を、証明してみせるぞ!」


 悠の言葉には、これ迄にはない覚悟が込められている様であった。

 彼が感じている通り。

 ここは彼らの分岐点足り得るのか。

  

 彼の言葉に同調する仲間たち。 

 そして、言葉を発した彼自身も。

 その真偽に辿り着くのは、恐らくずっと先になるであろう。


 目の前の強者に立ち向かう。

 足掻く弱者の覚悟の行方。


 5分後の攻防が、その幾つかに答えを与えてくれる事を…。

 その場にいる全員が。

 切に願っていた…。 

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